特命営業部 部長
大川原 学氏(右)
ロジスティクス部 事業統括ソリューション課
上席推進役
平田 康英氏(左)
暮らし、産業、社会のグローバル化に伴い拡大を続ける国際物流。
その一翼を担う郵船ロジスティクス様は、自身の輸送手段は持たず外部サービスと協力し、海外企業と日本の企業を仲介する形で顧客の輸出入を支援するサプライチェーン・ロジスティクス企業。躍動するグローバル物流に機敏な対応が求められる中、複数のセクションを集約する日本本社オフィスの維持管理に課題を感じていました。
同社がOffice Wellを活用し、理想のワークプレイスに向けて明確な方向性を見出した調査プロジェクトをご紹介します。
複雑化するオフィスの課題抜本的な解決に向けて動き出す
日本、米州、欧州、東アジア、南アジア・オセアニアの5極体制で、全世界に594か所の事業拠点を展開する郵船ロジスティクス。国内では東京、名古屋、大阪にエリア営業本部、全国各地の空港や港湾周辺を中心に営業所や倉庫施設など全82拠点を展開し、これらを東京の日本本社が統括しています。今回のケースは東京エリアの営業所を集約した日本本社のオフィス運用に関するご相談から始まりました。
「リーマンショックの影響で景気が低迷し都心の不動産賃料が底を打った2010年頃、賃借コスト低減と組織間の連携強化を目的に、本社とともに東京エリアの営業所を一つのビルに集約させました。しかし集約した本社ビルはまた、新たな課題を生み出すことになりました」大川原氏
一つのビルに集約したとは言え、6フロアに内容が異なるオフィス賃貸契約が多数混在する状態。2年毎の契約更新で面倒な手続きが発生し、その後の景気好転による賃料の高騰でコスト負担も重くのしかかっていくことになりました。
「複数の契約書を読み下すだけで苦労するあり様。もっと効率よくシンプルに管理し、コストを抑える必要も痛切に感じ、バラツキのあった賃料水準を均一化して契約を巻き直しました」平田氏
しかし、その事で賃借コストが上昇する部門も発生し、移転する営業所も出てきました。加えて、組織改編の多い同社では、頻繁に行うフロアを跨いだレイアウト変更の負担も大きな課題となっており、もはやオフィスのあり方を抜本的に見直すべきと経営陣も考えるに至りました。オフィスの見直しに際しては、前述の契約状況やコスト面での課題に加え、同社に必要とされる組織間での連携強化も避けられない課題として挙げられていました。
ちょうどCRE(企業不動産)戦略の重要性が語られ始めた頃で、総務部のメンバーは関連セミナーへの参加や他社事例の見学、資料収集に動き出しました。
「とても良い刺激を受け、様々なアイデアも浮かびましたが、実際にどう着手すればいいのか、体系的な進め方がわかりません。そんな時に三菱地所リアルエステートサービスのコンサルティングサービス「Office Well」を知ったのです」平田氏
必要なのは現状の正確な把握 アンケートで生の声に耳を傾ける
同社の「話を聞いてみたい」という声に、今回のコンサルティングを担当した池田は「現状の正確な把握のために、まず社内の声を聞いてみませんか」と応じた。その意図を大川原氏はすぐに了解しました。
「それまでも社内からはオフィスに関する様々な声が挙がってはいましたが、全社的な意見として評価する指標がありませんでした。そこで提案のあった全社アンケートの実施を決めました」大川原氏
課題を明確化するためのアンケートは、企業ごとの状況や目的、アンケート対象によって的確に設計する必要があります。今回の調査でこだわったポイントについて池田は語る。
「郵船ロジスティクス様の事業では組織間の連携が非常に重要です。そこで、今回フォーカスされていた日本本社オフィスだけではなく、拠点を跨いだ連携や機能面でもどのような問題があるのかを把握する必要があると判断、本社と名古屋、大阪の3大拠点に同一基準で横串を通した質問を検討しました。さらに、本社と都内2拠点(日本橋、品川)との行き来やコミュニケーションの実態、働いている社員の方々の満足度、声に出せない不満などまで把握できるよう質問項目を設計していきました」池田
綿密なヒアリングを行い、アンケートの目的と内容について同社としっかりすり合わせたことで池田が目指す調査準備が整った。
「アンケートは役員、管理職、非管理職といった回答者の属性に合わせて個別に設計され、視点や働き方の違いからオフィスへの評価を多面的に把握できる内容になっていました。WEB方式で回答しやすく、回収率も96.8%と期待以上に高いものとなりました」平田氏
池田は回答集計の速報値を提出するとともに、社員の声であるアンケート結果と、契約状況やコスト、オフィスレイアウトなど物件自体の分析から浮かび上がる課題を、これまでのプロジェクト実績で培ったノウハウを活用し、最終の調査レポートを提出した。
「調査レポートでは社員の生の声をわかりやすく“見える化”してあり、東京本社だけでなく名古屋、大阪の拠点に対するストレートな評価も把握できました。数値化できない不満や要望もフリーアンサーで広範に拾っており、実施して本当に良かったと思いました」大川原氏
調査レポートから新たな課題を発見 経営陣の決断を導く
回答の中にはアンケート実施前には想定もしていなかった声も多く、新たな気づきにつながりました。
「特に安全面、環境面やBCPに関する意見が多くあり、上の課題を含め、今まで見えていなかった課題まで見える化でき、これから考え、やるべきことが明確になりました。また、会社が働く環境に気配りし、一人ひとりを大切に見ていると社員に思ってもらえるいい機会にもなったと思います」平田氏
また調査結果をレポートとしてご提供するため、社内資料として活用が可能です。役員会議にレポートが提出され、経営課題として本社オフィス移転とワークプレイス変革に取り組む方針が決定されました。事業の中核を担う組織群を広いワンフロアに機能的に集結させる事でコミュニケーションを活発化させ、オープンスペースやフリーアドレスなどを柔軟に活用することでコスト抑制、生産性向上、働き方改革の同時実現を目指していく。折しも、中長期経営計画「TRANSFORM2025」のもと、全社が一丸となって変革を目指す中、成長戦略を前進させる重要な一歩となる調査プロジェクトとなりました。大川原氏は意義をこう語ります。
「働いている社員が満足、不満足を含め、オフィス環境をどのように思っているのか。生の声に耳を傾け、様々な声の意味を深く掘り下げることでオフィス変革に踏み出すいい転機になりました。現状に甘んじることなく、今後も理想のオフィスを目指して社員の声に耳を傾け続けていきます」大川原氏
新たな課題を発見した集計結果の一部
平田氏は課題を解決していく自信と勇気を勝ち得たという。
「やりたいアイデアを客観的な根拠で裏付け、説得力を持って推進していくノウハウを学ぶことができました。やればできるという自信が生まれたことが一番の成果かも知れません。働いている人の生産性や満足度を高め、採用でも働きやすく魅力的な会社と思われるよう取り組んでいきます」平田氏
2020年5月に日本本社は移転を実施、複数フロアに分かれていた本社機能を1フロアに集約、スリム化を達成しました。
フロアを統合し、小規模の共有エリアを複数設けることで所属をまたいだ従業員同士のコミュニケーション活発化を図っています。さらに、フリーアドレスやリモートオフィス利用の推進、個人で集中できるスタディ席を設けるなど働く場所と働き方の選択肢を広げ、生産性の向上だけでなく従業員が働きやすい職場環境を生み出しています。
▽Office Wellをさらに詳しく
【Office Well】生産性の高いオフィスへ オフィスの課題を見える化
郵船ロジスティクス株式会社
世界46の国と地域に物流事業を展開するサプライチェーン・ロジスティクス企業。航空・海上貨物輸送、在庫管理・流通加工などを一括で請け負うコントラクト・ロジスティクスを事業の柱とし、近年はこれら事業の垣根を越えて最適なソリューションの構築・提供を行うサプライチェーン・ソリューションの分野にも事業を拡大。1955年設立、従業員数24,713名、連結営業収益約4,500億円(2020年3月31日現在)