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最新オフィス事例

【株式会社新興出版社啓林館】社屋老朽化と人員増で建て替え・ 一時移転が決定 

オフィスを進化させるために行われた数々の施策

第2教育推進部第2課 伊藤 舜氏(右)
まなびデザイン部編集第2課 小幡 夏音氏(左)
第2教育推進部第2課 内田 智之氏(中央)
第1教育推進部第2課 望月 詩織氏(中央右)
まなびデザイン部販売第1課 松明 遼氏(中央左)


東京大学近くに東京支社を構え、教科書、参考書、児童書などの発行・販売をする新興出版社啓林館。この東京支社は社屋が築60年という老朽化に加え支社機能強化のための人員増から建て替えが決定。働きやすくコミュニケーションもとりやすいオフィスへ変化させるためにOffice Wellが活用されています。ここで進められているさまざまな施策をご紹介します。

Office Wellのポイント:従来のオフィスで困っていたことを可視化コミュニケーションスペースの構築でクリエイティビティあふれるオフィスに。

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【Office Well】生産性の高いオフィスへ オフィスの課題を見える化

「知が啓く」ランドマークをつくるための一時移転

「啓林館」「新興出版社」「文研出版」という3つのレーベルを展開し、教科書や参考書、児童書などの制作・販売をする新興出版社啓林館。大阪の本社をはじめとして全国に拠点を設けていますが、このうち東京支社は社屋の老朽化によって自社ビルの建て替えが決まりました。

「啓林館のキャッチフレーズは『知が啓く』です。かつての東京支社は営業主体だったのですが、そこに編集のセクションも加わり、人員的にも大所帯になってきています。また、オフィスを“教育のランドマーク”にしたいという思いも経営層を含めたメンバー全員にありました。地域や社員にとって誇れる会社であり、企業間・地域住民間との交流が生まれる会社にできればと思っています。このように、いくつかの理由が老朽化の上に加わって、建て替えの必然性が生じました」小幡氏

かつての東京支社は3階建てでしたが、新社屋は地上10階、地下1階建て。この中で新興出版社啓林館は地下1階~地上2階までを使用し、3階以上のスペースはテナントに貸し出し、テナントとの共有スペースにする計画になっています。
新社屋ができるのは2023年夏~秋の予定です。それまでの間は、一時的に仮移転をしなければなりません。今回の相談は、この一時移転をいかに行い、そして新社屋のオフィスもいかなるものにすべきか、というものでした。担当の東海林が振り返ります。

「このような一時的、短期的賃貸物件の斡旋をする場合、状況と条件に合わせた機能などの取捨選択が必要になります。新興出版社啓林館様のケースでは、一時移転を機に倉庫機能の分離を検討されており、その一方で、編集や販売といった部署間の距離を縮めたいとの要望がありました。そこで今回の提案では駐車場や倉庫といった機能を排し、規模に見合った広さを有する純粋なオフィス機能特化型の物件に焦点を絞りました」東海林

そして、一時移転先も建設中の新社屋もオフィスとしての役割に特化しているからこそ、従来はなし得なかった新たな効果を生み出したいとの希望もありました。そこで、物件の選出と合わせオフィス環境の調査プログラムである『Office Well』を活用した課題抽出も提案しました。

「特に、社内外のコミュニケーションができる環境を一時移転先で設けたいと考えていました。コロナ禍の影響で社内的なコミュニケーションに変化がありましたし、新社屋ができてからはテナントの方とコラボレーションができればとの思いもあります。そのほかの課題を含め、一時移転先をいかに良い環境にし、また新社屋で行いたいことの実験がどれだけできるかというのが課題でした」内田氏

多くの社員が要望した「交流スペース」担当者はどんな答えを出したのか?

移転そのものを戦略的に進めるため、まず新興出版社啓林館様サイドでは独自発案の社内アンケートを実施し、各部署からの要望が集められました。

「アンケートでは、旧社屋の不満から聞いていきました。社員みんなが古い建物だから仕方ない部分はあると思いつつも、Wi-Fiやバリアフリーといった面で明らかに現代のビジネス環境からかけ離れてしまっている、夏は暑く冬は寒いといった居住性が劣っているとの声が挙がっています」松明氏

移転そのものを戦略的に進めるため、担当の東海林はプロジェクトチームとコンタクトをとり、実施されていた移転に関する社員のアンケートをもとにOffice Wellの設計に着手しました。

「こうしたアンケートと同時に、『プロジェクトに参画したい人は挙手してください』と募集があったんです。最終的に、ここにいる5人のメンバーで、昨年の1月にチームが発足し、先ほど松明がいったような不満にどう応えていくか、三菱地所リアルから提案されたOffice Wellを利用してさらに詳細なアンケート・ヒアリングに移っていきました」望月氏

オフィス環境の改善に向けて網羅的なOffice Wellからのヒアリングの結果、交流スペースの確保、社員個々の自席スペースの拡大、会議室の広さと利用人数との乖離など多くの改善点が浮き彫りになりました。その中でも担当の東海林の元に届いた最も多かった声が、「部署の垣根を越えた、交流できるスペースが欲しい」というものでした。

「ほかの社員とすれ違ったときに話せるようなスペースが欲しい、という声は部署や世代を問わずあったんです。旧社屋にもリフレッシュスペース(談話室)はありましたが、あまり広くなく混雑しやすいという不満がありました。そこで、作業場としても利用でき、コミュニケーションもとれるフリースペースを設置してはどうですかという提案をしています」東海林

「私たちの間では、プロジェクトチームが立ち上がったときから『コミュニケーションがとれるスペースが欲しいよね』という話をしていたのですが、実は社員みんなが前々からこういった場所を欲しいと思っていたことが分かりました。弊社の社員は奥ゆかしい人が多く、なかなか口にはできなかったけれども本当はみんなと喋りたいと考えていたのではないでしょうか」内田氏

なお、旧社屋は倉庫も備えていましたが、前述の通り、今回の一時移転を機に倉庫は別の場所に分離されました。そして、駐車場も一時移転先には設けていません。

「倉庫を別の場所にしたことで、ICTの活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れる試みをしています。弊社の営業は学校回りをするわけですが、そのときに教材やチラシを持っていくんです。ただ、オフィスと倉庫が離れてしまうと、在庫がどれだけあるかが分かりません。そこで、倉庫にある在庫量を可視化するサービスを活用しています。倉庫以外の面でも、たとえば会議室の空き状況などをデジタルサイネージで確認できる仕組みも準備しています」望月氏

今回は移転に伴う機能のアップデートや拡張だけでなく、移転プロジェクト自体を社内交流の活性化に役立てる手法も取り入れました。そのひとつが、社員に向けての移転プロジェクトの ウェブサイトの開設。同サイトは、新社屋に向けた情報共有と意見や要望の集約場所として効果的なツールとなっています。

「私たち三菱地所リアルエステートサービスも、2018年に本社を移転しています。当時、社内向けの移転に関するウェブサイトを立ち上げたのですが、その話を新興出版社啓林館のプロジェクトチームの皆さまにお話したところ、興味を示していただき同様にウェブサイトを立ち上げることになりました」東海林

新興出版社啓林館の移転に関するウェブサイトは、単なる情報発信にとどまらないという意図もあります。

「建て替えの進捗状況、三菱地所リアルさんからいただいた情報、引っ越しのインフォメーションを掲載するということも行っています。情報を共有する意図もありますが、先輩社員に私たちの成長を見てもらえればとの思いもあります」伊藤氏

こうした情報共有によって、建て替えや移転のプロジェクトが今、どういった位置にあるのかを全社員が分かるのはもちろん、移転プロジェクトの存在そのものが帰属意識への高まりや仕事への期待感、楽しみに作用し、社内活性化につながっているそうです。また、どの社員からもオフィスに関するアイデアが出やすい環境づくりにもつながっています。

「三創空間」に込めたプロジェクトチーム若手社員の思い

ここまで述べてきたように、移転を取り仕切るのは新興出版社啓林館の若手社員によるプロジェクトチームです。チームの動きにも迫ってみましょう。

「私たちプロジェクトメンバーの最初の仕事が、コンセプトを決めることでした。コロナ禍をきっかけに在宅ワークが推進され、私たちの働き方も変わってきた中、今求められているのは単なる箱ではないオフィスだと考えました。あえてオフィスに集まり、社内外の人と繋がり、社員が育つオフィスで、『創造』『独創』『共創』が生まれる空間にしたいと考え、コンセプトを『三創空間』としました。」小幡氏

コンセプト設定に加え、どれだけ働きやすいオフィスをつくろうと思っても、会議や集めたデータだけでは今の状況が良いのか悪いのか、どうすれば働きやすくなるのかが分かりません。そこで、プロジェクトチームは検証やアイデアの習得のために他社のオフィスなども見学しています。

「一時移転の前に、さまざまな企業、オフィスのショールームを見学しました。どのオフィスも最先端であると実感できましたが、一方で痛感したのが『ウチの会社は、これらのオフィスから見ればまだ〈昭和〉だな』ということです。新興出版社啓林館を、すぐに最先端のオフィスと働き方に変えることはできないかもしれませんが、昭和のオフィスからせめて〈平成と令和の間〉くらいのところまで前に進められれば、より働きやすくなると考えています。そのために、見学などで目に耳にした新しいオフィスの仕組みや仕掛けを積極的に取り入れています」小幡氏

では、実際にどんなことを導入しているのでしょうか?

「オフィスの中ではどうしても、周りの人の声が聞こえてきたり、音が原因で集中できなくなったりすることがありますよね。それを軽減させる『サウンドマスキング』の導入実験を行いました。ザーっという雑踏の中のような音を出すことによって、人の声あるいは会議室の中から聞こえてくる音を打ち消す効果があるんです」伊藤氏

「見学したオフィスの中では、いい香りを漂わせることで働く人や来訪者の印象を良くしていたところもありました。そこで、私たちのオフィスでもアロマディフューザーを設置して、癒しの演出を試みてみたんです。同じく癒しという点では、観葉植物などで緑を増やしていく取り組みもしていますね」松明氏

「細かい話ですが、どの高さの棚をどこに置くかというのは、他社などのオフィスを見学して勉強させてもらった点です。背の高い棚は壁際に置き、オフィスの真ん中や島とともに置く棚は高さがあっても人の胸くらいまでのサイズのものにしています。そうすることで、見通しの良いオフィスにできるんです」内田氏

「また、棚の上(天井部分)に物を置かないことも、社員の皆さんに徹底してもらっています。もし棚の上に物を置いてしまったら、見通しが悪くなって、棚の配置を工夫した意味がなくなってしまいますからね。こうしたルールづくりと運用も、私たちの取り組みのひとつです」小幡氏

以上のような取り組みをただ実施するだけで終わらず、社員からのフィードバックを得ることも行われています。

「社員の皆さんに『ハイテーブルの設置はいかがですか?』『アロマの香りはどうでしたか?』など定期的なアンケートを通じて声を拾い上げ、改善に結びつけています。その結果、『せっかくだからハイテーブルでコーヒーを飲んでみるよ』『オフィス内がいい香りで癒されました』『東京のオフィスが評判良いと聞いて、大阪本社から来ました』という声 なども届いており、やり甲斐を感じています」望月氏

「Office Wellは働く人のニーズの定量的な数値化、それを基にしたプランニングができることが大きな特長であり、新興出版社啓林館様のプロジェクトメンバーの皆様は今回このOffice Wellを有効に活用いただきました。加えて当社では、Office Wellで抽出された課題の解決のために、実際のオフィスを見学するオフィスツアーの企画も積極的に薦めていることからも、皆様の取り組みは非常に良いものだったと思います」東海林

「ワンフロアで完結させる」一時移転場所を選定した基準

新興出版社啓林館の東京支社は、本来、東京メトロ南北線東大前駅の近くにあり、現在、ここで建て替え工事が進行中です。そして、一時移転先は東京メトロ有楽町線護国寺駅近くのビルとなっています。どちらの住所も東京都文京区であり、できる限り近い場所への仮移転を目指したことが読み取れますが、ほかにポイントはあったのでしょうか?

「松明から、バリアフリーの面からワンフロアが望ましいという話がありましたが、それ以外の機能面でもできる限り1つの階で完結させたいという思いを持っていました。ワンフロアのメリットとして、社員間のコミュニケーションがとりやすくなることや人を探す、見つけることが挙げられます。結果的には2フロアを借りる形になったのですが、それでもオフィス部分でワンフロア、会議室部分でワンフロアとなっていますので、おおよその希望を達成できたといえます」小幡氏

「繰り返しになりますが、この一時移転では旧社屋にあった倉庫を廃し教科書、参考書などを置いておくスペースは最小限でも仕方がないという意見がありました。また、営業のような外出の多い方も編集や事務の社内にいることが多い方も、社内では自席にいる時間が長くコミュニケーションに乏しいという課題をOffice wellによってつかめています。一時移転先の要望と課題解決に加えて、新社屋でのオフィス環境の在り方に対して、いかに取り組むかが今回のポイントです。我々三菱地所グループが持つ総合的なノウハウでプロジェクトチームの皆様をあらゆる面でサポートしていける体制を整えられていると実感しています」東海林

現在のオフィスは2023年夏頃まで入居する予定で、それまでの間、先進的なオフィスとするための取り組みが続けられます。現在のオフィスへの一時移転だけでなく、新しいオフィスの企画、基本設計、そして移転実施など、新興出版社啓林館はこれからもOffice Wellで可視化された課題解決に向けてチームがアイデアを出し合い常に働きやすいオフィスを構築してきます。

株式会社新興出版社啓林館

教科書、学習参考書、問題集、指導書、児童書など子どもたちの未来を創造する教材を多分野にわたって提供する出版社。
義務教育の理数系教科書や高校の英語教科書では高いシェアを持つ。近年はICT教材の制作にも注力。書店では主に教科書準拠版商品、絵本を販売。100万部を突破した谷川俊太郎が著した絵本『もこ もこもこ』の版元でもある。1946年創業、1949年設立。

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