足元を見直したからこそ見えてきた、これからのオフィスビルの“あるべき姿”
首相官邸や国会議事堂など、日本の中枢機関が多く集まる赤坂・虎ノ門エリアでは、これまでに類を見ないスピードで街の再開発が進んでいます。ホテルオークラ東京の本館建て替え、虎の門病院の新築移転、日比谷線に56年ぶりの新駅「虎ノ門ヒルズ」駅が誕生、そして昨年には「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が開業と、赤坂・虎ノ門エリアは賑やかさを増しています。今回、私たちが訪れた「虎ノ門アルセアタワー」は、虎ノ門駅方面の賑わいの一翼を担う大規模オフィスビルです。
東京メトロ「溜池山王」駅方面から「虎ノ門アルセアタワー」に向かうと、江戸城の鎮守として崇敬されてきた日枝神社とともに、穏やかで凛とした空気に迎えられます。
溜池山王の「山王」は、古くから「山王さん」として親しまれていた日枝神社の名称が由来です。一方の「溜池」は、江戸の近代化に伴い作られた大規模な“ため池”が由来で、この池は飲料水としてだけではなく、江戸城の外堀としての役割も果たしました。溜池のほとりには憩いの場として茶屋が点在し、これが現在の赤坂の料亭街の始まりだと言われています。明治23年(1890年)に、アメリカ大使館が溜池榎坂町1番地(現、赤坂1丁目)に建てられると、周辺には政府高官や軍人らが住まい、邸宅街の色も帯び始めました。
長い年月をかけて“多様性”と“国際性”を育んできた赤坂・虎ノ門エリア。戦後には「国民所得倍増計画※」(1960年)や「東京五輪」(1964年)を追い風に、旺盛な都市開発が進められます。さらに、日本初の外資系ホテル「東京ヒルトンホテル」が開業(1963年)するなど、外資系企業がこぞって進出。日本の国際化を代表するビジネス街としての顔も持つようになります。半世紀以上が経った近年では、2度目の東京五輪開催を節目に、交通インフラの再整備をはじめエリア一帯の再開発が進められており、日々街の機能更新が行われています。
そんな赤坂・虎ノ門エリアの魅力をさらに底上げするのが、日鉄興和不動産が参画する「虎ノ門アルセアタワー」です。この建設プロジェクトについて、同社の事業開発第一部の渡邊郁氏はこう話します。
「赤坂・虎ノ門エリアは、もともと料亭街・オフィス街・邸宅街など多彩な顔を併せ持つ奥深い街ですが、ここ最近の再開発ラッシュで新しい人の流れが生まれ、さらに面白味が増しています。今後も街全体の求心力やブランド価値は高まっていくと考えています。『虎ノ門アルセアタワー』のプロジェクトに参画するにあたっては、これからの働き方に照らし合わせて、オフィスビルが備えておくべき要素は何なのか。足元を見直しつつ、この問いに真正面から向き合いました。必要なものがきちんと備えられていて、痒い所にも手が届いていると感じてもらえるような、そんな品質の良いサービスやモノ、そしてオプションを揃えました。また、同ビルが建つ虎ノ門2丁目辺りには、かつて『葵坂』と呼ばれる名高い坂があり、坂の上にはアオイ科の植物『タチアオイ』(立葵)が群生していたそうです。タチアオイが天に向かってまっすぐに伸びる姿と、次世代のオフィスビルとのイメージを重ね合わせて、タチアオイの学名『アルセア』から名を取り、“アルセアタワー”と名付けられました」
オフィスビルの本来の役割の洗い出しから始まった「虎ノ門アルセアタワー」のプロジェクト。オフィスビルの機能面に対して、実直に取り組む姿勢が、多くの企業から“質実剛健”と高い評価を得られているのも頷けます。さらに商業事業推進部の平出江里氏は次のように付け加えます。
「このエリアは当社、日鉄興和不動産にとってビル事業発祥の地で、とても縁が深いエリアです。事実、『赤坂インターシティAIR』『オークラ プレステージタワー』など、これまで半世紀にわたってこの地で街づくりに携わってきました。『虎ノ門アルセアタワー』のプロジェクトでは、私たちを成長させてくれたこの街にどう恩返しができるのか。ここを徹底的に考え抜きました。ただ働くスペースを提供するだけのオフィスビルではなく、働く人たちが自分らしい生活を叶えることができるQWL(Quality of Working Life)の高いオフィスビルを目指したいと思っています。コロナ禍を経て、必ずしも事務所内で働かなくてもいい風潮になっているからこそ、仕事に合わせてオフィシャルからカジュアルまで許容する場所があることが、このビルの魅力の一つだと思っています。特に私は商業部門を担当しています。バラエティ豊かなメニューを取り揃えたマルシェゾーンなど、“食”を通して働く人たちをサポートしていきたいですね」
他にもワーカーの毎日に寄り添う多彩な機能が備えられています。こだわりの自転車で通勤を楽しむ人向けのセキュリティ性の高いバイクステーション(予約制駐輪場)や、ランチタイムを開放的な空間で楽しめるオープンテラスなど、“自分らしい働き方”を考えるヒントが散りばめられた「虎ノ門アルセアタワー」。仕事とプライベートを切り離して、どちらか一方を犠牲にするトレードオフの働き方ではなく、両者が調和して仕事もプライベートも活力にあふれる働き方。ここにオフィスを構えることで、そんなハーモニーワークの実現に一歩近づけそうです。
※国民所得倍増計画
社会資本の拡充、失業の解消や社会保障・社会福祉の向上等を実現するため、実質国民総生産を10年以内に2倍にすることを目標とした計画。