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October 2024

「大手町ゲートビルディング」
歴史と新たな文化、2つの水脈の源となり
神田と大手町の交わりが始まる

神田と大手町——2つの街の“結節点”に新たな交流を予感させるように、一つのランドマークが誕生します。それが、2026年に竣工する「大手町ゲートビルディング」です。
両エリアを繋ぐのは、日本橋川に新たに架けられる人道橋。エリア全体の回遊性を高め、今までにない賑わいを生むだけではなく、防災の面でも一翼を担います。
ここで働き、時を過ごす全ての人に寄り添う大手町ゲートビルディング。人道橋をはじめとする、様々な新しい挑戦を行っているこのプロジェクトについて、キーパーソンの2名に話を伺います。

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この地が文化の発信地として発展していった水脈をたどる

⽇本橋川と鎌倉橋交差点に面する⼤⼿町ゲートビルディング。新たに架橋される人道橋により、大手町仲通りから神田エリアがシームレスに繋がる

丸の内開発部で副主事を務める勝⽥健介⽒

日本橋川に面する大手町ゲートビルディングは、大手町エリアから見て神田エリアの入口にあたります。神田といえば、落語家の古今亭志ん生が生まれ、作家の幸田露伴が暮らしていたなど文化的なエピソードが多く残されたエリアでありながら、神田祭に代表されるように、今なお賑やかな江戸っ子の活気が感じられる一面も有した街です。

神田の街には、どのような趣があるのか。三菱地所株式会社の小鴨主事は次のように語ります。

「この街がこれだけ長い歴史を紡いでいるのは、神田で生活している人々がいつも新しい文化を取り入れ続けてきたからだ、と感じています。例えば、江戸時代には藍の染物屋さんが集まり、明治時代には多くの学校がつくられたことに端を発して古書店が多く立ち並びました。最近では、多くのカレー屋さんが集まっていることから『カレーの聖地』と言われることも。

長い歴史の中で、新たな文化を柔軟に受け入れ、そして発信してきたからこそ、この街には活気があふれているのだと思います。実際に、神田の街の人々と対話をしていても、新たに出店するお店やプロジェクトに対して否定的ではなく、興味を持って受け止めていただけているという印象を受けます」

神田には、新しい文化だけではなく、「神田明神」など古くから大切にされている場所や、習慣がしっかりと根付いています。神田に暮らす人々の心の核となっているような伝統的な部分はきちんと後世へ受け継ぎながらも、新しく生まれたり、外からもたらされた文化にも寛容であったりする──神田という街がもつこのような特徴が、小鴨氏のコメントから読み取れます。

もう少し歴史を深掘りしてみましょう。三菱地所株式会社の勝田副主事は、大手町ゲートビルディングの計画地の歴史をこう語ります。

「大手町ゲートビルディングが面する日本橋川の河岸は、昔『鎌倉河岸』と呼ばれており、船から物資を荷揚げする場所でした。江戸城を建てるための木材や石材、さらに食材も荷揚げしていました。その結果、食にまつわる文化の発信地となった歴史があります。その後も、水上交通の要衝として栄え、昭和に至るまで建材の荷揚げが行われていました。つまり、この場所は江戸時代から近代に至るまで情報や文化の入口になっていたとも言えます」

神田には、創業100年を超える飲食店や酒の卸売店などが多く見られます。鎌倉河岸が賑わっていた頃から、長い時間をかけて人から人へと紡がれてきた暮らしや営みが、やがて文化となり、現在の「神田エリア」を形成していったと言えるでしょう。このエリアの魅力について、勝田氏はこう語ります。

「このプロジェクトを担当することになり、改めて神田の歴史を学びました。そして、時代毎に新しい文化を取り入れながら、変容していくこの街のことを、以前にも増して好きになりました。伝統や習慣は大切にしながらも、新しい挑戦や文化に寛容なこのエリアだからこそ、私たちのプロジェクトもきっと受け入れていただけるのではないかという期待があります。このプロジェクトがきっかけで、このような神田の魅力を多くの方々に伝えられると嬉しいですね」

神田エリアは、伝統ある祭りなど、活気ある地域文化の継承を行いつつも、時代毎に新しい文化を受け入れ、発信をしてきた街です。その柔軟さが、この街の魅力の一つとなっています。

人道橋により生まれる、街と街、人と人のつながり

⼤⼿町側から⾒た⼈道橋と⽇本橋川、防災船着場、そして⼤⼿町ゲートビルディング。人道橋の先に広がるのは、約1,000平方メートルの交流広場

丸の内開発部で主事を務める⼩鴨翔⽒

多様な働き方に合わせて自由度の高いレイアウトが叶う、開放感のあるオフィス

日本橋川に架かる⼈道橋は大手町仲通りと接続しており、神⽥エリアと⼤丸有エリア間で新たな賑わいが拡大する

大規模な広場が少ない神田エリアに、約1,000平方メートル規模の交流広場が誕生。新たな人流や賑わいの拡がりが期待される

中央が⼤⼿町ゲートビルディングで、日本橋川を挟んで左側に建つのが⼤⼿町フィナンシャルシティ ノースタワー

オフィスフロアの平面図。天井高は2,900mm、床荷重は 500kg/平⽅メートルで、スペース効率を重視したアイランド型のオフィスプランも叶う

神田と大手町の結節点に位置する大手町ゲートビルディング。ビルから大手町駅までは徒歩3分、神田駅までは徒歩6分と、交通利便性にも優れており、両エリアのメリットを大いに享受できる立地です。さらに、新たに誕生するこのスポットのシンボルとも言えるのが、日本橋川の上に架かる人道橋です。この橋の誕生により、大手町仲通りから神田エリアまでがシームレスに繋がります。

そんな人道橋には、多くの願いが込められていると話すのは勝田氏です。

「大手町エリアの街づくりが進む中で、『大手町と神田、2つの街を人々が行き交い、より多くの交流ができれば、新たな価値創造につながるのではないか』という話が出てきました。そこから、人の動きの選択肢に広がりをつくるにはどうすればよいかと考えた結果、新たに橋を架けることにしたのです。この橋ができると、神田エリアから大手町仲通りがスムーズに繋がることはもちろん、その先にある丸の内仲通りとも繋がります。その結果、神田エリアと大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアの間で新たな人流が生まれることが期待できます」

例えば、有楽町から大手町にかけての仲通りでは、会社対抗の綱引き大会や周辺企業の方々が参加するラジオ体操など、エリアを越えて様々なイベントが開催されています。こうした機会は、このエリアにオフィスを置く企業にとって、交流のチャンスになるとともに、街を一体となって盛り上げていくという機運につながります。今回のプロジェクトで人道橋が開通することにより、このような交流の場が面的に拡大し、神田エリアにも新たな流れが生まれることになるでしょう。人道橋が架かるその先に設置される、約1,000平方メートルの交流広場でも、仲通りと同じように街の人々や企業が交流できるイベントの開催などが期待されます。かつて、鎌倉河岸を起点に新たな文化が生まれたように、大手町ゲートビルディングが交流の場となり、その先に新たな文化が誕生する──そんな未来が待っているかもしれません。

そして、現在建設中の人道橋周辺には今しか見られない、ある「作品」が設置されています。同じく、勝田氏が教えてくれました。

「人道橋を建設している現場の大手町側の仮囲いに、神田で暮らす人々のポートレート写真を展示しています。これは東京ビエンナーレ2023(東京を舞台に2年に1度、開催される国際芸術祭)において制作された、池田晶紀氏の作品『写真で繋がる街と街~大手町・神田』です。10年以上にわたり撮影された神田の人々の写真を大手町側に展示し、人道橋が架かる前から両エリアの繋がりを予感させ、新たな景色への期待感を高めています」

写真に写る神田の人々は、笑顔であったりポーズを取っていたりと、その表情は生き生きとしたものばかりで、街の息吹までが伝わってきます。この展示について、勝田氏はこう語ります。

「大手町側に展示されている写真を神田の人々が見に来て『知り合いが写っているんだよ』と盛り上がっていたという話も聞いています。人道橋がもたらす未来の交流を予感させてくれるエピソードで、私も嬉しくなりました」

神田に暮らす人々や、人道橋をきっかけに大手町側から訪れる人々の、重要な結節点となる大手町ゲートビルディング。多くの文化を発信してきた神田の新たなシンボルの一つとして成長していくことでしょう。

鎌倉河岸の「食」の歴史を継承する、新たな発信拠点

飲食店のテラス空間が広がる、明るく賑やかな水辺空間。ビルの低層部には舟運利用者の待合機能も持った、観光案内所が整備される予定

編集会議で神⽥の⾷⽂化について語る勝⽥⽒

前述のように、鎌倉河岸からは建材だけでなく食材も荷揚げされ、それらが江戸の家々の食卓に上っていました。鎌倉河岸で荷揚げされていた食材は、すぐそばにあった青物市場で取引されていたという歴史的経緯もあります。この青物市場は、江戸時代から昭和時代初期まで、鎌倉河岸の北側に存在していました。

青物市場は、食材流通の場としてだけではなく、食文化の発信地としての役割も担っていました。ここから伝わっていった文化の一つに「居酒(いざけ)文化」というものがあります。江戸時代、鎌倉河岸で創業した「豊島屋」という酒屋がそのルーツになったとも言われています。酒とつまみを提供して店の軒先で客に飲食を楽しんでもらう、という新たなスタイルが大繁盛したのです。

このような鎌倉河岸が持つ「食」にまつわる歴史の一ページを受け継ぐ施設が、大手町ゲートビルディングの中に誕生します。

「大手町ゲートビルディングの中にアグリ(農業)・フード分野を支援し、また情報発信をするビジネス・産業支援施設をつくります。私たちが普段口にするものは、食卓に届くまで、生産者の方、食品加工会社、流通を担う会社など、多くの人が携わっています。このような一つ一つのセクションのプレイヤーが一つの場所でつながることができれば、今までにないアイデアが生まれたり、生産や流通の方法の見直しができたりするかもしれない。そのような想いから、食や農にまつわる様々なプレイヤーが共創できる環境をつくりたいと考えました」

この勝田氏のコメントを受けて、小鴨氏は国内のアグリ・フード分野における課題と、その解決への熱意を語ってくれました。

「農業に関しては、担い手不足や低い食料自給率など、様々な課題を耳にすることも多いものです。しかし、実際の現場を調べてみると、Uターン・Iターンをして農業に従事する若い人がいたり、面白いアイデアを持っている人がいたりと、明るい話題も尽きない。ただ、個々の力ではマーケティングや発信をするリソースに限界があるため、前向きな取り組みがなかなか世の中に広がっていかない状況があります。では、我々はこういった課題に対してどういった関わり方が出来るのかと考えた時に、『交流の場づくり』という答えに辿り着きました。今はその第一歩として『めぐるめくプロジェクト』という取り組みを行っています」

このプロジェクトは、生産者、食品加工会社、販売会社、生活者といった垣根を越え、相互に理解を深め、交流しあうことで共創し、豊かな食や社会をつくることを目指すプロジェクトです。主な活動としては、都市部の企業や研究機関と、地域の生産者の方などが交流できる場を設けたり、地域の生産者の方の活動をサポートしたりするプログラムなどを運営しています。実際に行われているイベントでは、「食」にまつわる様々なチャレンジを行っている地域のプレイヤー(スタートアップ企業など)と都市部の企業がパネルディスカッションなどを通して直接対話を行い、理解を深めています。企業にとっては、社会課題解決とビジネスの両立や、新規事業についてのヒントが得られるなど、様々なメリットがあります。また、この活動をきっかけに新たな商品が既に誕生しています。福島県で酒造りを行っている酒造「haccoba」と長野県の野沢温泉村でクラフトジンやウイスキーを生産する「野沢温泉蒸留所」がめぐるめくプロジェクトを通してコラボレーションし、新しいお酒を開発したのです。

遠く離れた地で生産活動をしているプレイヤーたちを繋げる場を作ることで、より豊かな「食」を生み出し、社会へと貢献する。そんな「農」と「食」が巡るプロジェクトの未来について、小鴨氏はこう続けます。

「めぐるめくプロジェクトのような取り組みがもっと広がっていけば、多様な業種の人がより有機的につながり、『食』に関する課題の解決スピードが上がっていくかもしれません。それには、めぐるめくプロジェクトといった“ソフト面”に加えて、人と人とが出会える場、“ハード面”の整備が必要となってきます。1人の生産者だけで場をつくるのは、費用面・継続面を考えても容易ではありません。そこで、出番が来たのが、我々不動産事業者である三菱地所です。全国のプレイヤーが集まりやすい東京駅に近い場所にこのような支援拠点を設けて、『ここに来ると、同じ思いを持った仲間に出会える』『ビジネスについて仲間と相談できる』といった場を提供し、日本中の地域を繋ぐハブ拠点をつくりたいと考えています。生産者の方や、食にまつわるプレイヤーの方々の新たな挑戦の伴走者となり、共創環境を創り上げていく、そういった役割を担っていきたいと考えています」

かつて鎌倉河岸付近にあった青物市場は、青果を取引する多くの人で構成されていました。大手町ゲートビルディングでのアグリ・フード産業支援施設も、小鴨氏の話にあったように生産者、加工会社、生活者といった様々な人が出会い、そして新たなアイデアが生まれる場所になるはず。江戸時代から脈々と受け継がれる歴史を、現代の人々が受け継ぐ場所が生まれるのです。

神田エリアの未来を見据えた防災・環境対策

⽊材パネルが使用されているエントランス。神田エリアの新たなランドマークにふさわしい、上質感と安心感のある温かな雰囲気

⼩鴨⽒は編集会議で、 ZEB Ready 取得までの道のりを解説

人道橋の眼下を流れる日本橋川は、江戸時代から近代に至るまで、物流の重要ルートとして機能していましたが、これからは防災拠点としての役割も担うことになります。今回のプロジェクトでは、日本橋川沿いに新たな船着場を整備します。災害時には「防災船着場」として、人員や物資の輸送に役立てることを想定しています。

「東日本大震災以降、オフィスビルには耐震性能や非常用発電設備などのBCP(事業継続計画)対策がなされていることが当たり前のこととして求められるようになりました。大手町ゲートビルディングも災害時には平時と同等の電力を72時間供給できる非常用発電機などの機能を備えていますが、日本橋川に面しているという特性を活かし、昔から船の交通が盛んだった歴史に学び、『防災船着場』を整備することにしたのです」

と、勝田氏。必要とされる設備を満たすに留まらず、エリア全体の未来を見据えた対策も行う——それが、大手町ゲートビルディングの大きな特長です。小鴨氏は、防災船着場の整備で工夫した点を次のように説明します。

「船着場までの通路はスロープを設置しており、バリアフリー設計となっています。また、災害時にもこのスロープを利用することを想定して、負傷者を搬送する際にストレッチャー(担架)が通行できるだけの幅に設定しています。さらに、船着場の広さは、日本橋川を航行する一般的なサイズの船が2艘同時に着岸できるほどです」

このような取り組みに加えて、大手町ゲートビルディングでは環境問題に対する意欲的な取り組みも行っており、三菱地所の高層テナントオフィスビルとしては初めてとなる「ZEB Ready(※)(事務所部分)」の認証を取得しました。

「ZEB Ready認証を取得するには、建物全体のエネルギー消費を抑えることが必要なため、設計段階から取得を意識することが必要不可欠でした。大手町ゲートビルディングのような大型のオフィスビルでは必然的にエネルギー消費が増えるので、認証の基準値までエネルギー負荷を低減するのはとても難しい取り組みでした。具体的にはメインファサードを北面開口として夏期の日射負荷を軽減したり、Low-E複層ガラスを採用したり、全熱交換器等の高効率機器を採用するなど、省エネルギー施策に取り組みつつも快適性を両立できるように、先進的な環境技術を導入して工夫を行いました。それだけに認証の取得が決まったときは、設計・開発のメンバーは皆、『これまでの取り組みが実った』という思いになりました」

そう話す小鴨氏は、BCP対策と同様に、こうした環境への配慮も現代のオフィスビルに求められる要素であると続けます。

「特に外資系企業がオフィスビルを選ぶ際には、環境認証を取得しているかどうかを重要な条件とするケースが多く見られます。近年は国内でも、大手企業を中心としてビルに対する環境性能を重視する傾向にあります。大手町ゲートビルディングは、ZEB Readyのほかにも建物利用者の健康や快適性を評価する『CASBEEウェルネスオフィス』で最高ランク(Sランク)の認証も取得しています。これらは入居テナントのSDGsやウェルビーイング経営に対する取り組みの一助になると考えられます」

さらに、目に見える部分でも環境配慮の工夫が見られます。大手町ゲートビルディングでは様々な木材を活用して、建物の一部を木質化しています。通常の木材では防火・耐震面での課題がハードルとなりますが、それらの課題をクリアした新たな素材を利用することで、木材の活用を推進しています。

例えば、エントランスホールの壁・天井仕上げには「木材パネル」を、産業支援施設の露出天井仕上げには新木質建材「MIデッキ」を利用しています。使用する「木材パネル」には、建築資材としての利用が難しい原木丸太端材を使用することで、長期的な炭素固定化(※)に貢献しています。また、「MIデッキ」はMEC Industry株式会社 が独自に開発した商品で、伐採適齢期を迎えた国産木材を適切に活用することで、国土保全や炭素固定といった地球環境へのメリットも期待されています。適齢期を迎える木を適切な時期に伐採・活用し、より多くの二酸化炭素を吸収できる新たな若い木を植林・育林する。このサイクルを適切に行うことで、長期的な炭素固定が促され、地球環境への貢献に繋がります。

かつて、鎌倉河岸では木材などの建材が荷揚げされていました。そのような歴史の一場面が連想されるような、天然の木材を利用した温かみのあるエントランスホールは、神田エリアの新たなランドマークとなることでしょう。

そしてもう一つ、エリア全体の環境負荷低減に貢献する新たな挑戦も行われています。それが、大丸有エリアのエネルギーネットワーク、地域冷暖房施設(DHC)の延伸です。DHCとは、熱製造プラントから冷水・蒸気を地域内の各建物に送ることにより冷暖房・給湯などを行うシステムで、省エネルギーだけではなく、都市災害防止にも貢献します。

この地域冷暖房システムを今回のプロジェクトで神田エリアへ延伸することの意義について、小鴨氏は次のように語ります。

「DHCはこれまで大手町側にしかありませんでしたが、このプロジェクトでは神田エリアの将来的なエネルギーネットワーク構築も視野に入れて、日本橋川の下に洞道を整備する、という大きな挑戦を行いました。計画地側に新たな立坑を整備し、シールドマシンという大きなドリルで川底の下を掘削して洞道をつくり、それを大手町側の立坑と接続したのです。DHCを延伸したことで、従来の大丸有エリアだけでなく神田エリアでも新たなエネルギーシステムを取り入れることができるようになりました。防災船着場をはじめとしたBCP対策、ZEB Ready認証やDHCの延伸といった環境面・防災面での対応、さらに人道橋や広場の整備による回遊性向上への取り組みなど、このプロジェクトを通して神田エリア全体に貢献することができれば、と考えています」

持続可能な世界を実現することが世界共通の目標となっている昨今、企業や様々な共同体は、目標を達成するために多くの取り組みを行うことが求められています。ZEB Ready取得までに多くの苦労があったことからもわかるように、この責任を果たすことは簡単ではありません。しかし、大手町ゲートビルディングプロジェクトでは、神田エリア全体の未来を見据えて、オフィスビルを建てるだけではなく、困難ともいえる数々の挑戦を行っているのです。

※ZEB Ready
ZEBはNet Zero Energy Buildingの略で、省エネルギー・創エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建物の認証基準。ゼロエネルギーの達成状況に応じた4段階の定義があり、このうち、ZEB Readyは従来の建物で必要なエネルギーと比較して、消費するエネルギーを50%以下に抑えた建物を指す。

※炭素固定化
炭素固定化とは大気中の二酸化炭素を取り除き、何らかの方法で固定化すること。一般的な例では、植物による光合成など。植物は光合成の過程で二酸化炭素を吸収し、植物の内部で二酸化炭素を留める(固定化する)ことで、大気中に排出される二酸化炭素の量を減らしている。

「神田」の精神を受け継ぐ、新たなシンボルタワー

大手町ゲートビルディングプロジェクトは、新たな文化を取り入れながら、歴史を紡いできた神田の精神を受け継ぎ、人道橋をはじめとする様々な挑戦に取り組んできました。

このプロジェクトが神田エリアのさらなる発展に貢献できることを期待して、小鴨氏は次のように語ります。

「現在の神田は、書店やグルメを目的に多くの人が集まっており、最近ではサウナ・銭湯といった切り口で若い世代の人々も足を運ぶ街になっています。神田を少し歩くだけで、この街が持つ多様な一面を発見することができるでしょう。大手町エリアとの結節点となる大手町ゲートビルディングが誕生することで、新たな人の流れが生まれ、より多くのエリアからこの街に訪れる人が増えるだろうと思います。多くの人にとって、このビルが神田の面白さに触れるきっかけになればと思っています」

勝田氏も、大手町ゲートビルディングで何かが“生まれる”、その可能性を語ります。

「創建から1200年以上の由緒ある神田明神では、アニメとコラボレーションを行うなど、新たな文化を取り入れており、そのような取り組みの効果もあって、現代においても多くの人が集まる場所となっています。神社という伝統的な場所が、現代の文化と融合するという面白い試みは、昔から文化発信の地であった神田らしい取り組みだと感じています。また、グルメという文脈で言うと、有名カレー店やラーメン店が集まる神田は『激辛』ブームの発祥地という説もあるそうです。このような話から神田は、新しい文化、あるいは、プロダクトを生み出してきた街であり、発想の源泉になり得ると感じています。そして、大手町ゲートビルディングは神田エリアにおいて、新たな文化の一ページとなり得るプロジェクトだと思っています。人道橋や広場の設置などの新しい挑戦に魅力を感じていただけると嬉しいですね」

「⼤⼿町ゲートビルディング」の模型を背景に撮影。神田エリアの未来に貢献したいと語る⼩鴨⽒(左)と勝⽥⽒(右)

小鴨氏の話にあるように、街と街の結節点となる大手町ゲートビルディングが誕生することで、神田という街の再発見につながることでしょう。新しい人の流れ、賑わい、景色が生まれることで、神田という街の魅力がさらに深まることが期待されます。

人道橋によって繋がる神田エリアと大丸有エリア、この新たな“動脈”が、神田エリアに、そして大丸有エリアにも大きな活力をもたらすことでしょう。大手町ゲートビルディングが新たな文化発信拠点となり、神田エリアの歴史の一ページを紡ぐシンボルタワーとなる日が、もうすぐそこまでやってきているのです。
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物件
紹介

大手町ゲートビルディング

物件
紹介

大手町ゲートビルディング

物件概要
所在地
東京都千代田区内神田1丁目31番11外
主要用途
事務所、店舗、ビジネス・産業支援施設、駐車場等
敷地面積
約5,100 ㎡(約1,543坪)
延床面積
約85,267㎡(約25,793坪)
階数
地下3階、地上26階、塔屋2階
高さ
約130m
構造
地下:鉄骨鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造、 鉄筋コンクリート造
地上:鉄骨造
設計監理
(株)三菱地所設計
施工
大成建設(株)
竣工
2026年1月末(予定)
エレベーター
低層バンク6基、中層バンク4基、 高層バンク6基、VIP用1基、
ビジネス・ 産業支援施設用2基、非常用兼人荷用2基
駐車場台数
約150台
交通
東京メトロ丸ノ内線・千代田線・半蔵門線・東西線、都営三田線「大手町駅」より徒歩3分
JR山手線・京浜東北線、東京メトロ銀座線「神田駅」より徒歩6分

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※掲載物件については、公開後すでに契約済となっている場合があります。
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