潜在空室率・平均募集賃料推移
東京主要5区の潜在空室率は、2025年1月末時点の4.43%から下降が続き、2025年12月末時点では1.92%(前年同月比-2.64pt)となった。主要5区の潜在空室率は、2025年10月に2020年5月以来(5年5ヶ月ぶり)となる1%台(1.96%)に到達し、その後も極めて低い水準で推移している。
東京主要7区の潜在空室率についても、2025年1月末時点の4.52%から下降し、2025年12月末時点では2.31%(前年同月比-2.35pt)となった。
また、2025年12月末時点の平均募集賃料は、東京主要5区において32,306円/坪(前年同月比+568円)、東京主要7区においては27,944円/坪(前年同月比-1,306円)であった。なお、主要7区や一部の区に見られる平均募集賃料の下落は、需給逼迫により賃料水準の高いハイグレード物件が先行して埋まっていったことにより、集計対象における賃料水準の低いビルの割合が増加したことが原因となっている。次ページに示している実勢価格としての成約賃料は上昇傾向であるため留意が必要である。
2025年の主要5区、7区の潜在空室率は、適正水準とされる5%〜3%を下回る2%〜1%台まで下降し、都心部を中心にオフィス需給は完全に貸し手市場の局面を迎えた。
需要増加(回復)により潜在空室率は1%台へ。貸し手市場化に伴う募集形態等の変化も。
2025年は出社回帰の定着に加え、Web会議ブースや交流ラウンジの拡充、従業員のウェルビーイングに寄与する設備の導入など、「オフィスに求められる機能」の多様化に伴う面積需要の拡大を背景に、潜在空室率は大きく低下し完全な貸し手市場へと変化した。需要の高まりは既存ビル内の空室を早期に消化する要因になっており、解約予定区画が一般募集に出る前に館内テナントの増床等で成約に至るケースが昨年から一層増加している。また、既存物件の空室の少なさが影響し、1,000坪を超えるような大型ニーズを充足できるビルは実質的に新築物件に限定されてしまうような状況となり、新築物件や開発中物件の内定率も高くなっている。さらにこうした需給背景から、大手貸主による「CPI(消費者物価指数)連動条項」の導入や、一部の物件における入札形式の募集形態の採用など、 市場環境を反映した動きが見られ始めている。
千代田区の潜在空室率は、2025年1月末時点の1.84%から下降を続け、2025年12月末時点では1.28%(前年同月比-0.71pt)となった。2025年4月以降は1%台前半の低水準が続いており、募集開始直後に成約に至るケースが非常に多くなっている。平均募集賃料は40,741円/坪(前年同月比+730円)と、5区の中で突出した高値となっている。
渋谷区の潜在空室率は2025年1月末時点の2.21%から2025年12月末時点では1.16%(前年同月比-1.44pt)まで低下し、5区の中で最も低い水準となった。特にワンフロア500坪以上の大型在庫が枯渇しており、激しい獲得競争が続いている。稀少な空室については入札形式での募集が実施されるなど、需要の高さが反映された募集形態も目立っている。平均募集賃料も33,322円/坪(前年同月比+1,158円)まで上昇した。
中央区の潜在空室率は2025年1月末時点の5.60%から大幅に回復し、2.29%(前年同月比-3.37pt)となった。特に八重洲・京橋・日本橋エリアの潜在空室率は1%を切っており、東京駅周辺での回復が顕著であった。また、晴海などの湾岸部エリアについても潜在空室率は回復傾向となっている。区全体の平均募集賃料も23,569円/坪(前年同月比+1,217円)と上昇した。
港区の潜在空室率は2025年1月末時点で6.38%であったが、2025年12月末時点では2.18%(前年同月比-4.13pt)まで回復し、5区最大の回復幅となった。他エリアで床を確保できない大規模テナントが港区の大型新築・築浅ビルへ流入したこともあり空室消化が進んだことが要因となった。なお、平均募集賃料は2025年12月末時点で31,551円/坪(前年同月比-2,222円)と下降しているが、これは港区に多く存在していた賃料水準の高いハイグレード物件の募集が、この1年間で大幅に減少したことに起因しており、実勢価格としての成約賃料は上昇傾向のため留意が必要である。
新宿区の潜在空室率は、西新宿エリアを中心に大型区画で成約が進んだ結果、2025年1月末時点の4.97%から2025年12月末時点では2.84%(前年同月比-2.88pt)まで低下した。平均募集賃料は33,317円/坪(前年同月比+4,704円)と、主要5区の中で前年同月比上昇幅が最大となっている。
空室の減少と賃料上昇が続く中、オフィスに係る費用を単なる「コスト(固定費)」と捉えた場合、現在の賃料水準での移転判断は困難になりつつある。こうした中、オフィスをブランディングやエンゲージメント向上などに直結する「投資」と再定義し、中長期的な経営戦略に基づいて移転を判断する企業が増加している。また、空室の減少に伴う物件の獲得競争は一層激しくなっており、優良物件の確保には迅速な意思決定が不可欠となっている。
なお、成約賃料については全てのエリアで上昇しており、空室の減少に伴って成約賃料水準も上昇していったといえる。下記に2025年12月末時点における各エリアの推定成約賃料を示す。
推定成約賃料マップ
新築の供給量と潜在空室率、開発状況
2025年の東京主要5区オフィスビル新規供給量は約38万坪であり、2024年の約16万坪と比較すると2倍以上の供給となった。オフィス需要の高まりによる既存空室の解消が進み、2025年に竣工した物件についても堅調に埋まっていったことで、マーケットにとっては大きな回復を果たした1年となった。
2025年竣工の大型新築ビルの内定率は非常に高く、臨海部などの一部のエリアの物件を除きほぼすべての物件が満床ないし満床に近い状態での稼働となっている。
なお、2026年竣工予定の物件についても既に高い内定率となっており、2027年~2028年については新規供給量が約14万坪~23万坪と減少する見込みとなっている。このような背景から、少なくとも2028年までは空室率は下降傾向で推移することが見込まれる。2029年以降については、計画通りに開発が進めば供給量が増加予定であり、内定率が低下すれば空室率が再び上昇に転じることも想定される。しかし、建築費の高騰などの影響による開発の遅れも懸念される状況であるため留意が必要である。

| 竣工年月 | 物件名 | 住所 | 基準階(坪) | 延床面積(坪) | 地上階 | 地下階 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年1月 | 住友不動産六本木セントラルタワー | 東京都港区六本木7丁目15-9 | 395 | 10,559 | 21 | - |
| 2025年1月 | 八重洲通フィルテラス | 東京都中央区八丁堀1丁目2-8 | 178 | 2,434 | 12 | 1 |
| 2025年2月 | BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S | 東京都港区芝浦1丁目1-1 | 1,560 | 80,896 | 43 | 3 |
| 2025年2月 | 虎ノ門アルセアタワー | 東京都港区虎ノ門2丁目2-3 | 1,054 | 54,647 | 38 | 2 |
| 2025年3月 | THE LINKPILLAR 1 (NORTH) | 東京都港区高輪2丁目21-1 | 1,501 | 139,204※ | 29 | 3 |
| 2025年3月 | THE LINKPILLAR 1 (SOUTH) | 東京都港区高輪2丁目21-2 | 1,016 | 139,204※ | 30 | 3 |
| 2025年4月 | 住友不動産大崎ツインビル西館 | 東京都品川区東五反田2丁目22-9 | 505 | 8,835 | 14 | 1 |
| 2025年5月 | ONARIMON YUSEN BLDG. | 東京都港区西新橋3丁目23-5 | 149 | 2,995 | 13 | 1 |
| 2025年6月 | 豊洲セイルパークビル | 東京都江東区豊洲2丁目1-9 | 1,275 | 26,990 | 15 | 1 |
| 2025年6月 | 麹町弘済ビルディング | 東京都千代田区麹町5丁目1 | 670 | 10,999 | 12 | 2 |
| 2025年6月 | 八重洲ダイビル | 東京都中央区京橋1丁目1-1 | 387 | 6,668 | 11 | 3 |
| 2025年6月 | Hi-gs日本橋 | 東京都中央区日本橋3丁目11-2 | 215 | 3,488 | 12 | 1 |
| 2025年7月 | 芝御成門タワー | 東京都港区新橋6丁目1-1 | 293 | 7,392 | 19 | 2 |
| 2025年7月 | 第一生命京橋キノテラス | 東京都中央区京橋2丁目4 | 255 | 4,886 | 12 | 2 |
| 2025年8月 | ミタマチテラス | 東京都港区芝5丁目34-2 | 584 | 16,790 | 20 | 3 |
| 2025年8月 | ヒューリック銀座ビル | 東京都中央区銀座1丁目7-10 | 210 | 3,884 | 12 | 3 |
| 2025年11月 | 日本橋本町M-SQUARE | 東京都中央区日本橋本町1丁目9 | 279 | 4,302 | 12 | 1 |
| 2025年12月 | IT tower TOKYO | 東京都豊島区西池袋3丁目28-4 | 291 | 12,596 | 27 | 4 |
移転傾向
2025年は、各社が働き方改革を推進・実行したからこそ見えてきた「リアルなオフィス」の価値を最大化するための動きが顕著に表れたといえる。 コロナ禍以降、多くの企業が働き方改革を通じてリモートワーク環境を整備し、業務の効率化や柔軟な働き方を追求してきた。しかし、その実践を積み重ねる中で、リモートワークは効率的な業務遂行には有用である一方、組織としての帰属意識の醸成や、イノベーションの創造といった、長期的な企業の成長に欠かせない要素がカバーできないという課題が認識されていった。同じ空間にいるからこそ育まれる帰属意識や、非言語情報を伴う偶発的なコミュニケーション、そしてそこから生まれるイノベーションという観点で、リアルな場に勝るものはないという本質的なオフィスの価値が再認識されたといえる。そのため、2025年の移転は「働き方改革の推進」を前提としたうえで、コミュニケーションを向上させ、対面でなければ難しい迅速な意思決定や相乗効果の最大化を企図した動きが目立った。分散していた拠点やフロアを集約し、物理的な壁を取り払った集約移転を行う企業も多かったといえる。また、人材確保が課題となる中で、オフィスを単なる「業務を行う場所」ではなく「従業員のエンゲージメントを高める投資対象」と明確に位置づけた動きもさらに加速した。働き方改革を推進するからこそ、出社した際に得られるメリットを最大化させるオフィス構築が2025年の潮流となった。
例えば、2025年4月より「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTHへ本社機能を移転したKDDIは、分散していた拠点を集約し、社内外の「共創」を加速させるワークプレイスを構築した。 新本社は「新しい働き方の実験場」として設計されており、社内ABWを実現するための多様なスペースに加え、社員の健康を支える食堂や運動施設を完備するなど、個々の働きやすさを追求している。その上で、移転の柱である「コラボレーションの促進」を実現させるため、社員同士の偶発的な出会いを生むオープンエリアや、パートナー企業との共創拠点である「TSUNAGU BASE」を設置した。新拠点を単なる執務スペースではなく、新たな価値を創造するための「実験場」と位置づけ、集まることで生まれるイノベーションの加速を目指している。
2025年8月にBLUE FRONT SHIBAURA TOWER Sへ本社を移転したシミックホールディングスは、グループ各社の拠点を集約し、組織間の連携強化と人的資本の最大化を図っている。新オフィスのデザインコンセプトを「THE CMIC PARK」と定め、これまで6フロアに分かれていた拠点を2フロアへ集約。各フロアを内階段でつなぐことで物理的な壁を取り払い、部門を超えた「新たなコラボレーションの創出」を加速させる環境を整えた。移転を機に、より柔軟で創造的な働き方を推進するとともに、多様な人材が「高いパフォーマンスを発揮する会社」を目指す姿勢を鮮明にしており、長期的な成長に向けた戦略的な投資としてのオフィス構築を実現している。
2025年9月にBLUE FRONT SHIBAURA TOWER Sへ本社機能を移転したコニカミノルタジャパンは、自社の働き方変革の実践を顧客へ公開するライブオフィスとしての機能を備えた新拠点を構築した。ハイブリットワークを前提としたうえで、新オフィスのコンセプトに「多様な価値を育む、“みえる”オフィスの新しいカタチ」を掲げている。新オフィスでは従業員一人ひとりや各部門・事業といった個の自律・生産性の向上を図るとともに、各部門・事業や働く人の姿が「みえる」レイアウトを実現した。「みえる」ことが気づきを創出し、さらに社員や来客が「つながる」ことによって、共助・共創を育むことを狙いとしている。なお、親会社であるコニカミノルタも、2027年2月に現在分散している本社機能を同ビルへ集約することを決定している。
このように、働き方改革の推進を前提としたうえで、コミュニケーションを向上・促進させる仕組みと、快適な就労環境の構築を徹底した移転が多かった。出社する価値を最大化させることで従業員が自発的に集まるオフィスを実現し、長期的な企業の成長に欠かせないイノベーションを加速させていく。こうした、働き方改革の「次」を見据えた組織の活性化への投資が、空室減少・賃料上昇という市場環境においても企業が移転を選択する要因になったといえる。
移転理由から見る移転事例一覧
● 当社集計対象:延床面積3,000坪以上のオフィスビル
● 東京主要5区、7区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区+品川区、江東区
● 当社集計の潜在空室率について:現在空室の物件と今後空室予定の物件を含めた空室率を算出しております。
また、新築物件に関しては竣工時に潜在空室率へ反映をしています。
● 移転傾向については、日経不動産マーケット情報を基に当社にて独自調査を行い作成しています。
● 掲載データは2025年1月1日~2025年12月31日のデータを集計したものとなります。



