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OFFICE MARKET REVIEW 2023(2023年 東京主要5区・7区の空室率・賃料推移総括)

空室率‧平均募集賃料推移

東京主要5区の空室率は、約6%台で推移しており、2023年12月末時点では6.31%(前年同月比+0.06pt)となった。
東京主要7区の空室率は、2023年7月末時点に7.05%まで上昇して以降は緩やかな下降傾向であったが、2023年12月末時点では、6.44%(前年同月比-0.50pt)となり5ヵ月ぶりの上昇となった。空室率は2021年2月以降、34ヵ月連続で主要5区・7区共に適正空室率の5%を超える結果であった。
また、2023年12月末時点平均募集賃料は、東京主要5区において30,399円/坪(前年同月比+683円)、東京主要7区においては28,153円/坪(前年同月比+1,132円)であった。主要5区の平均募集賃料は2023年11月に3万円台に上昇したが、これは2021年10月以来25カ月ぶりのことであった。
主要5区、7区全体では、2023年の空室率、平均募集賃料はほぼ横ばいであったが、エリアごとにみてみると昨年に引き続き顕著に差が現れている。

需要によるエリアの二極化が継続。千代田区は空室率2%台となり貸し手市場に。

昨年同様に「働き方改革」を中心に据えた需要が多かった。2023年は「人材確保」、「従業員エンゲージメント向上」を掲げる移転も目立ち、特に千代田区や渋谷区の需要が高かった。2023年の東京主要5区オフィスビル新規供給量は、過去平均を上回る約39万坪であった。2021年、2022年の供給量は過去平均の半分に満たない水準であったため、過去平均を上回る2023年の供給によってマーケットが悪化する懸念もあった。しかし、空室率、平均募集賃料は昨年とほぼ同じ水準を維持した。区ごとに回復スピードに差はあるものの、マーケット全体として供給を上回る需要があったといえる。

千代田区の空室率は、2023年1月に3%台となり、それ以降も緩やかに下降した。2023年9月には2%台まで低下し、2023年12月末時点では2.62%(前年同月比-1.45pt)となった。平均募集賃料は、2023年12月末時点では37,006円/坪(前年同月比+1,261円)と東京主要5区の中で最も高い水準で推移しており、業種に偏りなく、高い需要があった。

渋谷区の空室率は、3~4%台で推移した。2023年4月には4%台まで上昇したが、2023年7月には3%台となり、2023年10月には3.20%まで回復した。2023年12月末時点では3.97%(前年同月比+0.91pt)となったが、これは新築物件の募集が開始されたことが要因と推察される。
渋谷駅周辺では竣工した大型物件が間もなくほぼ満床となるなど、IT企業やグローバル企業のニーズを背景に、賃料水準の高い大型物件であっても入居希望が多く、需要の高いエリアとなった。

品川区と江東区の空室率は、2023年1月末時点では10%を超える非常に高い状態であったが、その後は下降傾向となり2023年12月末時点で、品川区は6.67%(前年同月比-3.22pt)、江東区は7.64%(前年同月比-3.21pt)と大幅な回復となった。品川区では2023年12月に複数のエリアで比較的まとまった面積の募集が終了した物件があった。なお、品川区の空室率が6%台となったのは、2022年4月以降20カ月ぶりのことである。

中央区の空室率は、2023年10月に水天宮エリアで大型物件の大量部分返却があり、7ヵ月ぶりに8%台まで上昇した。2023年12月末時点では8.26%(前年同月比+0.49pt)となった。
港区の空室率は、2023年1月末時点では7.97%であったが、2023年7月には9.91%まで上昇、その後は下降傾向となり2023年12月末時点では8.81%(前年同月比+0.80pt)となった。港区は虎ノ門エリアを中心に複数の大型物件の竣工があり、新築募集床の大量供給とそれに伴う二次空室の発生が空室率に大きな影響を与えていると推察される。

このように、需要によるエリアの二極化が昨年から継続している。千代田区は既に貸し手市場といえる状態になっており、渋谷区についてもじきに同様の状況になると推察される。空室率の高いエリアについては、募集条件を緩和しニーズを獲得する動きが継続している。賃料そのものを下げるほか、フリーレントの付与による“均し賃料”で条件を緩和する事例も多い。均し賃料は、一定の条件を満たせば会計処理で毎月の賃料を均し賃料で計上することが可能である。移転を検討している企業にとっては、賃料そのものに加え、均し賃料についても検討指標の一つとすることが推奨される。

なお、成約賃料の推移はほぼ横ばいとなっているが一部エリアにおいては下降も見受けられる。前述の通り平均募集賃料は上昇しているエリアもある中、賃料水準の高い大型ビルを中心に、募集賃料と実際の成約賃料の乖離が大きい状況が継続していると言える。
下記に、2023年12月末時点における各エリアの推定成約賃料を示す。

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新築の供給量と空室率、開発状況

2023年の東京主要5区オフィスビル新規供給量は約39万坪と、3年ぶりに過去平均を上回る数字となった。2023年の大量供給によって空室率が悪化する懸念もあったが、昨年とほぼ同じ水準を維持した。マーケットは回復傾向にあり、新規の供給を上回る需要があったといえる。2023年に竣工した大型ビルのうち、渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー、渋谷サクラステージ セントラルビル、東宝日比谷プロムナードビルなどは、ほぼ満床状態で稼働している。
新築ビルは、一定以上のビルスペックを当然の要件とし、空室率が低いエリアの物件については賃料水準がある程度高くとも埋まる傾向にあるといえる。

移転傾向

「働き方改革」を前提としながら、「コミュニケ―ション向上」や「従業員エンゲージメント向上」、「人材確保」を目的とした移転が目立った。働き方が多様化し、オフィスをリモートでは補えない質の高いコミュニ―ションや、従業員エンゲージメントの向上を実現する場と捉えた移転がトレンドとなっている。また、同様に従業員にとって働く環境が非常に重要な要素となったことから、優秀な人材の確保を目的として移転する企業も多かった。

2023年の日経ニューオフィス賞を受賞したオフィスについても、「コミュニケーション」や「エンゲージメント」を重視したものが多く、コミュニケーションについては社内だけでなく、社外との交流も重視する傾向が強かった。
例えば、2022年11月に日比谷セントラルビルに移転した三井物産都市開発は、執務エリア内に来客会議室を点在させることで、来訪者と従業員のコミュニケーションを促進。さらに、従業員だけでなく誰でも利用が可能なカフェ兼ワークスペースを設置し、社内・社外やアポイントの有無にとらわれない偶発的な交流の発生を企図している。このように、社外とのコミュニケーションにも注力した新しいオフィスの形に挑戦している。

三菱地所ホームは、入居ビルの建て替えをきっかけに新宿イーストサイドスクエアへの移転を実施。企業風土の改革を掲げ、ABW型のワークスタイルに移行することで、部署間の垣根を超えたコミュニケーションを実現した。また、顧客との商談やイベントで使用する共創空間には自社注文住宅の構造材として使用される「スギ・ヒノキ・カラマツ」の原木を設置。社外への発信力を高めるだけでなく、自社の商品思想にふれる場をつくることで従業員の意識向上やエンゲージメント向上を企図した。

最高賞である「経済産業大臣賞」を受賞した兼松は、「30年後を見据えた成長を支え続けるワークプレイスの構築」というビジョンを掲げ、JPタワーに移転した。ABWとICTを活用したワークプレイスを実現し、業務の効率化に加え、従業員の主体的に仕事に取り組む姿勢を喚起させることに成功。完全フリーアドレス制の採用や、オープン打ち合わせスペース、カフェや内階段の設置により、組織横断的なコミュニケーションが促進され、シナジー効果も得られた。オフィス内には自社の歴史やDNAを感じさせる工夫を凝らし、カフェでは自社の取り扱う食材を使ったメニューを提供するなど、従業員エンゲージメント向上にも注力している。

このように、働き方改革の実現は言うまでもなく、リモートでは補うことのできないリアルなコミュニケーションや、従業員エンゲージメントの向上を目指す移転が増えているほか、働く環境が重要視されるようになった中での人材確保を目的とした移転がトレンドになっている。


● 当社集計対象:延床3,000坪以上のオフィスビル
● 東京主要5区、7区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区+品川区、江東区
● 当社集計の空室率について:現在空室の物件と今後空室予定の物件含めた空室率を算出しております。
 また、新築物件に関しては竣工時に空室率へ反映をしています。
● 移転傾向については、日経不動産マーケット情報等を基に当社にて独自調査を行い作成しています。
● 掲載データは2023年1月1日~2023年12月31日のデータを集計したものとなります。

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