空室率は新築ビルの大量供給やテレワーク促進の影響により11か月連続で上昇
2020年4月から2021年3月時点までの平均空室率は東京主要5区・7区共に11か月連続で上昇。東京主要5区で+3.49pt、東京主要7区では+3.39ptとプラスに変動しました。
特に大きな変動率を見せた港区では、新築ビルの供給による二次空室の発生に加え、自社ビルの売却に伴う貸出を理由に空室面積の大幅な増加を見せ、6.1ptの上昇となりました。上昇の主な要因は、コロナ禍で先行きに不透明感もあり、新築ビルへ移転するテナントの二次空室の成約スピードが昨年度以前に比べ落ちていることや、テレワークの促進とオフィス返却の動きが活発化していることなどが挙げられます。
2021年3月時点の発表では、東京主要5区・7区共に適正空室率の5%を超えましたが、適正空室率内の3~4%で推移している区も見受けられます。そのことからコロナ禍以前と比べ物件の選択肢が広がっており、オフィス戦略のシナリオ作りがしやすいタームへ突入したと言えます。
平均募集賃料はピークアウトを迎え下降傾向
上昇を続けていた東京の平均募集賃料は2020年7月に上昇のピークを迎えました。現在にかけては徐々に下降傾向を続け、東京主要5区で-3,084円、東京主要7区では-1,316円となりました。
2020年度のオフィス供給量は57.4万坪となり、過去2番目に多い年でした※。代表的な竣工物件はmsb Tamachi 田町ステーションタワーNやHareza Towerが挙げられます。
2021年前半までに竣工を迎える物件はコロナ禍以前にテナントを確保しており、内定率は高い状況となっています。新築物件の募集賃料もコロナ禍以前と同程度での募集となっている一方、空室の多い物件では賃料の交渉幅が出てきているケースも見られます。
※過去実績年平均のオフィス供給量:33.3万坪/年 当社集計データより
2021年度の見通し オフィス戦略の転換期/目的の再定義が求められる
今後の見通しは、2021年(約16.0万坪)・2022年(約14.2万坪)とオフィス供給が例年に比べ少ない為、空室率の上昇ペースは一旦抑制されながらも2023年にかけて穏やかな上昇が続くと予測されます。
平均募集賃料についても緩やかな下降が続くことが予想されますが、大幅な値下げとはならないでしょう。ただし、コロナ禍以前に募集賃料の高騰がみられていた一部エリアについては賃料の調整局面に入っており、ほかのエリアに比べて下落率は高くなると予想されます。コロナ禍以降の新築物件を含めた各物件のリーシングも停滞が顕著であることから、賃料相場の軟化が想定されます。
新型コロナウイルス感染拡大によりオフィスの在り方の転換期を迎えており、今後さらにオフィスの多様化が想定されます。オフィスの目的を再定義し、適切なオフィス選びを進めることが求められていくことでしょう。
当社集計対象
● 延床面積3,000坪以上のオフィスビル
● 東京主要5区:千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区
東京主要7区:上記主要5区に加え、品川区・江東区
当社集計の空室率について
現在空室の物件と今後空室予定の物件含めた空室率を算出しております。また、新築物件に関しては竣工時に空室率へ反映をしています。
※2020年4月~2021年3月各月発表時点の数値です。