かつての日本オフィスにおける働き方
昭和中期から日本は世界的に例のない高度経済成長期に入りました。その後、平成の時代に移り変わるとともにバブル崩壊。この時代から台頭したのが携帯電話とインターネットです。平成後期にはITサービスの発展とともにSNSが発達。ビジネスの在り方も徐々に変革しています。
昭和から平成にかけて日本のビジネスパーソンは、決められた時間に出社し、指定の場所で業務に取り組むことが当たり前でした。新入社員は常に上司や先輩とコミュニケーションが取れるような席に配置されます。自分の席には自分専用の電話や資料棚があり、決まった相手と会話をするのが日常だったのではないでしょうか。
働き方の変遷
時代の流れに従って、働く場所も移り変わります。ノートパソコンが普及し、固定席から自席以外の場所で、社外のカフェや電車の中でも働ける環境になりました。さらに、街中にWi-Fiスポットが設置され、迅速なインターネットサービスが提供されるように。
働く場所を選ばなくなったことで、オフィス内で働いていたビジネスパーソンも外での業務がしやすくなりました。アポイントの合間に業務をこなし、オフィスに戻ることなく直帰ができるという効率的な働き方です。このような「リモートワーク」(※1)によって“定時に出社してオフィスでタイムカードを打刻し帰路に就く”といった文化は次第に薄れていきます。「ノマドワーク(※2)」という言葉が出始めたのもこの頃。会社員やフリーランスに限らず、様々な場所で働くノマドワークを容認する企業も増えてきました。
新しい働き方の浸透は育児や介護に追われるビジネスパーソンにもマッチ。従来であれば、育児休暇などを取ることで収入減が懸念されましたが、場所を選ばない働き方が容認されてきたことで、多くの人が仕事とプライベートを両立できるようになっています。
BCP対策(※3)の観点では、企業側にもメリットがあります。災害時などで社内のライフラインがストップしたり、通勤が困難な状況でも業務を進めることが可能です。
※1:遠隔で働くこと。従業員が主に社外でメールや電話、インターネットを利用して企業とコミュニケーションを図り業務に取り組む状況。
※2:ノートパソコンやスマートフォンを活用し、Wi-Fi環境のある喫茶店など様々な場所で働くこと。
※3:災害などの緊急事態に見舞われた時に、業務の被害を最小限に留めつつ、事業を継続するために企業が取る施策、行動指針。
“自由の中の自律”が鍵
自由に選べる場所で働くことは多彩なメリットがある反面、デメリットもあります。大きな懸念点は自律性です。かつての日本オフィスのように、自身の業務をチェックする先輩や上司が近くにいないこともしばしば。
例えば、「報告すべきトラブルを単独で処理する」、「期限内に納品物を仕上げられない」などといった問題が起きるかも知れません。自由なスタイルで働くには、自分自身の“自律”が必要です。
自分を律するというのは思いのほか難しいもの。しかし、例え働く場所が違ってもコミュニケーションツールでしっかりとつながることが、現代では可能です。
Web会議や全社員用チャットツールなどを駆使して、同僚や上司、管理者ら様々な立場の人とのコミュニケーションを円滑にしつつ、それぞれ自由な場所で働くというスタイルの企業は増えています。モバイルツールを活用するこのような働き方は、令和の時代の主流になるのではないでしょうか。