地域の文化に根差した街づくりとオフィスコンセプト
街の中にもう1つの街が在る――。日比谷線・神谷町駅から地上へと向かい、見上げると麻布台ヒルズが姿を見せます。ここ麻布台は、意匠を凝らした近代的な建物の周りに神社や寺が鎮座している、歴史と文化が蓄積された趣深い街です。
懐かしいのに新しい。そんな空気感に触れながら、繁った木立を傘に、起伏に富んだ道を歩いていくと、緑豊かな庭が眼前に広がり、その広場を囲むようにいくつもの建物が建ち並んでいることに気づきます。そんな都会のオアシスのような麻布台ヒルズの一角にあるのが「麻布台ヒルズ 森JPタワー」。地上64階、地下5階、高さ330mで、東京タワーと肩を並べる日本一の高さを誇る複合ビルです。「麻布台ヒルズ 森JPタワー」を含む、麻布台ヒルズのコンセプトについて、オフィス事業部の立場から開発に参画した稲原攝雄氏は次のように説明します。
「私たち森ビルが再開発を行う際は、街を創ってそれで終わりではなく、地域住民の方々と共に『街を育む』という点に力を注いでいます。35年かけて創ったと申し上げましたが、完成後はさらに長い年月を重ねていきます。地域や街で連綿と受け継がれてきた文脈を継承して、街の空気感をいかに醸成させていくか。これはアークヒルズ時代から私たちが大切にしている街づくりにおける基本姿勢です。そして麻布台ヒルズは、これまでのヒルズ運営で積み上げてきた知見をすべて注ぎ込んだ“ヒルズの未来形”となっています」
文化の発信地である六本木ヒルズ、グローバルビジネスセンターを標榜する虎ノ門ヒルズ。では、麻布台ヒルズは――。稲原氏はこう続けます。
「麻布台ヒルズがあるこの場所は、元は住宅街で、根底には “人々の穏やかな暮らし”があります。そうした『生活の場』を出発点にし、この街における人の営みをより一層豊かにするにはどのような機能を実装すれば良いのか。また、どのような枠組みを構築すれば良いのか。例えば、『働く』ということについて考えると、これまで『働く』という営みは生活から切り離されて考えられてきました。しかし、本来は『働く』ことも、『学ぶ』ことも、『遊ぶ』ことも、生活の営みとして全てシームレスに繋がっている。そして、それぞれがお互いの機能を高め合うことによって、生活の豊かさが醸成されていく。そんな生活を実現できる場をつくりたい、そう考えました。こうした過程を経て私たちは、『人々の生活を豊かにする街』を表現するために、“Modern Urban Village(緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街)” というコンセプトを導き出しました。『Green』と『Wellness』は、このコンセプトを支える2つの大きな柱です」
「社員の心身の快適さと健康を重視する企業の増加」や「自然との共生を求める人の増加」によって、自然と調和した、開放感のある空間へのニーズは年々高まっています。生活環境にバイオフィリア※を取り入れることで、事業の生産性、人々の幸福度や創造性などが向上することは数々の研究で証明されています。麻布台ヒルズは緑化面積を見ても、六本木ヒルズの 1.9haに対して2.4haと、かなり自然を意識したつくりになっているのが見て取れます。自然を感じられるオフィス環境はこれからのトレンドの1つになりそうです。
また、住居はもとより、4,000㎡を誇る大規模なフードマーケット、予防医療センター、アートミュージアム、インターナショナルスクールなど、衣・食・住にこだわった商業テナントが目白押しな麻布台ヒルズ。『Green』と『Wellness』をコンセプトとした、暮らしに密着した街づくりは、ここで働く人々の生活を豊かなものにしてくれるでしょう。