1. トップ
  2. オフィスコラム
  3. トレンド・知識
  4. オフィス移転時の会計処理とコストを解説

トレンド・知識

オフィス移転時の会計処理とコストを解説

オフィス移転の際には、移転、原状回復工事 、新オフィスの預託金・賃料や内装工事など、様々な費用がかかり、それぞれの費用を適切に会計処理することが求められます。この記事では、オフィス移転時に発生する費用の内訳や各費用の会計処理について解説します。費用削減のポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

旧オフィスの会計処理

まず、移転前の旧オフィスに関わる費用と会計処理について見てみましょう。旧オフィスには、大きく分けて「オフィスの原状回復工事」「不用品の廃棄処理」「移転作業」の費用が発生します。

■オフィスの原状回復工事の会計処理
旧オフィスから退去する際には「原状回復」の義務に従い、原状回復工事を実施してオフィスを入居前の状態に戻す必要があります。原状回復工事により発生した費用は、「修繕費」に計上します。
退去時に保証金・敷金が残っている場合にも、原状回復工事にかかった費用は「修繕費」として処理できます。工事費用は、入居時に預託した敷金の範囲内で行われることも多く、発生しないこともあります。この場合の勘定科目は、借方に「修繕費」、貸方に「差入保証金」か「敷金」を使います。
契約終了時に原状回復工事費用を除いた金額が戻された場合にも、原状回復工事費用分を「修繕費」として計上できます。

■不用品の廃棄処理の会計処理
不用品の処分費用は、「雑費」で経費計上できます。しかし、什器・家具などの固定資産については「除却」の処理が必要です。固定資産は減価償却が終わっても残存価額が残り、税金も発生します。そのため、今後一切使用しない固定資産は除却をして簿価をゼロにする必要があります。
廃棄や撤去に費用が生じた時は、「固定資産除却損(※)」で処理をします。廃棄を行う場合は資産の譲渡等に該当しないため、消費税は不課税となります。
固定資産を廃棄する際は、その資産が確かに除却されたということを証明する書類を残す必要があります。業者に依頼する場合は「廃棄証明書」を発行してもらうようにしましょう。廃棄証明書が取れなくても、客観的資料を残しておくことで廃棄が可能です。客観的資料の例として、廃棄した固定資産の写真、稟議書、請求書・領収書などの書類が該当します。それらはしっかり保管をしておきましょう。
(※)「固定資産除却損」とは、会社の事業で不要となり廃棄した有形固定資産を、除去する際に発生した損失のことです。

■移転に関する会計処理
移転作業の費用については、「雑費」「支払手数料」「荷造発送費」の科目を用いて会計処理を行います。
雑費として処理する場合は、補助科目を記すか摘要に「移転費用」と記載しておくと良いでしょう。雑費で計上している経費が多いと、帳簿を見返しても何の費用か不明になることもあります。そのためにも、勘定科目を変更する、補助科目や摘要に記載しておくなどの工夫が必要です。

新オフィスの会計処理

次に、新オフィスに関わる費用と会計処理についてご紹介します。新オフィスの賃貸契約時にかかる費用には、保証金や敷金、不動産会社への仲介手数料、内装工事費などがあります。

■礼金・保証金・敷金の会計処理
礼金・保証金・敷金については、金額や返還予定の有無によって会計処理が変わります。礼金や返還予定のない保証金・敷金が20万円未満の場合には、支出時に全額を経費計上できますが、20万円以上の場合は繰延資産として扱われます。そのため、20万円以上の際には、礼金・保証金・敷金を一旦「差入保証金」や「長期前払費用(※)」として計上したうえで均等償却を行います。
(※)「長期前払費用」とは、前払費用のうち、費用化にかかる期間が決算の翌日から起算して1年を超過するものを指します。

■返還される保証金・敷金(20万円以上)
返還予定のある保証金・敷金は、会計上は資産として扱われます。勘定科目は一般的に「差入保証金」が使われます。契約によって返還されない部分があれば、それを「長期前払費用」に振り分けます。契約内容をよく読み、返還される部分とされない部分をきちんと分けて会計処理を行うことが大切です。

■返還されない保証金・敷金・礼金(20万円以上)
契約時に返還されない保証金・敷金の金額が決まっている場合には、その金額を「長期前払費用」という資産として計上します。礼金は物件によっては不要なところもあります。礼金を支払った場合には、賃貸契約時にオーナーに対して支払う謝礼金という扱いとなり、「長期前払費用」となります。

■返還されない保証金・敷金・礼金(20万円未満)
賃貸オフィスで保証金・敷金・礼金が20万円未満となるケースは稀ですが、もし保証金・敷金が20万円未満であり、かつ保証金・敷金が返還されない場合は、全額を「支払手数料」として計上できます。礼金が20万円未満であれば、「地代家賃」の勘定科目を用います。

■仲介手数料の会計処理
新オフィスへの移転にあたり、不動産会社に支払う仲介手数料も「支払手数料」として計上します。または、企業によっては「雑費」として処理するケースもあります。自社の経理処理の方針に基づき、選択するようにしましょう。

■内装工事や設備工事の会計処理
新オフィスの内装工事・設備工事などは一般的に金額が大きく「修繕費」に含めることできません。固定資産として少しずつ減価償却として経費化をします。
内装工事の勘定科目は「建物」に仕訳されるため、耐用年数は「建物」に準じます。自己所有の物件に行った内装工事には「建物」の耐用年数を適用しますが、賃貸オフィスの耐用年数は異なります。賃借期間の定めがある場合は、賃借期間をそのまま耐用年数として適用します。期間の定めがない場合は、用途・材質などを考慮したうえで、耐用年数を見積もります。この場合の耐用年数の目安は10~15年が一般的です。
空調設備や電気設備、給排水設備など、建物内の設備工事に関するものは「建物付属設備」に該当するため、建物付属設備の耐用年数を使います。「建物」と「建物付属設備」は切り分ける必要があります。建物付属設備のほうが分かりやすいので、建物付属設備を振り分けた後に、残存した部分を「建物」として計上すると仕分けがしやすいでしょう。
また、勘定科目は耐用年数に左右され、企業会計にも大きく影響するため、勘定科目と耐用年数の判断は慎重に行う必要があります。耐用年数表は国税庁のサイトに掲載されていますが、耐用年数表に記載されていない設備の仕訳に悩んだら、所轄の税務署か税理士に確認してみましょう。

オフィス移転時に発生する費用の内訳

こちらでは、オフィス移転時に発生する費用の内訳を解説します。

■旧オフィス退去に関する費用の内訳
「原状回復工事費用」は、オフィスの規模や造作によって費用が異なります。また、契約期間満了時以前に解約された場合には、「解約違約金」が発生することがあります。契約期間満了時以前の解約は、新オフィスの費用に加えて、解約違約金が発生するため、オフィス移転を進める前に契約期間を確認しておくことが大切です。
「移転費用」は、立地条件やオプションの有無によって変動します。
本社移転の場合は登記変更が必要になるため、「登録免許税」も発生します。登記にかかる費用は、法務局の管轄区域内で3万円、管轄区域外なら6万円かかります。また、司法書士に依頼する際は報酬額も法務局の管轄区域内か管轄区域外かによって異なります。
更に、封筒や名刺など、本社所在地が印字された 事務用品等の変更諸経費もかかるため、事前に計算し予算を確保しておくと良いでしょう。
「不用品の廃棄処理費用」は、依頼する業者によって変動します。業者によっては、リサイクル品として買い取りを行う業者もいます。不用品の内容に合わせて早めに検討を進めることが肝要です。

■新オフィス入居に関する費用
新しいオフィスに入居する際にかかる費用の目安は、以下の通りです。

項目 内容
工事費用 新オフィスの内装工事費など
敷金・礼金 「敷金」は賃料の6~12ヶ月分、「礼金」は不要な物件もあり、契約による
仲介手数料 不動産会社への手数料。賃料の1ヶ月分が上限
火災保険料 ビルオーナーや第三者に対する賠償責任、自社の家財の復旧に対する保険。補償内容による
什器購入費用 新規で購入するデスクやチェア、ロッカーなどのオフィス家具購入費用
ネットワーク関連費用 IT・通信ネットワークや電話設備などの工事費用


内装工事には電気・空調・防災などの設備工事も含まれます。施工業者によって対応範囲や料金に差があり、レイアウトや設備により工事費用は変わります。希望する内装・予算で対応可能な施工業者を選定しましょう。また、予め指定業者がある場合も多いため、併せて確認するようにしましょう。
オフィスの場合、敷金は賃料の6~12ヶ月分、礼金・仲介手数料等は賃料の1ヶ月分が一般的です。LANや電話・電気などのインフラ整備にかかるネットワーク関連費用は面積と設置内容によっても大きく異なります。高度なセキュリティを導入する、サーバーを置くなどといった条件によっては、料金は高くなります。

オフィス移転の費用を削減するポイント

オフィス移転は時間も費用もかかり、特に費用面は大きな負担ともなり得ます。しかし、前もって準備をしておくことで費用を削減できます。ここでは、そのポイントを4つご紹介します。

  • 事前にオフィス移転の計画や準備を行う
  • オフィスの移転作業を一括対応してくれる業者を選ぶ
  • 居抜きオフィスを選ぶ
  • フリーレントのオフィスを選ぶ


■事前にオフィス移転の計画や準備を行う
賃貸物件は一般的に半年前に解約の通知を行います。つまり、移転半年前の時点で、新オフィスの決定や新オフィスの内装構築計画が進行している必要があります。移転の規模にもよりますが、現状調査をして物件の要件定義や選定を進めるためには、18ヶ月(1年半)以上前には準備を始めておく必要があります。
オフィス移転は1~3月と9~12月に集中します。この時期は移転業者にとって繁忙期となり、料金も割高に設定されています。オフィス移転費用を少しでも抑えたい場合は、繁忙期を避けて移転すると良いでしょう。
移転までに 時間の余裕がないと、移転先の新オフィスの内装工事が未完成のまま契約開始日を迎えることにもなりかねません。契約内容と移転時期を考慮して、オフィス移転計画を立てましょう。

オフィス移転の詳しいスケジュールについては、下記の記事をご覧ください。
オフィスの移転計画から完了までの流れとポイントを解説

■オフィスの移転作業を一括対応してくれる業者を選ぶ
オフィス移転には、旧オフィスの原状回復工事 から、移転先の内装工事、移転など多くの工程があります。それぞれを別の業者に依頼をするとコストが嵩むため、一括して依頼できる業者を選ぶことも、費用を抑える方法として有効です。業者を選定する際は、複数社から見積もりを取り、価格を比較してみましょう。

■居抜き物件を選ぶ
居抜き物件とは、前テナントの内装・設備・備品などをそのまま引き継ぐ物件のことです。旧オフィスを居抜きとして引き継ぐか、新オフィスを居抜きで借りる方法があります。 居抜き物件の契約にはオーナー・退去者・後継の賃借人からの同意が不可欠ですが、実現すればコストカットに繋がります。
居抜き物件を借りる場合は内装工事や什器の買い足しが不要になり、その分のコストが 抑えられます。すぐに入居できるという点もメリットでしょう。ただし、入居後に改修工事をする場合はかえって費用が嵩むことがあるので、移転先として適切かどうかを検討する必要があります。

■フリーレント期間の長いのオフィスを選ぶ
フリーレントとは、入居から一定期間、家賃が無料になるサービスのことです。無料になるのは1~3ヶ月程度ですが、大規模オフィスや賃料単価の高いオフィスほどフリーレント期間が長くなる傾向があります。
制約がある場合もありますが、オフィス移転を考えている企業にとって有益な選択肢の一つといえるでしょう。

まとめ

オフィス移転時に発生する費用の内訳や各費用の会計処理についてご紹介しました。
三菱地所リアルエステートサービスでは、現状調査からオフィス移転のスケジュール作成、入居後のアフターフォローまで、総合的なサポート体制で理想のオフィスを見つけるお手伝いをいたします。「賃貸オフィス 検索サイト」では、首都圏を中心とした豊富な物件情報を提供しておりますので、オフィス移転を検討中のご担当者様はぜひお役立てください。

▽オフィスをお探しの方
オフィス検索はこちらから

CONTACT US お問い合わせ

オフィスをお探しのみなさま

掲載中の物件以外にも、多数物件を取り扱っております。お電話またはお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

三菱地所リアルエステートサービス株式会社
ビル営業部

お問い合わせはお電話でも承ります。
お気軽にお問い合わせください。

営業時間 9:30 〜 17:30(平日)