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新耐震基準のオフィスビルなら安心?BCP・経営視点で確認すべきオフィスの耐震性能と評価指標

「新耐震基準のオフィスビルなら安心」と思っていませんか?耐震基準は建物の倒壊を防ぐ目的であり、震災後のBCP(事業継続)を保証するものではありません。本記事では、耐震構造の種類や見落としがちな設備リスクに加え、建物の経済的リスクを示すPML値について、BCPと経営視点からわかりやすく解説します。

BCPの観点でオフィスを選ぶとき「新耐震基準のビルだから安心だろう」と判断していませんか。新耐震基準をクリアしていても、地震後に事業を継続できるかどうかは別の問題です。耐震基準は「建物が倒壊しないこと」を目的とした基準であり、「地震後も速やかに業務を再開できること」まで保証するものではありません。
本記事では、オフィス選びで見落とされがちな耐震性能の本質を、BCP(事業継続)と経営リスクの視点から整理します。

オフィスビルにおける「新耐震基準」の基礎知識

オフィスビルの耐震性を正しく判断するには、まず「旧耐震基準」と「新耐震基準」の違いを押さえる必要があります。特に注意が必要なのは、新旧どちらの耐震基準に適合しているかは「竣工日」ではなく「建築確認日」で決まるという点です。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

耐震基準には、「旧耐震基準」と「新耐震基準」があります。そもそも、耐震基準は建築基準法の制定に伴い1950年に制定されたものが始まりでした。その当時の耐震基準(現在の旧耐震基準)は、【震度5程度の地震に対して、家屋などが倒壊・崩壊しない耐震性】と設定されており、震度5強以上の揺れは想定されていませんでした。また、耐震技術の開発も追いついておらず、想定以上の地震が発生した時には対応できないという状態でした。

それに対して、1981年に施行された「新耐震基準」は、【中規模地震(震度5強程度)で建物がほとんど損傷せず、大規模地震(震度6強〜7程度)でも倒壊・崩壊しないこと】を目標としています。なお、耐震基準は建築基準法によって義務付けられており、どの建物でも遵守しなければならないものです。

1995年、最大震度7を観測した阪神・淡路大震災では、数多くの建物が倒壊し、死亡者の大半が圧死・窒息死だったとされています。被害は1981年以前の「旧耐震基準」で建てられた建物に集中しており、新耐震基準の建物は被害が軽微でした。この事実は、新耐震基準の有効性を証明すると同時に、旧耐震基準の限界を端的に示しているといえるでしょう。

確認すべきは「竣工日」ではなく「建築確認日」

「旧耐震基準」の建物は1981年5月31日以前に建築確認されたもの、「新耐震基準」は1981年6月1日以降に建築確認されたものです。
耐震基準の適用は竣工日ではなく、建築確認を取得した日で決まります。1981年6月以降に竣工したビルであっても、建築確認がそれ以前に下りていれば、適用されるのは旧耐震基準です。特に大規模なオフィスビルでは、確認申請から竣工まで2〜4年かかることも珍しくないため注意が必要です。物件の募集図面に、「新耐震基準適合」や「耐震補強済」といった情報が記載されていない場合は、必ず建築確認日や、耐震診断の有無を確認するようにしましょう。

三菱地所リアルエステートサービスでは、希望条件に合う物件の選定はもちろん、各ビルの耐震基準の確認などもあわせて行い、お客様のオフィス移転をワンストップでサポートいたします。

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「新耐震基準なら安心」という誤解とBCP上のリスク

入居しているビルや、これから移転するビルが新耐震基準に適合しているからといって、「BCP対応済み」とは言い切れません。耐震基準が何を目的とした基準なのかを正しく理解するとともに、同じ新耐震基準のビルでも、構造形式や設備仕様によって性能に差があることを押さえておく必要があります。

耐震基準の目的は「人命保護」であり「事業継続」ではない

耐震基準の目的は「人命を守ること」、すなわち建物を倒壊させないことです。これは、いわば「身体・生命の安全確保」や「物的被害の軽減」を目指す「防災」の領域にあたります。

ここで多くの方が混同しやすいのが、「防災」と「BCP」の違いです。
防災が「被害を抑えるための備え」であるのに対し、BCPは「事業を止めない、あるいは早期に立て直すための備え」です。

実際、建物が倒壊しないという防災の備えだけでは、事業を継続することはできません。最大震度7を観測した2011年の東日本大震災では、東京都心においても震度5強の激しい揺れを観測し、新耐震基準のオフィスビルであっても天井の落下やスプリンクラーの誤作動、エレベーターの長期停止、電気系統の損傷などが相次ぎました。建物自体は使用可能であっても、内部設備の点検や復旧対応のために業務に支障が生じた事例が数多く報告されています。
ビルが新耐震基準に適合しているだけではBCP対応が完了しているとは言えず、新耐震基準への適合の有無は、BCPを策定・推進する上での前提条件のひとつに過ぎないのです。

同じ新耐震基準でも耐震性能に差が生じる理由

「新耐震基準」と聞くと、すべての建物が同じレベルの耐震性能を備えているように思われがちです。しかし実際には、同じ「新耐震基準」に適合している建物であっても、建物の構造や設備仕様によって性能には差があります。

耐震基準や構造ごとの特徴と、BCP上の確認ポイントを整理すると、以下のようになります。

項目 旧耐震基準 新耐震基準 制震・免震構造採用ビル
対象時期 1981年5月31日以前に建築確認を取得 1981年6月1日以降に建築確認を取得 新耐震基準を前提に制震・免震技術を採用
耐震性能の考え方 震度5程度の地震で倒壊・崩壊しないことを想定 震度6強~7程度の地震でも倒壊・崩壊しないことを想定 揺れや損傷そのものを抑制することを重視
建物損傷への配慮 限定的 倒壊防止が主目的 損傷低減を重視
BCP上の確認ポイント 耐震診断・補強工事の実施状況 非常用電源・設備耐震性・復旧体制 制震・免震性能や設備の冗長化

なお、1995年の阪神・淡路大震災を受けて2000年に建築基準法が改正されましたが、この改正は主に木造住宅の耐震性向上を目的としたものであり、オフィスビルに対して新たな耐震基準区分が設けられたわけではありません。「2000年以降のビル=耐震性能が高い」と誤解されるケースも散見されますが、オフィスビルには当てはまらないため注意が必要です。
オフィスビルの耐震性や事業継続性を左右するのは、年代による区分ではなく、建物の構造や非常用電源をはじめとする設備仕様、ならびに維持管理の状況です。BCPの観点では、新耐震基準への適合状況だけでなく、建物の損傷をどの程度抑えられるか、災害後にどれだけ早く業務を再開できるかという視点も重要です。オフィス選定時には、耐震基準に加えて制震・免震などの構造や非常用電源といった設備仕様もあわせて確認しましょう。

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耐震・制震・免震の違いと、オフィス選定時の比較ポイント

耐震・制震・免震の3つの構造は、よく混同されます。まずはそれぞれの仕組みの違いを正しく理解しましょう。そのうえで、入居するフロアの階数や従業員数に対して、検討中のビルが十分な安全性能を備えているかを確認することが大切です。

耐震構造(揺れに耐える:損傷リスクは残る)

耐震構造とは、地震の揺れに対して強い構造のことです。地震による揺れは、上下左右に揺れるだけでなく、壁や天井などに回転しようとする力を生じさせます。そのため、倒壊・崩壊から守るために、あらゆる力に耐えられるような構造で建物を作る必要があるのです。耐震構造は、建物そのものを頑丈に造るのが特徴で、土台や柱、梁など建物の構造体を強くすることによって地震に対抗するものです。筋交いを入れたり、接合部分を丈夫な金物で固定したりすることで補強し、建物の耐震性能を高め、地震の被害を軽減することが期待できます。
ただし、地震の揺れはそのまま建物に伝わるため、内部の什器の転倒や天井・設備の破損といったさまざまな被害リスクは残ります。たとえ建物の倒壊は免れたとしても、オフィス内部の損傷は避けられないという前提で考える必要があります。

制震構造(揺れを吸収する:上層階の揺れを低減)

制震構造は、建物内部にダンパー(振動を軽減する装置)を組み込むことで、地震や風の揺れを吸収する技術です。
建物に伝わる揺れのエネルギーをこのダンパーが吸収するため、建物全体の損傷を抑えるだけでなく、大きくなりがちな上層階の揺れも効果的に抑えられます。また、台風などの強い風にも効果を発揮するため、執務環境の快適性も高まります。

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免震構造(揺れを伝えない:建物の損傷と什器転倒を極小化)

地震の揺れを直接建物に伝えないように設計されたのが免震構造です。建物と地面の間に積層ゴムやダンパーなどの免震装置を設置することで、地面の揺れを逃がし、オフィス全体の揺れを小さく抑えることができます。地震の揺れが大きく吸収されることで高層ビルでも安心して避難するなど冷静な対応をすることができます。一般的な免震構造は、積層ゴムなどによって主に水平方向の揺れを低減できますが、鉛直方向の揺れに対する効果は限定的です。そのため、免震構造のビルであっても、什器やOA機器の固定といった室内の地震対策を併用することが重要です。

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制震や免震といった耐震構造の違いだけでは、BCP対応の実効性を判断することはできません。どれだけ強固な構造であっても、非常用発電機や受電方式といったインフラ設備が整っていなければ、迅速な業務再開や事業の継続は難しくなるためです。
オフィス選定の実務においては、構造の名称や仕組みといった表面的な情報だけにとらわれず、インフラの稼働性や重要設備の配置など、ビル個別の具体的な災害対策スペックを総合的に見極めることが重要です。

事業を継続するためのオフィス選び。候補ビルの構造の確認や、ご希望の安全基準を満たす物件をお探しの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門のスタッフが条件に合わせた最適な物件をご提案いたします。

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オフィスビルの経済的リスクを示す「PML値」とは

PML値(Probable Maximum Loss)は、投資家が不動産の経済的リスクを判断する際に用いる指標です。数値が開示されている場合は、建物の物理的な安全性を表す「耐震基準」とは異なる補足の参考指標として、ビルのリスク把握に活用できます。

「耐震等級」は主に住宅の指標。オフィスビルには別の視点が必要

耐震基準とは別の指標として、耐震等級というものがあります。耐震等級は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度で用いられる指標で、1〜3の等級に分かれています。耐震等級1は建築基準法が求める耐震性能と同程度で、等級2・3は、より大きな地震力に対する性能を示します。

品確法に基づく「耐震等級」は、主に住宅を対象とした指標です。一般的なオフィスビルの耐震性能を示すものではないため、オフィス選びの際は住宅用の基準とは分けて考える必要があります。一方、耐震性能そのものとは異なる視点から、地震による建物の経済的リスクを把握するための参考情報として活用できるのが「PML値」です。

PML(予想最大損失率)の見方と目安

PML(予想最大損失率)とは、大地震が発生した際に「建物を建て直す費用のうち、何%程度の修繕費用(損失)が発生するか」という経済的リスクを示す指標です。
具体的には、「50年間に10%の確率(475年に1回)で発生する大地震」を想定し、予想される復旧費用を建物の再調達価格で割って算出します。
一般的に、PML値が15%以下であることが資産としての健全性を判断するひとつの目安とされています。PML値は、あくまで投資における経済的リスクを判断するための指標であり、オフィスの耐震性を直接評価するものではありません。
通常のオフィス選定において必須の確認項目ではありませんが、情報が公開されているオフィスビルを移転先として検討する際は、リスク把握の補足データとして活用するとよいでしょう。

候補物件がJ-REIT保有物件などであれば、PML値をはじめとした詳細なデータをあらかじめ確認できる場合があります。
ただし、PML値だけでオフィスの事業継続性を判断することはできません。候補物件の耐震性能やBCP対応力を整理しながらオフィスを検討したい場合は、物件選定の初期段階から専門家に相談するのがおすすめです。お気軽にお問い合わせください。

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BCPの盲点となる「非構造部材」と「インフラ」の耐震性

新耐震基準や制震・免震構造などのビルを選んだとしても、見落としがちな注意点が存在します。構造体以外の「非構造部材」と「インフラ」設備の耐震性は、募集図面には記載されていないことが多いため、契約前に個別に確認することが重要です。それぞれの論点を整理します。

吊り天井の落下やスプリンクラーの誤作動リスク

地震が発生すると、建物そのものが大きく揺れます。それにより、天井や壁にヒビが入ったり、さらには天井が落下したり壁が剥がれたりするおそれもあります。避難中の怪我や避難経路の閉鎖を防ぐためにも、天井や壁の落下防止対策や固定状況をあらかじめ確認し、被害リスクに備えておくことが重要です。

2011年の東日本大震災では、柱や梁などの構造体自体には損傷がなかったビルでも天井落下による被害が多発しました。これを受けて2014年に建築基準法施行令が改正され、「特定天井」への耐震措置が義務化されました。

特定天井とは、高さ6m超・面積200㎡超・質量2kg/㎡超の吊り天井を指します。2014年4月以降に建築確認されたビルはこの基準に対応していますが、それ以前に建てられたビルは「既存不適格」として扱われ、新基準への適合が義務付けられているわけではありません。そのため、法改正前に建築されたビルには、特定天井に求められる現行基準を満たさない天井が残存している可能性があります。契約前に確認すべきは「吊り天井か直天井か」「特定天井に該当する場合の耐震改修や落下防止対策の実施状況」の2点です。

また、スプリンクラーの誤作動による水損(フロア全体への水害)も見落とされやすいリスクです。原因がビルの共用設備にあっても、テナント資産への損害は、契約内容によってはテナント側の保険で対応することになる可能性もあります。入居時の保険設計と合わせて、契約前に確認しておくべきポイントのひとつです。

非常用発電機と「専有部」への電力供給

募集図面に「非常用発電機あり」と特記されている場合、共用部とは別に、非常時にテナント専有部へも電力を供給できる設備を有していることを示しているのが一般的です。ただし、専有部への給電が可能であっても、供給対象・容量・持続時間・利用できる回路には制限があり、専有部のすべての設備をカバーできるとは限りません。契約前にテナント向けの具体的な供給範囲や条件を確認しましょう。

エレベーターの閉じ込めリスクと稼働再開の仕組み

地震時管制運転システムが搭載されたエレベーターは、震度4程度の揺れを感知した際に自動的に最寄階へ停止し、扉を開放します。一方、築年数の古いビル(既存不適格)では同システムが未設置のケースもあり、その場合は最寄階への自動停止が働かず、途中の階で急停止して閉じ込められるリスクがあります。

地震後の運転再開方法は、エレベーターの仕様や停止原因によって異なります。保守会社による安全確認が必要となる場合がある一方、自動診断・仮復旧運転機能を備えた機種では、安全が確認できれば、技術者の到着前に一時的に運転を再開できる場合があります。

高層階に入居する企業は、エレベーターが長時間停止する可能性も想定し、階段での避難や物資運搬の方法をBCPに定めておくことが重要です。契約前に、自動診断・仮復旧運転機能の有無や、災害時の復旧体制について確認しましょう。

これらは単なる構造スペックの話ではなく、設備管理や運用の領域に関わる話です。三菱地所リアルエステートサービスでは、オフィス仲介の専門スタッフが契約前の確認をサポートし、オフィス移転時に見落とされがちなリスクを防ぎます。
お気軽にお問い合わせください。

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企業の未来を守る鍵!オフィスビルの「レジリエンス性能」とは?

「旧耐震ビルの耐震補強工事」と「最新ビルへの移転」の比較

旧耐震ビルに入居中で耐震性に不安を感じている場合、まずはビルオーナーによる耐震補強工事の予定や方針を確認する必要があります。
オーナーの方針によっては補強工事が行われないケースもありますし、仮に工事が実施される場合であっても、「工事完了を待って継続入居する」か「最新ビルへ移転する」かの比較・検討が必要です。どちらが自社にとって合理的かを判断するために、それぞれの実態を整理しましょう。

居ながらの耐震補強工事がもたらすテナントへの負担

テナントが入居したまま行われる耐震補強工事は、工事内容によって、業務にさまざまな影響を及ぼします。騒音・振動・粉塵による執務環境への悪影響のほか、一部区画の利用制限や動線変更が生じるケースもあるため、事前に工事時期や影響範囲をしっかり把握しておくことが欠かせません。

工事期間中の賃料や補償、利用制限の取り扱いは、賃貸借契約やオーナーとの協議内容によって異なります。工事の実施が予定されている場合は、契約内容や提示された条件を個別に確認しましょう。

LCC(ライフサイクルコスト)から見た最新ビルへの移転メリット

「賃料が上がる最新ビルへの移転より、今のビルに留まるほうが安く済む」という判断は、一面では正しいといえます。しかし、契約から退去までにかかる「LCC(Life Cycle Cost:ライフサイクルコスト)」の視点、特に災害リスクや業務影響まで含めたTCO(※1)(Total Cost of Ownership:総保有コスト)で考えると、旧耐震ビルへの継続入居には、以下のような月々の賃料からは見えてこない「隠れコスト」が存在します。

(※1)TCO(Total Cost of Ownership)
契約から退去までにかかる時間軸の費用総額を指す「LCC」に対して、TCOは賃料などの直接的な費用だけでなく、災害時の業務中断リスクやBCP対策費といった目に見えにくい間接的なコストまで含めた「オフィス維持・運用の総保有コスト」を指します。

  • ビル側に設備がないため、自社で用意せざるを得ないBCP対策コスト(非常用電源や通信の冗長化など)
  • 耐震補強工事の実施に伴う一時移転費・レイアウト変更費や、工事期間中の業務中断による損失



移転先の耐震性能や設備仕様によっては、これらのコストや事業継続上のリスクの一部を抑えられる可能性があります。単純な賃料比較ではなく、TCOで比較することが正確な判断につながります。現在入居中の旧耐震ビルにおいて耐震補強工事が進む場合でも、移転の選択肢を並行して把握しておくことが万が一のトラブルへの備えとなります。

ただし、補強工事の実施はオーナー判断となるため、テナント側は方針が定まるまで動きづらいのが現実です。だからこそ「実際に移転する場合どんな物件が選べるか」「初期費用はどれくらいかかるか」といった具体的な情報をあらかじめ揃えておくことが大切です。こうした情報は、オフィス市場の動向を踏まえたシミュレーションを行うことで、初めて明確になっていきます。まだ移転を決定していない段階であっても、事前に比較検討を進めておくことが最適な意思決定への第一歩です。まずはお気軽にご相談ください。

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▽自社ビルと賃貸ビルの選び方についての特集記事はこちら

自社ビル vs 賃貸ビル 企業成長を左右する選択肢とは?

ESG経営・企業価値とオフィスの耐震性

「ESG(※2)は上場大企業の話」と感じている担当者は多いですが、実際には取引先からの要請・融資審査・採用市場という3つの経路で、規模を問わず企業への影響が広がっています。耐震性能の高いオフィスを選ぶことが、ESG経営の実践にどうつながるかを整理します。

(※2)ESG(Environment,Social,Governance)
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉で、企業の持続的な成長に必要な3つの視点のこと。

従業員の安全確保はESGの「S(社会)」における重要取り組み

GRIスタンダード(※3)等の国際基準において、職場環境の安全確保はESGの「S(社会)」を構成する重要項目の一つです。現状、多くの企業の開示内容は製造現場の労働災害件数や安全活動が中心であり、賃貸オフィスの耐震性能まで踏み込んでアピールできている企業は限定的ですが、今後のESG・人的資本経営において重要な要素となります。

実際にパーソル総合研究所「人的資本情報開示に関する調査【第2回】」(2022年) によると、就職・転職検討者の約8割が企業に求める情報として「安全」を挙げており、全19項目の中でトップ3に入る関心の高さでした。耐震性の高いオフィスを選ぶことは、単なる防災対策にとどまらず、採用市場において「従業員の安全を第一に考える企業」という姿勢を示す有効な手段になります。

(※3)GRI(Global Reporting Initiative)スタンダード
企業のサステナビリティに関する取り組みや情報を開示するための代表的な国際的ガイドライン。

安全な労働環境がもたらす採用力強化とエンゲージメント向上

こうした安全面への配慮は、採用活動における強力な訴求力となるだけでなく、既存の従業員が安心して働ける環境づくり、すなわち「エンゲージメントの向上」にも直結します。オフィスの耐震性能や防災対策は、単なるビルの条件ではなく、従業員を守る重要な経営資源として位置づけることができます。

一方で、現時点では企業がESG対応だけを理由にオフィス移転に踏み切るケースはほぼありません。しかし、手狭化や老朽化、コスト最適化といった経営課題を背景にオフィスの見直しを行う際には、耐震性能や環境認証(BELS・CASBEEなど)を取得した物件を選定条件に含めて検討することで、従業員の安全性向上やESGへの取り組み強化につなげることが可能です。このように、オフィスの移転や見直しのタイミングに合わせて安全性や環境性能を整えることは、中長期的な企業価値の向上にも大きく寄与します。

三菱地所リアルエステートサービスの専門スタッフが、耐震仕様や環境認証などのご要件を踏まえ、プロの視点から最適な物件をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

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耐震性に優れたオフィスを選ぶための「現状把握」の重要性

耐震や防災に関する詳細なスペックは募集図面だけでは判断しきれないケースがあるため、まずは自社に必要なBCP要件をあらかじめ整理し、明確な判断基準を持っておくことが重要です。事前に自社の軸を定めておくことで、物件選定の精度を高めることができます。

ビルのスペックやPML値は募集図面だけでは判断できない

「耐震等級を確認しましょう」「ハザードマップを確認しましょう」といった一般的なアドバイスは、オフィスビルの耐震性を判断するための指標としては適切ではありません。大規模オフィスビルに耐震等級は適用されませんし、ハザードマップで把握できるのは、地震・液状化・水害などの周辺地域における災害リスクであり、建物個別の耐震性能ではないためです。
また、竣工当時と現在では、地盤や液状化リスクに関する評価手法や公開情報が変化している場合があります。特に液状化リスクが高いとされるエリアでは、竣工時の地盤調査以降にリスク評価が見直されていることもあります。

建物の耐震性能や設備仕様の詳細は、募集図面だけでは把握できないケースもあります。必要に応じて追加資料の確認やビルオーナー・管理会社への確認を行うことが重要です。

BCPの観点から自社に必要な「要件」を定義する

耐震性能を重視したオフィスへの移転を検討する際は、「耐震性が高いビルを選ぶ」こと自体を目的にするのではなく、自社の事業継続に必要な要件を整理することが重要です。RTO(目標復旧時間)やRPO(目標復旧時点)といったBCP上の目標を明確にしたうえで、それを実現するために必要なオフィス仕様を検討することで、物件選定の判断基準が明確になります。

例えば、金融機関やIT企業、グローバル拠点を統括する本社のように、災害発生後も短期間で業務を再開する必要がある企業であれば、耐震性能だけでなく、制震・免震構造、非常用電源、通信インフラの冗長化なども重要な検討項目となります。一方で、全国に店舗や工場を持つ流通・製造業のヘッドオフィスであれば、システム維持だけでなく、被災した現場へ物資や人員を送り出す「後方支援の司令塔」としての機能が求められます。そのため、超高層ビルの上層階よりも、周辺道路が寸断されにくい立地や、全社向けの救援物資を大量にストックできる大容量のテナント用備蓄倉庫を備えたビルなど、優先すべきスペックの方向性は、業種や事業内容によって大きく異なります。

また、多くの企業ではBCPが策定されていても、事業環境や働き方の変化に合わせた見直しが十分に行われていない場合があります。オフィスの移転や見直しは、自社のBCP要件を再整理する機会としても有効です。

「耐震性の重要性は理解できたものの、自社にどのレベルの耐震性能や設備仕様が必要なのか分からない」と感じる担当者も多いでしょう。実際には、必要なスペックは業種・従業員構成・業務特性によって異なるため、一律の正解はありません。まだ移転を具体的に決めていない段階であっても、まずは物件探しの入り口として「現オフィスの課題」を把握しておくことが重要です。市場の最新トレンドと比較しながら自社の災害リスクを正しく把握することは、社内で本当に必要な耐震・BCP条件を整理するための確かな判断材料になります。さらに、自社にとって最適な条件を定義するためには、ビル側のスペックだけでなく、実際にそこで働く従業員の視点から「現在のオフィス環境にどのような課題や不安があるか」を可視化することも欠かせません。
当社では、独自のアンケート調査によって働く方々の声を見える化し、現在のオフィスに潜む設備や機能の課題を浮き彫りにする現状調査サービス「Office Well」を提供しています。「将来に向けて、まずは自社オフィスの潜在的な課題を洗い出したい」という段階からでも、どうぞお気軽にお問い合わせください。

現状調査サービス「Office Well」

▽現オフィスの課題整理についての特集記事はこちら

オフィス移転のその前に!現オフィスの課題を見つけるための「現状調査」とは

まとめ

「新耐震基準」は、オフィス選びの基本的な確認事項のひとつです。しかし、建物が新耐震基準に適合していることと、地震発生後も円滑に事業を継続できることは必ずしも同義ではありません。オフィスの耐震性を検討する際は、新耐震基準に適合しているかだけで判断するのではなく、構造方式(耐震・制震・免震)や設備仕様、災害時の運用体制なども含めて総合的に評価することが重要です。また、非構造部材の安全性や、非常用電源・エレベーターといったインフラ設備の継続性も、BCPの観点では重要な確認項目です。PML値についても、地震による建物の経済的リスクを把握するための参考情報として活用できます。

一方で、自社に必要な耐震性能やBCP要件は、業種や事業内容、従業員構成によって異なります。そのため、「新耐震基準だから安心」「免震構造だから十分」と判断するのではなく、自社に求められる事業継続レベルから必要なオフィス要件を整理することが大切です。BCP対策の第一歩は、自社の現状を正確に把握することから始まります。現在のオフィスが抱える課題や、耐震性能・設備仕様・働く環境などを整理することで、将来的な移転や見直しの判断もしやすくなるでしょう。

三菱地所リアルエステートサービスの「Office Well」では、立地・働く環境・面積・ビルスペック・時期の5つの要件から、現在のオフィス環境を定量的に可視化するサービスを提供しています。オフィス環境を見直したい方は、ぜひお問い合わせください。

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公開日:2023年6月13日
更新日:2026年8月24日

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