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最新オフィス事例

【株式会社電通デジタル】目指す働き方『Performance Based Working』を叶える「汐留PORT」

快適性や機能性を備えつつ、オフィスワーカーの感性を刺激して創造性を高めるようなオフィスとは。その指標のひとつとなる第35回「⽇経ニューオフィス賞」が、2022年8⽉に発表されました。その中から、毎年1件のみにおくられる「経済産業⼤⾂賞」を受賞したのが、電通デジタルの新オフィス「汐留PORT」です。2022年2⽉に稼働を始めたこのオフィスは、少し変わったアプローチを経て作られています。今回は汐留にあるオフィスを訪れて、その裏側に迫ります。

国内最大規模のデジタルマーケティング会社として、データとテクノロジーを駆使した次世代マーケティングの戦略策定・実行、その基盤となるITプラットフォームの設計・構築、クライアントの事業革新を支援するDXコンサルティングなどのサービスを提供。国内外の企業との緊密なパートナーシップのもと、高度な専門性と統合力により、クライアントの事業成長に貢献しています。
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オフィスは、「場」ではなく、企業ミッションを叶える経営戦略実現装置

電通デジタルは、社員総数2200名以上にのぼる、国内最⼤規模の総合デジタルマーケティング会社です。以前は「電通本社ビル」と「住友不動産汐留浜離宮ビル」の2拠点にオフィスを構えていましたが、事業成⻑による急激な⼈員の増加に伴い、2018年にオフィスの移転が議題として浮上します。

しかし当時は、都内主要5区のオフィス平均空室率が1%台に突入するなど、オフィス市場は超低空室率時代。いくら探せども、借りられるオフィスが⾒つからず。そうした状況下で同社は、「⼈が増えたらオフィスを拡大する」という従来のサイクルを見直し、目指すワークスタイルそのものを議論することを始めました。2019年には、試験的にリモートワークを導⼊し、その有効性を実感。徐々に拡大させていくなかで、コロナ禍が拍車となり一気に定着します。

コロナ禍で、オフィスの存在意義が⼤きく変化したことを受けて同社は、2021年2⽉に、2か所に分かれていたオフィスを電通本社ビルに集約します。同年7月に電通アイソバーと合併したことで一時的に2拠点オフィスになりましたが、翌2022年2⽉には、7‧8階のオフィスをリニューアルし、現在の一拠点オフィスに戻しています。

そしてこの新オフィスは、完成までに実にユニークなアプローチを取っています。会議室はここ、デスク配置はこうと、設計図を引くことから取り掛かる企業が多いなか、ギリギリまで“図⾯を描かず”作られているのです。その理由について、電通デジタルのコーポレート部⾨で総務部⻑を務め、オフィスリニューアルプロジェクトを主導した飯野将志⽒はこう解説します。

「オフィスは、評価制度やデジタルツールと同様、“経営戦略実現装置のひとつ”と捉えています。コロナ禍以降、当社が目指す働き⽅やオフィスの在り⽅の⾒直しが図られていく過程で、クライアントの事業成⻑パートナーという企業ミッションを達成するためには、そもそも会社としてどのような働き⽅を⽬指すのか。オフィスのリニューアルに当たっては、こうした会社の哲学を、まずは⾔語化することが⼤切だと考えました(ワークスタイルの開発)。そののちに、そのコンセプトを表現するために求められるオフィスの役割と、そこで期待される振る舞いを具体的に落とし込みました(エクスペリエンスデザインの整理)。実際、図⾯のない設計コンペを8社10名に対して実施。そこから選出した建築家に当社の思いや考えを伝えた後に、初めて図⾯を引いてもらいました」

オフィスの機能を空間にただ詰め込むのではなく、フェーズごとにそれぞれの専⾨家とタッグを組みながら、「ビジョン→戦略‧コンセプト→具体的な施策‧配置」というプロセスを経て⽣まれた汐留PORTは、同社が⽬指すワークスタイルそのものを社員が働きながら体現できる仕様となったオフィスです。2022年8⽉には、快適で機能的なオフィスを表彰する第35回「⽇経ニューオフィス賞」が発表。毎年1件のみにおくられる「経済産業⼤⾂賞」を受賞しています。

「オフィス作りには、“五感”を出発点として、様々な要素が組み込まれています。現地審査の際に、偶然行われていた成果発表会で笑い声や拍⼿喝采がオフィス内で起きていた点が評価されたのかなと思います」

オフィス移転やリニューアルのプロセスを説明するプレゼンテーションとセットになった新オフィス⾒学は、「オフィス⾒学がこんなに楽しい経験だったとは」と⼤好評。現在もオフィス移転を検討する様々な企業から申し込みが絶えないそうです。

(左)オフィス移転やリニューアルのプロセスを説明する飯野将志⽒。
(右)オフィス移転とリニューアルの流れ。

ホワイトボードから⾒えてくる、オフィスに集まる意味

オフィスリニューアルに際して電通デジタルでは、今後目指す働き方を再構築しています。それが「組織パフォーマンスを最⼤化し、最短距離で⽬的を達成する働き⽅」です。同社内で「Performance Based Working(PBW)」と呼ばれているこの働き⽅において、オフィスはどのような立ち位置として解釈されているのでしょうか。飯野⽒はこう話します。

「フロアの⾄る所に設置されているホワイトボードが象徴しているように、当社ではオフィスを、⾔語化しづらい情報を共有するために集まる場と捉えています。コンセプトは“Be the one”。多様な個性が融合して、専⾨⼒、統合⼒、機動⼒、信頼構築、それぞれを高めることで、より強い課題解決集団へと変貌させるためのオフィスです」

オフィスフロアで新しい働き⽅‧PBWをもっとも象徴しているのが、チームホームとハックルームです。それぞれ、同社の8階にあります。

「チームホームは“部室”のような所で、同じ領域や部⾨の誰かがいる社員の居場所です。先輩や同僚などの会話や議論、そして他のプロジェクトの課題やソリューションを観ることで、専⾨⼒や統合⼒の向上に繋がります。対するハックルームのイメージは“合宿所”。1⽇〜1週間~1ヶ月と、ニーズに合わせて長期間貸切ることができる空間です。プロジェクトメンバーと集中的に提案を作り上げるチーム作業を主に想定しているので、抜群の機動⼒を発揮できます。また、新⼈スタッフと1⽇貸し切って⼀緒に協働作業に取り組むだけでも、信頼関係やチームビルディングの構築に寄与できると考えています」

さらに8階フロアの⾜元に⽬を向けてみると、移動経路となる「道」がデザインされており、所々に交差点が形成されていることに気づきます。

「フロア全体を街と⾒なし、⼈と⼈が出会って新たな交流と賑わいを生む交差点をいくつも作っています。交差点に当たる場所には、チームホームを囲むように、他のスペースを配置しています。『道』を通じて社員同⼠の個性が融合した結果、強いチームへと進化することを期待しています」

開放感に溢れる8階中央部のシェアラウンジ。

偶然の出会いが創出する新しいコラボレーションで企業が成⻑する

エンパワードフロアと名付けられた8階とは違い、7階はコラボレーションを意識した作りになっています。まず驚くのは、エントランスです。圧迫感や緊張感を全く感じさせない作りになっています。そのコンセプトについて、飯野⽒はこう解説します。

「訪問者の⼼を揺らす同社にしかない風景を意識しました。参考にしたのはホテルのロビーラウンジで、実際に複数のホテルに⾜を運んで設計に取り入れています。お客様は7階のラウンジを⾃由に使うこともできますので、他のチームメンバーを紹介したのをきっかけに、新しいコラボレーションも実現しています」

また、隣り合わせにいくつも会議室が並んでいるオフィスは少なくないですが、同社では会議室やミーティングスペース、ソロワークスペースが⼀塊のような形で点在しているのが分かります。8階と同じで、様々な振る舞い(空間)を隣接させることで、⼈と⼈の出会いから化学反応が起きて、企業成⻑を加速させるのが狙いです。

「今回のリニューアルでは、⼯事から排出される廃棄物のリサイクルにも取り組んでいます。スポンジ、ネジ、アルミなど、廃棄物を解体・分別するので、通常の行程より1か月長く時間を費やしましたが、排出コスト自体は抑えることができたし、最終的にリサイクル率98.4%を実現できました」

廃棄物のエミッション(排出)をゼロにする資源循環型の社会システムへの貢献。この視点も、これからのオフィス作りには欠かせません。

(左)窓を背にすることで会話を生むソロワーク席。
(右)会議室に併設された“あと5分”を叶えるロスタイムカウンター。

(左)会議室ごとに、違ったカラーコーディネートになっています。
(右)モノトーンでコーディネートされた都会的な印象を与える会議室。

企業が求める働き⽅と社員が望む働き⽅は違っていい

電通デジタルのオフィス規模は、現在約2,000坪です。2018年の「電通本社ビル」と「住友不動産汐留浜離宮ビル」の2拠点のときは計約3,500坪でしたので、社員数が大幅に増えているにもかかわらず、面積は40%以上も縮小されていることになります。「現在の全社員の出社率は20%ほどです。これが40%になったときに、オフィスの混雑率が70%になる設定でデザインされています」と飯野⽒が話すように、社員増とオフィス縮⼩、この相反する現象を成⽴させているのが、働き⽅の選択肢の多さにあります。例えば同社では、シェアオフィス業者4社と契約し、⾸都圏を中⼼に850店舗以上が利⽤できる環境が整備されています。日々、社員の30%ほどが利用しており、社員の⾃宅から最寄りのシェアオフィスまでの移動時間は全社平均で13.1分と、その利便性の⾼さが伺えます。

「会社のコストが増加するのではと、オフィスのリニューアル、シェアオフィスの活用、廃棄物リサイクルの推進などに躊躇する担当者は珍しくありません。それぞれで見ると、コストが増加しているものもありますが、全体では、そうとは限りません。当社の場合、リモートワーク手当の支給開始、オフィスの縮⼩による賃料削減、通勤定期代の⽀給廃⽌なども加味して、社員が働く環境を用意するために社員⼀⼈当たりにどのくらいのコストがかかっているかで議論しており、コロナ前と比較すると減少しています。加えて、住友不動産汐留浜離宮ビルから離れるときには、廃棄予定のオフィス家具や電化製品などを社員が購入できる『備品抽選会』といった企画も実施しています」

リアルオフィスの存在意義やそこでの働き⽅を考えるときには、業務内容に合わせて、仕事をする場所を明確に分類することが⼤切です。同社の場合、「⾔語化の難易度」と「事前に時間を確保するかどうか」の2軸でポートフォリオを組んでいます。具体的には、「事前にスケジュールを確保し、かつホワイトボートや映像を使わないと⾔語化しづらく情報の共有が難しい業務」は、オフィスへの出社を推奨しています。対して、「ルールやマニュアルに沿った作業や情報共有のみの会議のような、すでに⾔語化されていて意思疎通が容易な業務」は、その限りでありません。このように会社がワークスタイルを明確にすることで、社員に⾃社のオフィスの在り⽅を浸透させることができます。その結果として、業務の質を落とさずに、オフィスの縮⼩も叶っているのです。

「法律を遵守することが前提ですが、会社は企業ミッションを達成するための働き⽅を社員に求めるのは何ら問題ありません。一方で、社員ひとり⼀⼈が望む生き方、その中における働き⽅もあって当然で、この2つの働き方は違うし、違ってもいい。会社ができることは、2つの異なる働き方の重なる⾯積が少しでも広くなるように、仕組みや環境を整えることです。そうすることで、社員のパフォーマンスが最大化し、企業ミッションの達成を加速することができると考えています」

働き⽅は時代によって変わります。そのために、余⽩を残しておくことも忘れてはなりません。

「オフィスの移転やリニューアルは、終わりであり、始まりでもあります。オフィスの真価が問われるのは、稼働後です。今回のリニューアルでは、音漏れや反響⾳などの「⾳」に関する対策が不十分だったので、現在その改善を⾏っています。今後も、電通デジタルらしくPDCAを回しながら、ワークスタイルを新たに開発し、それに合ったオフィスを作っていきたいと思っています」

社員数に合わせてオフィスを選んだり、カスタマイズしたりすることも視点のひとつです。ですが、規模や図⾯にとらわれず、「⾃社の社⾵や働き⽅を表現できるか」という観点で、オフィスを眺めると違った景⾊が⾒えてくるはずです。

(左)チームが⼀定期間まとまって作業できるハックルーム。 ⼤きなホワイトボードが象徴的。
(右)チームホームは部室のような場所。仕事を観る‧観られることで、情報や経験値を共有し成⻑を加速させる。

飯野将志⽒
概略プロフィール
株式会社電通デジタル
コーポレート部⾨
総務部⻑

オフィススペック
名称:電通デジタル 汐留PORT
所在地:東京都港区東新橋1-8-1電通本社ビル
オフィスの延床⾯積:約6,600㎡(約2,000坪)
執務⽤総席数:約1,000席
使⽤開始時期:2022年2⽉




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