眺望が楽しめる広い共有スペースには、窓際にテーブルと向かい合わせのソファが置かれ、打ち合わせやランチ等で利用される。中心にはバーカウンターが設置されており、月1回金曜夜に「sodabar」を開催。社員はソーダストリームで作った炭酸飲料を飲みながら、部門の垣根を越えた交流を楽しんでいる。
社名にもなっている家庭用炭酸水メーカーとして、世界中に広く知られているソーダストリーム。1903年に英国で創業し現在はイスラエルに本社を構える同社の製品は、世界47カ国、約80,000店舗で販売されており、日本でも上陸以来順調に需要が拡大している。
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ソーダストリーム株式会社
ジャパンカントリーマネージャー
プラスチック・ファイター
出口昌克氏
理念の実現を可能とする新オフィスを求めて
2014年の創業以来、順調に事業を拡大している同社では、おおよそ5年間隔で拡張移転を行っていた。しかし、2019年末からのコロナ禍による“おうち需要”の増加で、同社製品の需要が増え、予想を上回る事業成長があり、オフィスの課題解決が急務となった。
今回の移転にも関わった同社ジャパンカントリーマネージャーの出口昌克氏は当時をこう振り返る。
「弊社はイスラエルに本社を構えており、移転を含む様々な承認には本社でのプロセスを通す必要があります。また、希望する青山エリアは新規物件数が少なく、移転にはかなりの時間を要するのではないかという懸念がありました。」
一般的にテレワーク推奨で出社率が減少しオフィス縮小も増える中、同社では今後の増員と全員出社を想定し、予定よりも早く物件探しを開始した。希望する条件がいくつかあったが、その中でも特にこだわったのが「広さ」と「立地」だ。「広さ」については、社員全員がワンフロアで働きつつ、様々な理念を実現するために必要不可欠だった。
「弊社の世界共通理念の一つに『ONE SODASTREAM』という考え方があります。
社員が部門を超えて一つの空間で交流しながら働くことを理想とするものです。また、飲料の飲み方を変えていく会社のミッション、文化を体現するための環境配慮やインナーブランディングへの取り組みをオフィスで実現したいという思いがありました。」
移転検討時の従業員数は50名ほどであったが、2~3年で約40%の増員を想定。旧オフィスは90坪ほどであったことから、希望面積は150~200坪に設定した。
「立地」については歴代のオフィスと同じ南青山エリアを希望した。異文化に寛容な土地柄が外資系の同社の社風に合致していたことや、社員が通勤しやすい環境を大切にした。
受付の壁はガラス張りになっており、その向こうには広い執務室が見渡せる。それは同社の理念である「ONE SODASTREAM」を訪れる人々に伝えるという意味でも有効な演出だ。
海外本社との調整とスケジュール管理
積極的に移転を検討しているタイミングで、有益な情報を提供してくれたのが三菱地所リアルのビル営業担当者だったという。
「物件情報をご提案いただいた段階で、あらゆる条件が希望通りでしたのですぐに内覧のお願いをしました。タイミングよく様々な条件が重なる物件が見つかり、最短スケジュールで移転することができたのは、良いご縁があってのことと感じています。」
また出口氏は、三菱地所リアルに決定した大きな理由の一つとして、外資系企業の契約関係に関するノウハウが豊富だったことを挙げた。
「海外と日本では賃貸物件の契約についてのルールや手続きなど、習慣が異なります。我々日本法人がオフィスを移転するときには、海外本社と物件オーナーの間に立ち様々な調整をする必要があり、時差や言葉の壁なども考慮すると、想像以上に膨大な量の調整業務が必要になります。」
旧オフィスは普通借家契約だったので6カ月前予告で解約可能だったが、原状回復工事には1~2カ月を要する。新オフィスの面積(約210坪)であれば内装工事期間はおよそ2~3カ月程度となることから、契約と解約のタイミングが大きくずれると、長期間二重で賃料負担が発生することになる。
今回の移転では三菱地所リアル担当者の尽力もあり、2022年4月1日の新オフィスの契約に先駆け3月末には旧オフィスの解約通知(6カ月前通知)を提出。4月初旬にはソーダストリーム社内でもタスクフォースを結成し、5月から入居工事を開始。8月1日に新オフィスを開業することができた。
新オフィスでは希望通り十分な数の会議室を設けることができた。曇りガラスを採用した大会議室を除くすべての会議室が透明なガラス張りになっており、誰でも中の様子をうかがうことができる。コンセプトである「透明性」への強いこだわりが感じられる。
ワンフロアの執務室がもたらす様々な効果
新オフィスでは、旧オフィスから133%の増加となる210坪の面積を実現している。出口氏は「十分な広さを得たことで、透明性をコンセプトとした同社が培ってきた理念や世界観を体現することが可能となった」と喜ぶ。
「新オフィスでは社員全員がワンフロアで働いており、極力壁や仕切りを廃しています。その反面、個人の業務スペースを従来よりも広くすることで、各個人がストレスなく作業できる環境を構築しました。また、センタースペースにゴミ箱を集約することで、ゴミの総量も削減しています。」
さらに、社員全員が働く広い執務室には、もう一つ仕掛けがある。執務室全体から見える場所に可動式の大きなスクリーンを設置することで、社員全員が集まれるオーディトリアム※へと変化させることが可能となった。当初はスペース的にあきらめていたが、「執務室自体を必要に応じてオーディトリアムに変換する」という逆転の発想から、実現につながった。
そして、大人数がワンフロアで働くことで生まれた最もポジティブな変化が社員同士の会話や交流の活発化だという。
「例えば、部門長の一言に周りが反応し、そのままコミュニケーションにつながることがフロア内で度々起こっています。また、ゴミ箱を集約することで社員がオフィス内を歩く機会が増えたため、部門を超えた思わぬ交流の機会が増えています。執務室脇には打ち合わせスペースも用意されているため、そうした会話から新しい事業がどんどん生まれていけば面白いですね。」
※劇場やコンサートホールなどの中にあり、パフォーマンスを見たり聞いたりするための場所のことを指す。オフィスではスクリーンと座席を備えた多目的スペースをそう呼ぶ。
ワンフロアの広大な執務室はレイアウトにもこだわった。ディレクター席から見える席数は61席にも上り、旧オフィスのおよそ3倍となっている。
更なるポジティブな相互作用に期待
新オフィスでは、同社の環境配慮に対する想いも随所にちりばめられている。
「『ペットボトルを排出するべきではない』という意識喚起を目的として、一部の壁に空のペットボトルを詰め込んでいます。」
そして出口氏は、新オフィスでさらに実現したい理念として「Push for Better」を挙げた。
「本来は“世界を変えるひと押し”の意味を持つのですが、社内では『自分や仲間をプッシュして、より良いことを実現していこう!』という目的で使われています。多くの社員が集まり相互にプッシュし合うことで、沢山の新しいことが実現すると信じています。」
コロナ禍以降、個々の働き方を尊重し、必ずしも出社する必要のない企業が増加している。同社が目指すのは単にそれを否定することではなく、社員が気持ちよく働けるオフィスを構築することで、自然に毎日出社し、ポジティブな相互作用を与えながら業務に邁進できる環境を作ることだ。
大きなプッシュ(今回の移転)により着実に新しい理念を実現している同社。今後発信されるポジティブな効果に注目したい。
可動式のスクリーンは、執務室内のほぼ全席から観ることができる。目の前にはカウンターもあるため、様々な使い方が可能だ。
(左)プラゴミ削減による環境汚染の改善に意識を向けてもらうために、会議室にはそれぞれ絶滅危惧種の海洋生物の名前が付けられている。
(右)ガラス張りの会議室は、誰でも中の様子を覗くことができる。
(左)エレベーターを降りるとまず目の前に現れるのが、ソーダストリームの繰り返し使える専用ボトルを積み重ねて形作られた美しいオブジェだ。新オフィスでは、同社の世界観が感じられる演出が随所に施されている。
(右)ソファに置かれたクッションやぬいぐるみも同社オリジナルのものだという。
リビエラ南青山ビル
所在地: 東京都港区南青山3丁目3-3
規模: 地上6階/地下3階
構造: 鉄骨鉄筋コンクリート造
延床面積: 11,976.21㎡(約3,622.80坪)
竣工: 1989年11月
交通: 東京メトロ銀座線「外苑前」駅徒歩4分
東京メトロ半蔵門線「表参道」駅徒歩7分
東京メトロ千代田線「表参道」駅徒歩7分
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