福岡市は、新幹線や在来線等の他、国際空港も有する日本の主要都市です。飛行機なら東京まで1時間30分、ソウルまで1時間10分と、国内外からのアクセスに優れており、アジアの玄関口として多数の路線が就航しています。その交通利便性の高さから、福岡は古くから「貿易の地」として発展を遂げました。当記事では、博多・天神エリアの歴史や、賃貸オフィスの空室率・平均募集賃料などをご紹介します。
博多・天神エリアの歴史
ここでは博多と天神、それぞれの歴史をご紹介します。両エリアがどのようにして発展を遂げてきたのかを見ていきましょう。
■博多の歴史
日本の主要都市の一つに数えられる博多。地名の由来は、鳥が羽を伸ばしたような地形をしていることから「羽形」となり、「博多」となった説や、海外へ出る船が停泊する場所を「泊潟」と呼んでいたことが由来となった説など、諸説あります。平安時代初期の史書「続日本紀」の中には既に「博多大津」という名称が記されており、少なくとも奈良時代にはその地名が使用されていたことがわかります。
また、博多は平安~鎌倉時代、日本と中国間の貿易「日宋貿易」の中心地でした。外交の拠点として発展し、海外からの移住者も増え、新しい文化が輸入される地として栄えるようになりました。明治時代以降は紡績業やビール、靴、製紙などの工場が数多く建てられ、商業の街として発展しました。現代でも、第三次産業(商業、金融業、サービス業など)を基幹産業としており、その優れた交通利便性も相まって、日本の主要都市へと進化しました。
■天神の歴史
天神という地名は、明治通り沿いにある「水鏡天満宮」に由来します。水鏡天満宮には学問の神様である菅原道真が祀られており、菅原道真は別名「天神様」とも呼ばれていました。このことから、水鏡天満宮の付近一帯が「天神町」と呼ばれるようになりました。明治時代には、福岡県庁や市役所、警察署などが集まる官庁街となり、明治時代後半~大正初期にかけて路面電車の運行が始まると、通り沿いに少しずつ商店が増えはじめます。その後、昭和初期には銀行や証券会社、保険会社が建ち並ぶエリアとなり、ビジネスの街へと変貌を遂げていきました。
博多・天神エリアの特徴
博多・天神エリアはアクセスに優れており、ビジネスにおいても利便性の高いエリアです。九州最大のターミナル駅、博多駅には以下の7路線が乗り入れています。※2024年4月時点
JR山陽新幹線
JR九州新幹線
JR博多南線
JR鹿児島本線
JR篠栗線(福北ゆたか線)
福岡市地下鉄空港線
福岡市地下鉄七隈線
博多駅と福岡空港は電車で5分程の距離のため、博多エリアにオフィスがあると国内外の出張時に便利です。
また、天神駅は地下鉄空港線、西鉄(西日本鉄道)の利用が可能で、空港まで10分の距離に位置しています。
2023年3月には福岡市地下鉄七隈線の延伸が行われ、天神南駅から博多駅までが開通しました。福岡市西南部から博多駅までの時間が14分ほど短縮された他、天神駅での乗り換え時間の短縮によりさらに利便性が向上。福岡空港を利用する際に使われる福岡市地下鉄空港線との乗り換えもスムーズになり、天神駅を起点としたアクセスは格段に良くなりました。
国内外からのアクセスに優れている博多・天神エリアですが、空港が近すぎるために、今までは航空法で建物の高さが制限されていました。しかし、2014年に「国家戦略特区における航空法の高さ制限のエリア単位での特例承認」を受け、規制緩和されたことを契機に、更新期を迎えているビル群の建て替えを促進するプロジェクト「天神ビッグバン」が始動しました。元の規制では建物の高さは約67m(地上15階)までに制限されていましたが、76~115m(地上17階~26階)の高さまで緩和されたことで、天神エリアでも機能性の高い先進的なビルの建設が可能になりました。(高さ制限は地区ごとに異なる)
天神エリアに比べて福岡空港に近い博多エリアはエリア単位での特例承認は難しいものの、個別計画毎の特例承認に向けて福岡市がバックアップを行っています。
上記の規制緩和を契機に、天神エリアでは2015年より福岡市主導の官民連携まちづくり計画「天神ビッグバン」が、それに続いて博多エリアでは2019年から「博多コネクティッド」が進行しており、新しいオフィスビルや、新たな雇用、ビジネスチャンスの創出が期待されます。
さらに福岡市では起業・創業支援も手厚く、経営サポートや融資まで幅広い窓口を用意しています。官民協働型のスタートアップ支援施設や、成長性の高いビジネスプランを持つ起業者・創業者に対する助成事業などがあります。今後も博多・天神エリアはビジネス街として更なる発展を遂げるでしょう。
福岡市の賃貸オフィスの空室率と平均賃料
次に、博多・天神エリアを含む福岡市の空室率や平均募集賃料について詳しく解説します。
■空室率
2024年5月の主要大型ビルの空室率は4.61%でした。2023年3月には大型物件竣工の影響で5.26%まで上昇し、その後は緩やかな回復傾向となっています。
■平均募集賃料
2024年5月の主要大型ビルの募集賃料は15,075円/坪でした。2020年頃から緩やかな上昇傾向にありましたが、直近ではほぼ横ばいで推移しています。また2024年にはオフィスの新規供給が多くなると予想されているほか、2025年~2026年にかけても例年より供給量が増加する見込みとなっているため、空室率と募集賃料にも影響する見込みです。
福岡市内では今後オフィス需要は増加するといわれています。福岡市内の大規模再開発も一つの理由ですが、一番は半導体関連産業の増加です。九州はもともと半導体関連産業が盛んなことから「シリコンアイランド」と呼ばれています。九州においては、2023年3月時点で公表されている主な企業だけでも半導体関連の設備投資額は約1.5兆円を超える見込みで、半導体関連事業者による福岡市内への事業進出も増加すると予測されることから、福岡市は今後さらに人気のエリアとなるでしょう。
博多・天神エリアの再開発
次に、博多・天神エリアで進行中の官民連携街づくり計画「博多コネクティッド」、「天神ビッグバン」について解説します。
博多コネクティッド計画
博多コネクティッド計画は、博多駅周辺のさらなる賑わいと発展を目的とし、博多駅から半径約500mのエリアを再開発・整備するという、福岡市のプロジェクトです。福岡アジア都市研究所の試算では、建て替え完了後の経済活動波及効果は年間約5,000億円、雇用者数は1.6倍になると予測されています。
参考: 博多駅の活力と賑わいをさらに周辺につなげていく『博多コネクティッド』本格始動!!|博多市
博多コネクティッド計画を推進する過程で、更新期を迎えたビルが耐震性の高い先進的なビルへと建て替えが促進されるよう「博多コネクティッドボーナス」が創設されました。具体的なインセンティブとして、広場の創出など賑わいの拡大に寄与するビルには既存の容積率緩和制度に加えて、さらに容積率を最大50%緩和。その他、賑わいや回遊を生み出す施策として屋根のある広場等の公開空地評価を屋根が無い場合と同等の最大2.5倍とする、などの規制緩和です。このほか、税制優遇や交付金なども受けることが出来ます。2025年6月に竣工予定の「(仮称)博多駅前三丁目プロジェクト」は博多コネクティッドボーナスの認定を受けています。
博多エリアにおける竣工・建て替え予定の建物は以下の通りです。
■(仮称)博多駅前三丁目プロジェクト
「博多コネクティッドボーナス」の認定を受けて、2023年9月から着工しているオフィスビルです。この建て替えプロジェクトの大きな特徴は、地下部~地上2階の既存躯体を新築建物に再利用していることです。従来の建て替えに比べて解体時・新築時に二酸化炭素を大幅に削減する効果があります。1階には広場をつくり、街の回遊性向上にも寄与しています。福岡市が推進する「都心の森1万本プロジェクト(※1)」や、「Fukuoka Art Next(※2)」の取り組みも実施しており、博多駅周辺の都市機能向上を図っています。
(※1)市民や企業と共働し、新たに樹木を植え、民有地における緑化誘導により良好な都市景観の形成や都市環境の改善を図り、緑豊かなまちづくりを推進するプロジェクト。
(※2)市民がアートに触れる機会を増やし、その価値や魅力を感じてWell-beingを向上させるとともに、アーティスト活動を支援し、世界で活躍する福岡発のアーティストの増加を目指すプロジェクト。
■博多駅空中都市プロジェクト
博多駅の線路上空を有効活用する目的として進められているプロジェクトです。オフィス・ホテル・商業施設が入る複合ビルの建設が計画されており、2028年末に竣工予定です。歩きやすく心地よい歩行者空間の創出や、広場等を利用した賑わい創出(イベント、アートによる文化発信など)、博多口と筑紫口を結ぶ新たな動線の設置などの取り組みも注目されています。
■伊予銀行福岡支店ビル建替計画
愛媛県に本社を置く伊予銀行の建て替え計画で、JR博多駅から徒歩2分という好立地にありながら、建物の老朽化が課題とされていた中で建て替えが実現しました。2024年6月竣工予定の地上8階建てビルは、低層階を店舗スペースとし、高層階は賃貸オフィスを併設したビルとして利用される予定です。
天神ビッグバン計画
天神ビッグバン計画は、博多コネクティッド同様更新期を迎えるビルを耐震性の高い先進的なビルへ建て替えることを促進する計画で、2015年から進行中です。この計画は先述の「国家戦略特区における航空法の高さ制限のエリア単位での特例承認」により、エリアごとに建物の高さ制限が緩和されたことを契機に始まったプロジェクトです。
参考: 規制緩和によって民間投資を呼び込む
『天神ビッグバン』着実に進行中!!|博多市
対象エリアは天神交差点から半径約500mで、再開発により都市部の機能を高め、新たな経済効果を生み出すことが期待されています。博多コネクティッド同様、インセンティブ制度(天神ビッグバンボーナス)も設定されています。2026年6月竣工予定の「(仮称)天神ビジネスセンター2期計画」は天神ビッグバンボーナスの認定を受けています。
今後、天神エリアにおける竣工・建て替え予定の建物は以下の通りです。
■ONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)
西日本鉄道株式会社が2018年より進めている、福ビル街区建て替えプロジェクト(福岡ビル跡・天神コアビル跡・天神ビブレ跡の一体開発)は、2025年春の開業を予定しています。明治通りに沿ったビジネスエリアと、渡辺通りに沿ったショッピングエリアの2つのエリアの結節点にあたる場所で、「創造交差点」を開発コンセプトに建設が進められています。働き方と生き方、アジアと福岡、ショッピングとビジネス等、様々な人・モノが交差し、創造を生み出す場所となることを目指しています。地上19階・地下4階の大型複合ビルで、商業・オフィス・ホテル・カンファレンスなど多様な機能を備えています。
■(仮称)ヒューリック福岡ビル建替計画
ヒューリック福岡ビルは地上19階・地下3階、高さ約92mの大型複合ビルへの建て替えが予定されており、2024年12月に竣工予定です。このプロジェクトは天神の魅力向上につながるデザイン性に優れたビルへの建て替えを認証する「天神ビッグバンボーナス」の認定を受けています。商業・オフィス・ホテルなどが入る予定で、地下部分は福岡市地下鉄の天神駅に直結。天神駅コンコースに立体広場を設置する予定で、人と交通と施設をつなぐ「街区の入口」を形成し、賑わい溢れる街づくりに寄与します。
博多・天神エリアで賃貸オフィスをお探しの方へ
博多・天神エリアでは、「博多コネクティッド」、「天神ビッグバン」のプロジェクトを活用した建て替え計画が多数進行中です。観光地・ショッピング街としてだけではなく、ビジネス街としてさらなる発展が見込めるエリアです。優れた交通利便性と、魅力的なオフィスの新規供給から、エリアの人気はますます高まるでしょう。
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