飯田橋の歴史と変遷
飯田橋は、多彩な変遷を経験してきた歴史的なエリアです。徳川家康が統治をしていた江戸時代から「飯田町」と呼ばれ、長年にわたって親しまれてきました。それからさまざまな変遷を経て現在、当時の風情を保ちながらも多様性あふれる地域となっています。まずは、飯田橋の歴史を踏まえながら、どのように変わっていったのかを紹介していきます。
- 江戸時代は武士が住んでいた
- 牧場が開かれた時代もあった
- 印刷や出版の拠点となった飯田橋
- 再開発が進み緩やかに成長していく飯田橋
■江戸時代は武士が住んでいた
飯田橋と呼ばれるようになったのは、江戸時代といわれています。徳川家康は、長い戦いを経験した末に、関東平野に江戸城を築城します。その際に、のどかな農村地帯だった現在の飯田橋周辺を案内したのが、「飯田喜兵衛 」という住人でした。丁寧に案内する飯田喜兵衛の姿に感心した家康は、彼の名前にちなんで「飯田町」という町名をつけるように命じます。こうしてできた江戸城の外堀から飯田町にかけられた橋が「飯田橋」です。結局、正式な町名にはならなかったものの、飯田町は通称として使われました。これが、飯田橋の由来です。
武士が生活していた飯田橋や神楽坂エリアには、今でも江戸時代の面影が随所に残っています。
■牧場が開かれた時代もあった
戊辰戦争が起こり、江戸幕府は明治政府によって倒されます。その結果、旧幕府軍だった武士たちの多くが、職や家を失いました。飯田橋に数多くあった武士の屋敷も廃墟となります。そこで幕臣であった「榎本武揚」は、路頭に迷う武士たちのために、廃墟となった屋敷を利用して北辰牧場を開きました。今では想像しにくい情景ですが、明治時代の東京には飯田橋を含めて7軒の牧場があり、3,000頭を超える乳牛が飼育されていたといいます。現在も、飯田橋には「北辰牧場跡」と書かれた記念碑があり、当時の情景に想いを馳せながら、大都会となった街を眺めることが可能です。
■印刷や出版の拠点となった飯田橋
明治時代に入ると、東京は近代化が進みます。1928年 飯田橋に駅が開設されました。当時の日本は、近代化によって印刷技術が向上したことが影響して、紙の需要が高まっていました。飯田橋駅は、東北や静岡で作られていた紙が集積する要所として確立されました。結果として、印刷会社や出版社の多くが、飯田橋エリアに拠点を構えるようになったといわれています。その後、飯田橋は「印刷の町」といわれるほどに発展していきました。
また、古本の町として知られる神保町も飯田橋の近くにあります。それは、印刷・出版関係の流通ルートが確保しやすい飯田橋が、すぐそばにあったことが影響していると考えられるでしょう。さらに、大規模な出版社の多くが、飯田橋の近隣エリアに拠点を設けていることからも、飯田橋が印刷の町であったことがわかります。
■再開発が進み緩やかに成長していく飯田橋
昭和に入り、飯田橋は関東大震災や第二次世界大戦による大規模な被害を受けました。交通インフラが確立するまでは、今のような賑やかさが感じられない時代もあったようです。しかし、再開発が進むにつれて、飯田橋エリアにはオフィスビルが続々と建てられるようになりました。渋谷や新宿に見られるような著しい開発ではないものの、緩やかに成長が続きます。近年は、さらに開発が進み、2022年度には飯田橋駅中央地区再開発事業が完成する予定となっています。これからの発展にも期待が持てるでしょう。
飯田橋の特徴
歴史的にも魅力がある飯田橋は、現在も利便性に富んだエリアであり、ビジネスの拠点として選ばれています。新たな変貌を遂げつつある飯田橋は、多くの人から注目を集めるエリアです。飯田橋駅をはじめ、周辺地域のことも踏まえながら、飯田橋エリアの特徴を紹介していきます。
■飯田橋駅について
飯田橋駅は、JR中央線や総武線に加えて、東西線・有楽町線・南北線・都営大江戸線といった地下鉄4路線が通る交通の要です。路線の多さだけではなく、東京駅までは13分程度、新宿駅までは11分程度でアクセスできる、利便性の高さが魅力といえます。その影響もあり、ビジネスマンや学生で賑わっているのが特徴です。
2020年度における1日の平均乗降人員は、地下鉄で11万6,578人 となっており、東京メトロの集計では第14位です。JRの統計では、1日平均の乗車人員が5万5,488人 となっており、トータルで17万人程度の人が乗降していることがわかります。コロナ禍以前は、さらに多くの人が利用していました。このことからも、利便性の高さが読み取れるでしょう。また、東京メトロは線路やトンネルの改良を進めており、ラッシュ時の本数を増やす計画も考えているようです。こうした取り組みによって、飯田橋駅はますます快適になっていくでしょう。
■周辺地域について
利便性が高い飯田橋駅の周辺は、人が多く集まることからショッピングセンターやタワーマンション、オフィスビルなどが立ち並んでいます。駅に直結するショッピングセンターで、生活必需品のほとんどを揃えることができます。飯田橋エリア内で暮らしが成り立つといえるでしょう。また、2014年には商業施設を併設したオフィスビル「飯田橋グラン・ブルーム」が完成し、ビジネス街としての地位を確立しています。
再開発が進む大通りから少し離れると、昔ながらの住宅地が残っているのも特徴です。また、江戸城の外堀は、都会の中の癒しスポットとして注目を集めています。春になれば、外堀の沿道には桜が咲き誇り、市ヶ谷までつながる景色を華やかに彩ってくれます。
近年、飯田橋はマンション建設が進み、再び住宅地としても注目されています。また、神社仏閣や文化施設などが、再開発前の情緒あふれる飯田橋を演出しています。飯田橋駅から徒歩5分圏内にある「東京大神宮」は、「東京のお伊勢さん」とも呼ばれており、パワースポットとして人気です。さらに、レトロで庶民的な飲食店も多く、会社帰りに寄っても楽しめるでしょう。
■オフィスビルについて
飯田橋は、古くから出版・印刷系の企業が軒を連ねるエリアというイメージがあります。現在も出版・印刷系の企業が多く見られますが、近年は、さまざまな業種の企業が飯田橋に進出しています。また、企業規模も大小を問わず多い点が特徴です。ビジネスにおいても重要なエリアといえるでしょう。特に、飯田橋駅から東に向かう水道橋方面の外堀沿いに、大型オフィスが増えてきました。中には、IT企業や建設会社などもあり、歴史がある飯田橋に新しい風を吹き込んでいます。また、飯田橋駅の北側にもオフィスビルが並んでおり、多種多様なジャンルの業種がオフィスを構えているのが特徴です。
飯田橋エリアの空室率・平均募集賃料
次に、飯田橋エリア(四谷・市ケ谷・水道橋駅周辺を含む)の空室率、平均募集賃料についてご紹介します。
■空室率
2024年10月の主要大型ビルの空室率は1.72%でした。四谷エリアで大規模な新規空室が発生した影響により、2023年11月には4.91%まで上昇しましたが、2024年1月にはこの大型空室の埋め戻しにより空室率は2.94%まで改善しました。その後も徐々に空室の解消が進み、2024年7月以降は1%台となっています。2024年10月には、大型ビルの解約の影響により少し上昇しました。
■平均募集賃料
2024年10月の主要大型ビルの平均募集賃料は29,494円/坪でした。空室率と同様に、大規模空室の影響で2023年12月には29,872円/坪まで上昇しましたが、2024年1月には25,000円/坪台まで下落し、その後は横ばいで推移していました。2024年10月には、賃料価格帯の高いビルが募集を開始した影響で、大きく上昇しています。
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飯田橋周辺の開発情報
これから飯田橋周辺にオフィスを構える方にとって気になるのが、今後の開発情報でしょう。より快適に過ごすためにも、どの程度の開発が行われるのかを把握しておくことが大切です。続いては、飯田橋周辺の開発情報について、細かく紹介していきます。
■飯田橋駅を中心に進む再開発
多くの人が行き交う飯田橋駅周辺では、2000年代に入ってから再開発が行われ始めました。2000年に完成した「住友不動産飯田橋ファーストビル」を皮切りに、「飯田橋プラーノ」や「住友不動産飯田橋ファーストタワー」が2009年と2010年に連続して完成しました。また、2014年には前述した「飯田橋グラン・ブルーム」や、その隣の住宅棟が完成しています。
さらに、飯田橋駅自体も、2020年7月12日にホームが移設され、西口駅舎の建て替え工事が完了しました。これまではカーブ上に立地したことから、隙間が空いていて危険なホームでしたが、きれいに改良されて快適に乗降できる仕様になっています。
■増加するオフィスビルや娯楽施設
飯田橋は、再開発が進みはじめる以前の2000年代前半まで、拠点と呼べる施設が少ないエリアでした。しかし、最近はオフィスビルや娯楽施設が増えており、さまざまな業種の企業が飯田橋に拠点を構えています。乗り換えをするための駅といったイメージが強かった飯田橋駅は現在、オフィス街としても注目のエリアであるといえるでしょう。
また、カフェやレストランが豊富な神楽坂にも徒歩で行ける好立地であることから、娯楽施設も増えてきています。東京ドームのすぐそばにある「スパ ラクーア」は、2003年に開業しました。2017年には大規模改装が行われ、訪れる人たちから高い支持を得ています。
■さらなる再開発で駅前広場が整備される予定
飯田橋周辺の再開発は、さらに続きます。2020年7月に東京都都市整備局から発表された「飯田橋駅周辺基盤再整備構想案」によると、混雑する駅周辺を整備して、ゆとりある歩行者空間が設けられ、駅前広場が充実されるとのことです。また、歩道橋のバリアフリー化により、ボーダレスなエリアとしてのブラッシュアップが期待できます。この計画は、2023年度に着工され、2026年度に竣工予定です。
■3つの側面から成長していく飯田橋
江戸時代から続く飯田橋は、武士が暮らす町から、オフィス街や飲食店のあるエリアへと発展しました。さらに、外堀をはじめとする自然の景色を有し、東京都内の中でもオアシス的な存在でもあります。また、近隣には飲食店が豊富にある神楽坂があり、さらに利便性が上がった飯田橋駅を踏まえると、住宅地としての需要はまだまだ伸びていくでしょう。
加えて、2022年度に着工される予定の飯田橋駅中央地区再開発事業では、オフィスと住宅、ショッピング施設の機能を併せ持つ複合施設が建設されます。飯田橋には、さらにいくつかの複合施設が建っており、この先もますます住宅地・オフィス街・飲食街といった3つの面における成長が期待できるでしょう。
まとめ
今回は、飯田橋エリアの歴史や将来性、賃貸オフィスの賃料相場について詳しく紹介しました。
かつての飯田橋は、印刷・出版の拠点という側面を持ち、交通においては乗り換えするために降りる町というイメージの強いエリアでした。しかし、近年は目まぐるしい変遷を遂げ、住宅・オフィス・飲食街といったあらゆる面で充実した街になっています。ビジネスに限らず、観光や行楽、そして生活が完結しているエリアといえるでしょう。
また、再開発も計画されており、さらに快適なエリアになることが期待されます。高い快適性と将来性を持つ飯田橋は、オフィスを構える上でも申し分ないエリアです。飯田橋で賃貸オフィスをお探しなら、以下のページをご参照ください。当社、三菱地所リアルエステートサービスでは、豊富な情報提供と的確なアドバイスで、希望に見合ったオフィス探しをサポート致します。
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