この記事では、各契約形態の基本的な特徴に加えて、東京の主要7区における大型オフィスビルなどで実際に採用されている契約形態についても詳しく解説します。実状に即した内容に触れながら、各契約形態についてより具体的に解説します。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違い
まずは、各契約の法的な要件ついて解説します。
「定期建物賃貸借契約」は契約期間が決められており、(法定)更新がなく、契約期間が満了すれば終了する契約です。一方、「普通建物賃貸借契約」は、借主の希望があれば契約更新によって同じ物件を長く借り続けることができます。まずは、それぞれの契約形態について特徴を解説します。
■普通建物賃貸借契約の特徴
契約期間について
普通建物賃貸借契約は、契約期間を定めるものの(2年が一般的)、契約期間が満了する際に借主の希望により契約は更新されます。契約期間は貸主が自由に決められますが、1年以上に設定する必要があります。
契約更新・終了について
この契約は借主保護の側面が強く、正当な理由がない限り、貸主からの一方的な更新拒絶はできません。そのため、貸主・借主双方から契約終了に関する通知が無かった場合には自動的に従前と同一内容で契約更新となります。(法定更新)また、契約書に「自動更新」の条項が含まれる場合も同様に、双方からの契約終了に関する通知が無い場合には自動的に契約更新となります。(自動更新)
法定更新と自動更新の違いは、更新後の契約期間です。法定更新の場合は、期間の定めのない契約となり、自動更新の場合は条項の内容(例:2年間など)に従います。
一方で、借主が契約更新を希望しない場合、契約期間が1年以上であれば期間満了の1年前~6ヶ月前までの間に更新しない旨を通知することで契約を終了することができます。契約期間が1年未満の場合や期間の定めのない契約の場合は、借主からの解約はいつでも可能となり、解約申し入れ日から3ヶ月経過後に契約終了となります。
契約期間中の中途解約について
借主からの契約期間中の中途解約は、期間の定めがない契約の場合はいつでも可能です。期間の定めがある契約の場合には、中途解約の特約があれば解約が出来ますが、特約が無い場合は出来ません。その他、中途解約時に違約金の支払いが発生するなどの特約がある場合も多いため、契約内容をよく確認しましょう。
契約方法について
法的には口頭での契約も有効とされていますが、後々トラブルにならないためにも書面での契約をしておく方が良いでしょう。
賃料増減額請求権等について
貸主・借主双方からの賃料増額・減額請求は共に認められます。この請求権を排除するための特約を定める場合、「一定期間賃料を増額しない」旨の特約は認められますが、「一定期間賃料を減額しない」旨の特約は借主にとって不利となるため無効になります。
■定期建物賃貸借契約の特徴
契約期間について
「定期建物賃貸借契約」は契約更新がなく、期間満了により契約は終了となり、物件を貸主に明け渡す必要がある契約です。契約期間の制限はなく、1年未満でも有効です。
再契約・終了について
定期建物賃貸借契約として提供される物件には様々な理由がありますが、例えば、建て替え予定があるビルや再開発予定地に建っている物件、貸主がいずれ活用する計画がある物件などが理由の場合もあるでしょう。
この契約形態は更新はありませんが、貸主と借主の意向が合致し、契約条件に合意した場合は、再度定期建物賃貸借契約を締結することができます。この時、契約「更新」ではなく、「再契約」という契約形態になるため、再契約料等の費用がかかる可能性がありますが、実際は、敷金や礼金を請求しないケースの方が多く見られます。
また、契約期間が1年未満の場合には貸主から借主への契約終了通知の義務はありませんが、契約期間が1年以上の場合には、契約期間満了の1年前~6ヶ月前までに、貸主から借主へ契約終了の通知をする義務があります。この通知が無かった場合には、貸主は借主に物件の明け渡しを要求することが出来ません。通知期間を過ぎた後に、貸主から改めて通知を行った場合、その6か月後に契約終了となります。
契約期間中の中途解約について
特約事項に定められた特例(即時解約金を支払えば解約できる等)があれば解約することができますが、中途解約に関する特約を定めていない場合は、貸主・借主双方からの自己都合による解約はできません。
契約方法について
定期建物賃貸借契約は公正証書などの書面で契約する必要があり、貸主側は契約期間を明確に定めなければなりません。さらに、前述の通り貸主は契約満了となる日の1年前~6ヶ月前までの間に、契約が終了する旨を借主に通知する義務があります。
賃料増減額請求権等について
貸主・借主双方からの賃料増額・減額請求は共に認められます。この請求権を排除するための特約は、増額・減額共に有効となるのも定期建物賃貸借契約の特徴です。契約前には特約の内容について、確認するようにしましょう。
検討中の物件が定期建物賃貸借契約か普通建物賃貸借契約かを調べる方法
事業用として賃貸物件を選ぶ場合は、業種や目的に合った契約形態を選ぶことが大切です。しかし、定借・普通借の契約形態までオフィシャルサイト上に公開している物件は多くはありません。
そのため、気になる物件があれば直接お問合せ頂くのがおすすめです。「複数のオフィスを比較検討したい!」「自社に最適なオフィスを探したい!」とお考えの際は、三菱地所リアルエステートサービスの賃貸オフィス検索サイトをぜひご利用ください。希望条件に合った候補物件の選定も行いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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各契約方法のメリット・デメリットは?
ここからは、借主視点で各契約方法のメリット・デメリットを解説します。自社の業種や目的に合わせて、契約形態を選ぶことが重要です。
■普通建物賃貸借契約
メリット
普通建物賃貸借契約は、借主が希望する限り原則更新されるため、長期的に入居できる点がメリットで、契約更新の手続きもスムーズです。
デメリット
賃料は、基本的に相場並みで、定期建物賃貸借契約の物件と比べて高く設定されているケースがあります。 また、都心などに所在する需要の高い事業用のオフィスビルなどは、普通建物賃貸借契約で募集されている物件が少ないため、希望条件によっては選択肢が少なくなります。
■定期建物賃貸借契約
メリット
定期建物賃貸借契約の大きな利点は、賃料が普通建物賃貸借契約の物件と比べて安い傾向にある点です。加えて、定期建物賃貸借契約は、契約内容によっては1年未満といった短期で借りられるのも魅力です。また、賃料増減額請求権を借主・貸主共に排除する、などの特約を結ぶことで、契約期間中の賃料改定がなくなるため、予算を立てやすいというメリットがあります。
デメリット
定期建物賃貸借契約の場合、いくら物件が気に入ったとしても、更新はありません。また、契約終了後に再契約するためには、貸主にも再契約の意思があり、さらに契約条件の合意も必要です。また、定期建物賃貸借契約が満了となる場合、貸主からの告知が1年前~6ヶ月前の間に行われますが、この期間中に借主は次の移転先を見つける必要があります。
【ケーススタディ】実際にはどのような契約形態が多いのか
賃貸オフィスビルマーケットにおいて、実際にはどちらの契約形態が採用されているかについて解説します。
■需要の高い都心の大型オフィスビルなど
アクセスが良く、設備も最新で、需要の高い大型オフィスビルなどは定期建物賃貸借契約であることが多いです。実際には、貸主と借主の双方が賃料増減額請求権を排除する特約を結び、賃料改定を行わず、3年や5年の期間で契約を結ぶケースが多く見られます。
借主側は、契約期間中の賃料改定が無いため、例えば契約期間中にマーケットの平均募集賃料が上昇しても、契約時の安い賃料のまま需要の高いエリアのオフィスを利用することができるというメリットもあります。
実際には契約期間終了後に再契約をするパターンが多いですが、その際に貸主側からマーケットに見合った賃貸条件が提示されることもあります。
まとめ
今回は、定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いについて解説をしました。オフィスを借りる際には、契約形態の違いを正しく理解しておくことが大切です。特に、定期建物賃貸借契約の物件は、契約終期が決まっており、取り壊しが決まっている場合もあります。その際には、再契約ができない可能性も少なくありません。自社の事業がどちらの契約形態にマッチするかをよく検討した後に契約することが重要です。
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