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オフィスビルの「空室率」とは?オフィスマーケットを読み解くキーワードについて解説

「空室率」という用語は、アパートやマンションなどの賃貸不動産においてどのぐらい空室があるのかという指標で使われることが多いですが、オフィスビルのマーケットを読み解く際にも「空室率」が一つの指標となることをご存知でしょうか。この記事では、オフィスビルの空室率とは何なのか、というところから、空室率の計算方法、空室率グラフの読み解き方まで詳しく解説します。

オフィス移転を考え始めた方の中には、「どのタイミングでオフィス移転をするのが良いか」、「賃料を今より抑えられるエリアはどこか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで重要な指標となるのが「オフィスビルの空室率」です。各エリアのマーケット状況を把握することで、適切な移転タイミングや、各エリアの賃料相場などがわかります。本記事では、空室率の考え方や計算方法、グラフの読み解き方について詳しく解説します。

空室率とは何か?

「空室率」とは簡単に言うと、賃貸物件の中で空室が占める割合のことです。ただし、その対象物件によって計算方法や読み解き方が多少異なります。
例えば、賃貸アパートやマンションの空室率は、一般的には空室数を物件の総戸数で割る方法(時点空室率)や、空室数だけではなく空室だった期間も計算して空室率を算出する方法(稼働空室率)などがあります。不動産投資などを考えている方にとっては、投資物件の空室率が適正であるかどうかが重要な指標となります。

では、対象物件が賃貸オフィスビルの場合はどうでしょうか。一般的にオフィスビルの空室率を算出する際は、空室数ではなく床面積を用いて、賃貸可能な床面積に対する空室の床面積の割合を求めます。この計算で算出される空室率から賃貸オフィスの需給バランスを把握することが出来るため、オフィス移転のタイミングや移転先エリアを決める際などに役立ちます。この記事では、オフィスビルの空室率について詳しく解説します。

空室率の計算方法

まず、賃貸オフィスビルの空室率の計算方法について紹介します。オフィスビルの空室率は、賃貸可能な床面積(貸床総面積)に対する空室床面積の割合で算出するのが一般的で、計算式は下記のとおりです。

空室率 = 空室床面積/貸床総面積 × 100


例えば、貸床総面積が10,000㎡のオフィスビルで空室床面積が1,000㎡であれば、空室率は10%となります。

(1,000 ÷ 10,000)× 100 = 10%


この計算式を用いて、エリア全体のオフィスビルの空室率を算出することも可能です。例えば、三菱地所リアルエステートサービスが毎月公開している「東京主要7区 オフィスビル空室率・平均募集賃料調査」では、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区・品川区・江東区の主要大型ビル(延床3,000坪以上)の空室率・募集賃料を調査しています。

オフィスビルの空室率については、様々な企業が調査を行っていますがその対象となるビルやエリアに違いがあります。定常的に空室率を観測するためには、観測対象を1つの企業に絞って公開されているレポートを参照することをおすすめします。


▽三菱地所リアルエステートサービスが毎月公開している空室率レポートはこちら
※調査対象ビルは当社社内データに登録されているビル、且つ、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、品川区、江東区に調査時点で竣工している延床3,000坪以上のテナントビルを対象としております。
大型オフィスビル空室率情報一覧

空室率が示す市場の意味

空室率はマーケットの需給バランスを示す重要な指標です。ここからは、空室率が高い場合・低い場合、マーケットの状況をどう読み解くかについて解説します。

■賃貸オフィスビルの需給バランス
空室率が高い場合、そのエリアの賃貸オフィスビルの供給が需要を上回っていることを意味し、空室率が低い場合は需要が供給を上回っていることを意味します。 例えば、2024年8月末時点の東京主要7区のオフィスビル空室率は5.30%で、前年同月比で1.74%低下しています。これは、経済回復や企業の活動再開により、賃貸オフィスビル市場が安定しつつあることを表します。需給バランスが整うことで、賃料の変動が抑えられるため、移転費用や事業計画の見通しが立てやすくなるでしょう。また、空室率の適正値は一般的に約3~5%と言われており、この数値が保たれている時期は、需要と供給のバランスが取れている状態です。
参考:三菱地所リアルエステートサービス/【2024年8月末時点】東京主要7区 オフィスビル空室率・平均募集賃料調査

■空室率が高い場合と低い場合のマーケット状況
空室率が高いエリアは、物件の選択肢が豊富で賃料が比較的抑えられる傾向にあります。入居テナントにとっては交渉の余地が広がり、より良い条件で契約を結ぶことができる可能性が高いでしょう。
逆に、空室率が低いエリアでは、需要が高いため平均募集賃料が上昇する傾向にあります。例えば、東京主要5区の中でも千代田区などは常に空室率が低く、賃料も高めです。

空室率の変動要因

空室率は社会情勢などにより変動することが多い指標です。ここでは、空室率に影響を与える主な要因について説明します。

■社会情勢による影響
【空室率が下がる要因】
経済が好調な時期にはオフィス需要が高まる傾向にあります。例えば、業績が好調な企業は事業を拡大するために、より生産性が高く効率的な職場環境を確保しようと、グレードの高いビルや、交通利便性の高い立地に移転する傾向が見られます。昨今は人材不足が続いており、従業員満足度の高いオフィスを用意することが優秀な人材の確保につながると考えられていることも理由の一つです。他にも、好景気により新規参入企業が増加するなど様々な要因でオフィス需要が高まり、その結果空室率が低下します。

【空室率が上がる要因】
逆に、不況時には企業の事業縮小や倒産が増えることで、空室率が上昇する傾向にあります。さらに、空室率が上昇する要因となった社会情勢の変化といえば「コロナ禍」が記憶に新しいでしょう。コロナ禍によりリモートワークが普及し、オフィス需要が大幅に減少しました。その結果、多くの都市で空室率が急上昇。コロナ禍がオフィスマーケットへ影響を与えていた2022年7月末時点の、東京主要7区における主要大型ビルの空室率は7.31%まで上昇しました。

社会情勢が空室率や平均募集賃料に与える影響として、下記の図をご覧ください。

リーマンショック後には、空室率が7.64%まで上昇しましたが、東京オリンピック開催決定により不動産市場が活気づき、空室率は大幅に低下しました。一時は約1%台まで低下しましたが、コロナ禍の緊急事態宣言により急激に空室率が上昇します。また、平均募集賃料は、空室率の後を追うように上昇・低下していることがわかります。

このように、空室率・平均募集賃料は社会情勢に大きく影響を受けることから、移転を計画する際などは適切にエリアのマーケットを読み取り、社会情勢についても考慮することが重要です。

■新築オフィスビル竣工等による影響
社会情勢による影響以外にも、エリア内の賃貸オフィスビルの契約状況や、新規オフィスビルの竣工などにより空室率は変動します。主な要因は、下記の通りです。

【空室率が下がる要因】
・エリア内の賃貸オフィスビルの空室が解消した など

【空室率が上がる要因】
・新築大規模オフィスビルが募集床を残したまま竣工した
・エリア内の大規模オフィスビルで解約事例があった など

■平均募集賃料の変動要因
空室率の変動は、賃貸オフィスビルの平均募集賃料にも影響を与えます。ここでは、その要因の一例を紹介します。

【平均募集賃料が上がる要因】
・賃料価格帯が高いビルが増えた
・賃料価格帯が低いビルの募集が終了した(空室が解消した)など

【平均募集賃料が下がる要因】
・賃料価格帯が低いビルの募集が増えた
・賃料価格帯が高いビルの募集が終了した(空室が解消した) など

■空室率からわかること
エリア毎のオフィスビル空室率から読み取れる情報は様々ですが、主なポイントは下記の通りです。

・エリアの人気度
年間を通して空室率が低いエリアは人気が高く、多くの企業がオフィスを置いている場所だと言えるでしょう。例えば、東京都心の主要エリアでは空室率が低く、賃料も高めとなる傾向があります。このようなエリアにオフィスを構えることで、企業のブランド力や利便性が向上する可能性があると言えるでしょう。

・賃料相場から、事業計画や移転計画の見通しが立てられる
空室率から現在の賃料相場を予測できます。例えば、港区や新宿区では空室率が下落傾向にあり、賃料も上昇しています。人気エリアのため、移転を検討する際には、マーケット状況を慎重に観測する必要があるでしょう。また、空室率が高まり、賃料相場が低下し始めたタイミングはオフィス移転の好機とも言えるでしょう。新築オフィスビルの大量供給や、それに伴う解約などにより空室率は大きく変化します。移転希望エリアがある場合は、そのエリアの空室率状況を把握することが重要です。

・需要と供給のバランス
エリアごとのオフィスビルの需要と供給のバランスを知ることで、長期的な視点でリスクを回避できます。例えば、供給過多により空室率が上昇しているエリアでは、賃料交渉の余地があるかもしれません。2024年には一部エリアで新規供給が増加する見込みで、空室率に影響を与えるとされています。これにより、将来的な賃料動向や空室リスクを予測しやすくなるでしょう。

空室率に関連する用語

ここでは、空室率に関連する用語について解説します。

■二次空室とは
新築オフィスビルが竣工し、テナント企業が移転する際に旧入居ビルに空きが出る現象を「二次空室」と呼びます。例えば、最新の設備を備えた新築オフィスビルが大量供給されると、移転ニーズが増えて、エリア内に二次空室が増えます。設備等が古く、不便な立地のオフィスビルではこの二次空室を解消するのは困難です。特に東京都心部での新築オフィスビルの供給が活発化しており、築年数の経過したビルのオーナーは競争力を維持するためにリノベーションなどを検討する必要性が高まっています。

■潜在空室率とは

上図を使って解説すると、ビルAに入居中の企業が、ビルAに対して解約予告を行った時点でビルAには「潜在的な空室期間」が発生します。解約予告時点からビルAの新テナント募集は始まりますが、契約終了までは前テナントが入居しているため完全な「空室」としてはカウントされません。さらに、ビルBでも契約が始めるため「空室」とはカウントされず、マーケット上では一時的に「空室」が少ない状況になり、空室率が低下します。(ビルAの潜在的な空室期間が終わり、契約が終了した時点で、空室率は上がる)

この「潜在的な空室期間」を加味した上での空室率を算出したものが「潜在空室率」で、空室床面積ではなく募集床面積で算出します。

空室率から見る、東京主要エリアのマーケット情報

ここでは、三菱地所リアルエステートサービスが毎月公開している「大型オフィスビル空室率」の数値を基に、東京の主要エリアをいくつかピックアップして、マーケット情報を解説します。


▽三菱地所リアルエステートサービスが毎月公開している空室率レポートはこちら
※調査対象ビルは当社社内データに登録されているビル、且つ、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、品川区、江東区に調査時点で竣工している延床3,000坪以上のテナントビルを対象としております。(2024年9月末時点の情報です)
大型オフィスビル空室率情報一覧

■千代田区・中央区エリア

丸の内・大手町・有楽町・内幸町
大企業の本社が数多く集積しており、日本を代表するビジネスエリアの一つです。2000年代以降はビルの建て替えが順次行われているため、新築大型ビルの供給が多くなっています。近年ではスタートアップ企業が進出するなど、多様な企業からのニーズを背景に、オフィスマーケットは安定していると言えるでしょう。

神田・秋葉原・御茶ノ水駅周辺
中小ビルから大型ビルまで混在しているマーケットですが、近年は再開発により大型オフィスビルが増加傾向にあります。東京駅周辺エリアと比べ賃料が多少割安なこともあり、テナントニーズが高いエリアです。

八重洲・京橋・日本橋
近年、複数の再開発計画が進行しており新築大型ビルの供給が多いエリアです。東京駅の東側に位置し、アクセスが便利な立地であることから、竣工後のオフィスビルには他エリアから転入する企業が目立ちます。直近の空室率は低水準ですが今後竣工を予定しているオフィスビルの動向次第で変動する可能性があるため注視が必要です。

日本橋本町・室町・本石町
日本橋再生計画のもと2000年代以降、再開発が継続的に行われており、築浅大型オフィスビルが多数立地しているのがこのエリアの特徴です。空室率も低水準で推移しており強いテナントニーズがうかがえます。

銀座
このエリアは中小規模のオフィスビルが多く集積しています。商業エリアとしての色が強く、他のオフィスエリアと比べて大型のオフィスビルが少ないのが特徴です。したがって、大型オフィスビルの動向次第でエリアの空室率や平均募集賃料が大きく変動する可能性があります。


■港区・品川区エリア

芝・三田・田町・浜松町
空港や新幹線アクセスに便利な立地で、全国に拠点を持つ企業のニーズが多いエリアです。近年は駅周辺の再開発が盛んに行われ、新築オフィスビルの供給が多かったため空室率は高水準で推移していました。今後も新築オフィスビルの供給が継続する予定のためマーケット動向には注視が必要です。

新橋・虎ノ門・汐留
虎ノ門エリアで行われた再開発を中心に近隣でも複数の新築オフィスビルが供給されています。外資系企業が数多く集積していることもあり、セキュリティレベルやBCP対策の点でも高水準のビルが多く、港区の中では高賃料で推移している傾向にあります。

品川駅周辺
新幹線、空港へのアクセスに優れていることから全国に拠点を持つ企業からのニーズが多いエリアです。近年、大型のオフィス開発は見られませんが、隣駅の高輪ゲートウェイ駅で行われている大規模開発や品川駅高輪口で今後予定されている再開発事業など、新たなオフィスマーケットの形成が期待されています。

六本木・赤坂
本エリアは大型ビルが林立しスタートアップ企業や情報通信企業、コンサルティング企業など多様な企業がオフィスを構えています。近年は再開発事業が複数進行しており今後更なる企業集積が期待されています。また、国際水準のラグジュアリーホテルや空港へのリムジンバス停留所などを備えたビルも立地し外資系企業からの人気も高いエリアです。


▽他エリアの空室率・平均募集賃料グラフについては、各エリアの特集記事でご確認ください。
エリア・街に関する特集記事一覧はこちら

まとめ

三菱地所リアルエステートサービスでは、東京主要7区の空室率・平均募集賃料情報を毎月提供しています。空室率などの推移を定期的にチェックすることで、各エリアのオフィスビル需給バランスを把握できるため、オフィス移転のタイミングを検討する際などに役立ちます。

また、三菱地所リアルエステートサービスでは、オフィス移転に関する業務をトータルサポートしております。現在のオフィスの課題発見から、働き方の見直し、オフィスの適正面積算出など、多面的にオフィス移転をサポートしますので、お気軽にお問い合わせください。また、三菱地所リアルエステートサービスの賃貸オフィス検索サイトでは、賃料・最寄駅からの所要時間・面積など、こだわり条件を設定して物件をお探しいただけます。

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