オフィス移転時には様々な検討事項がありますが、中でも「賃貸面積」は重要な要素の一つです。一般的に、賃貸オフィスを契約する際には「ネット面積」と「グロス面積」という二つの算定方法があり、賃貸借契約締結前にその違いを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、この2つの違いを分かりやすく解説します。
賃貸面積とは?契約の基準となる面積
賃貸面積とは賃貸借契約で締結する専有面積のことです。この面積には、「ネット面積」と「グロス面積」の2種類があり、どちらを採用するかで賃料の算出方法などが変わります。
また、賃貸面積を算出する際、通常は壁芯(壁や柱の厚みの中心線に囲まれた部分を測った面積)を基準に測りますが、内法(壁や柱の内側から測った面積)を採用するケースもあり、同じ「100㎡」でも壁芯か内法かによって、実際に利用できるスペースに差異が生じます。壁芯面積は内法面積よりも契約面積が大きくなるのが一般的です。
ネット面積とグロス面積の基本を理解しよう
オフィスを借りる際、面積の表示には「ネット面積」と「グロス面積」の2種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。共用部の使い方やオフィスのレイアウト、コストパフォーマンスなどを事前に検討することで、最適な契約を締結することができます。

■ネット面積とは? 実際に賃借するオフィススペースのみの面積
ネット面積は、実際に専有(賃借)する範囲のみを計測した面積です。通常は壁芯で測定しますが、物件によっては内法を採用している場合もあります。共用部を含まないため、契約面積と実使用面積が一致しており、移転後のレイアウト変更なども計画しやすく、坪単価換算でのギャップが小さいというメリットがあります。
ただし、壁芯と内法のどちらが基準なのかによって、同じ「ネット契約」でも数十センチ単位の差が生じることは覚えておきましょう。設備や配線スペースによっては、この差が業務効率や収納計画に影響を及ぼす可能性もあります。
1フロアを区画ごとに分割して契約する大規模ビルでは、「ネット契約」が一般的です。
■グロス面積とは? 共用部を含む1フロア全体の面積
グロス面積は、専有部分に加えて廊下・エレベーターホール・給湯室などの共用部の一部を含めた1フロアの面積を指します。そのため、同じ面積表示でも、グロス面積の場合、実際に執務スペースとして使用できる面積はネット面積よりも狭くなります。例えば、「グロス面積:50坪」と記載があっても、そのうち10坪分が共用部の場合、オフィスとして使用可能な面積は実質40坪程度です。
グロス面積表示は、一見坪単価が安い印象を与えるため、物件広告などではこの点が強調されるケースも珍しくありません。しかし、実際に割安かどうかは「オフィスとして使用できる面積あたりの実質単価」で比較しなければ判断できないため、契約前には賃料と専有面積を確認することが大切です。
1フロア1テナントを想定しているオフィスビルは、「グロス契約」が一般的です。
ネット面積とグロス面積の違いを比較
ここでは、ネット面積とグロス面積を比較し、契約時にどのような点に注意すべきかを紹介します。
下表の通り、契約面積に含まれる範囲や賃料の算定方法、レイアウトのしやすさなどに違いがあります。両者に優劣はなく、企業のオフィス利用方針やコスト重視度合いによって最適解が変わるものです。最終的には、実際に何坪あれば必要な席数・会議室を確保できるのか、共用部をどの程度活用するのかを明確にし、賃料と利便性を総合的に判断しましょう。

■賃料算定方法について
ネット契約では、賃料は実際にオフィスとして使用する「ネット面積」に基づいて算出されます。つまり、共用部を除いた専有面積に坪単価を乗じて算出します。例えば、ネット面積が100坪、坪単価が1万円の場合、賃料は100万円となります。ネット契約では、使用面積に対する賃料が明確なため、コスト管理が比較的容易です。
対して、グロス契約では、賃料は共用部を含む「グロス面積」に基づいて算出されます。つまり、専有面積に加えて、廊下、エレベーターホール、トイレ、給湯室などの共用部の面積も賃料に含まれます。例えば、グロス面積が125坪、坪単価が8,000円の場合、賃料は100万円となり、坪単価がネット契約に比べて割安に見えますが、実際にオフィスとして使用できる面積はグロス面積よりも狭いため、実質的なコストパフォーマンスは「オフィスとして使用できる面積あたりの実質単価」で比較検討する必要があります。また、共用部の面積比率は物件によって異なるため、契約前に必ず確認することが重要です。

オフィス契約時に確認すべきポイント
ネット面積とグロス面積の違いを理解したうえで、実際の契約時にどのような点をチェックすれば良いかを紹介します。ここでは主に、面積表示の確認方法、賃料の算定方法、レイアウト計画、共用部の利用条件について解説します。
1.面積表示がネットかグロスかを確認する
オフィス移転を検討する際は、まず現在入居中のオフィスが「ネット契約」か「グロス契約」かを確認することが重要です。契約形態によって実際に利用可能な執務スペースが異なるためです。また、同様に移転先の物件についてもネット契約かグロス契約かを事前に確認することが重要です。
例えば、「現在のオフィスは60坪で少し手狭になってきたため、移転先は少し広めの80坪で探そう」と考えているとします。現在のオフィスが「ネット契約で60坪」の場合に、候補先のオフィスが「グロス契約で80坪」だとしたら、実際に利用できる執務スペースが想定より狭くなり、60坪程度になる可能性があります。結果として、拡張移転したつもりが、実際には思ったほど広くなっておらず、期待を下回る状況になるケースがよくあります。
このようなトラブルを避けるためには、移転前に現在のオフィスと移転先候補の契約形態(ネット契約かグロス契約か)を確認し、それぞれの実質的な執務スペースを正確に把握しておくことが大切です。
物件資料や募集要項にはネット面積かグロス面積かは明記されていないことが多いため、曖昧なまま交渉を進めると、「実は共用部の面積が含まれていた」「想定より執務エリアが狭い」といったトラブルになりかねません。
重要事項説明書には専有面積と契約面積が記載されているので、契約前に必ず確認しましょう。不明な点は、仲介担当者やオーナーに直接問合せることが大切です。
2.賃料計算と管理費の内訳を把握する
グロス面積ベースで賃料が設定されている場合、一見坪単価が安く感じられても、実際のオフィスとして使用する専有部あたりの賃料に換算すると割高になる可能性があります。一方、ネット面積契約であっても、共用部関連の費用(管理費や光熱費)がどのように算定されるかで総コストが変わるため、合計額で比較することが重要です。
エレベーターの保守費やビルの清掃費用などがどのように按分されるかで、月々の支払い総額は変わります。大規模オフィスビルでは「共益費」が個別に設定されるケースもあるため、事前に詳細を確認しましょう。
3.レイアウトや席数など原寸大でイメージを確認する
ネット面積・グロス面積どちらの場合でも、面積の数字だけで判断せず、必ず内覧を行いましょう。内覧では、机や椅子の配置シミュレーション、会議室や執務スペースの人員収容人数の確認など、具体的な使用シーンを原寸大で確認することが重要です。
特にグロス契約の場合、図面上の面積より実際の専有部分が狭いと感じるケースもあります。内覧時にメジャーやレーザー測定器を持参し、壁から壁までの寸法を測ることで、実際の使用可能面積をより正確に把握できます。例えば、従業員一人あたりに必要なスペースを事前に計算しておき、内覧時に実際の面積と比較することで、快適な執務環境を実現できるかどうかの判断材料になります。
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4.共用部の利用条件と設備を把握する
ラウンジや会議室、休憩スペースなど、共用部が充実しているビルでは、執務スペースの面積を効率的に活用できる可能性があります。共用部を有効に活用することで、オフィス内(契約面積内)に専用のリフレッシュスペースや交流スペースを設ける必要がなくなり、限られた執務スペースをそのまま執務用途に集中させることができます。これにより、たとえ執務スペースの物理的な面積が小さくても、十分な働きやすさを確保することが可能です。
ただし、共用部の利用条件については事前に注意して確認することが重要です。例えば、共用の会議室やラウンジを利用する際に、時間帯の制限や予約制の有無、費用負担などの条件が自社の業務形態と合わない場合、結果的に十分に活用できない可能性があります。そのため、ビル選びの際には、共用部の充実度だけでなく、管理や使用ルールについても細かく確認することをお勧めします。
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ネット面積・グロス面積の違いを理解し、最適なオフィス選びを
ネット面積とグロス面積の違いは、単なる算定方法の違いにとどまらず、実際の使い勝手やコストパフォーマンスにも大きく影響します。とりわけ、オフィス移転には多大なコストと労力がかかるため、契約後に「想定より狭い」「予算を超過した」といった事態を避けるためにも、面積表示の違いを明確に理解しておきましょう。
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