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労働安全衛生法とオフィス環境:快適で安全な職場を目指して

職場の安全と健康を守るために知っておきたい労働安全衛生法。この記事では、基礎知識から最新の法改正までを丁寧に解説し、オフィスでの具体的な実践方法や対策を紹介します。

労働安全衛生法は、働く人々の安全と健康を守るために不可欠な法律です。事業者には、健康診断の実施やリスクアセスメント、安全教育などが義務付けられています。本記事では、法の基礎知識から最新の改正内容、オフィスでの具体的な取り組み例までをわかりやすく解説します。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、職場環境の安全と労働者の健康を守るために制定された法律です。この法律は、事業者に対して従業員の健康診断の提供、リスクアセスメントの実施、安全教育の徹底などを義務付けており、目的は「労働災害の防止」と「快適な労働環境の確保」です。また、常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、ストレスチェックや衛生管理者の選任が義務化されており、心理的な配慮も重要な要素となっています。
このように、労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を総合的に守るための基盤となる法律であり、事業者にはこれらの義務を果たすことで、快適で安全な労働環境を提供する責任があります。

■労働安全衛生法と労働基準法の違い
労働関連の法律で有名なものに「労働基準法」があります。労働安全衛生法はこれとよく比較されます。それぞれの違いを紹介します。

1.立法目的
労働安全衛生法は、労働者の健康と安全を確保し、職場環境の改善を図ることを目的としています。この法律は、職場での労働者の安全を守るための具体的な措置や基準を設定しています。一方、労働基準法は、労働条件の最低基準を定め、労働者の権利を守ることを目的としています。この法律は、労働時間、賃金、休憩など、労働条件全般にわたる最低基準を規定しています。

2.法律が扱う内容
労働安全衛生法は、作業環境や設備の安全性、健康診断、教育の実施などを扱います。対して、労働基準法は、労働時間、休憩、賃金、解雇など、労働契約に関する基本的なルールを扱います。

3. 主な規定対象と具体的な義務
労働安全衛生法の主な規定対象は事業者(雇用者)であり、職場内での安全衛生管理体制の構築やリスクアセスメントの実施が義務付けられています。具体的には、事業者が職場の危険性を評価し、適切な対策を講じることが求められます。一方、労働基準法の主な規定対象は事業者(雇用者)および労働者であり、時間外労働の制限や休日の確保、割増賃金の支払いなどが義務付けられています。これにより、労働者が適切な労働条件の下で働くことが保証されます。

このように、労働安全衛生法と労働基準法は、それぞれ異なる側面を有しながらも、どちらも「労働者の保護」を目的としており、相互に補完し合う関係にあります。労働安全衛生法が職場の安全と健康を守るための具体的なルールを提供し、労働基準法が労働条件の最低基準を設定することで、包括的に労働者の権利と安全を守っています。

■労働安全衛生法・労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則・事務所衛生基準規則について
労働安全衛生法と労働基準法の違いを理解した上で、次に「労働安全衛生法施行令」「労働安全衛生規則」「事務所衛生基準規則」について詳しく解説します。これらは労働安全衛生法を具体的に実施するための詳細な指針を提供するもので、それぞれ異なる役割を担っています。

労働安全衛生法は基本的な枠組みを定め、労働安全衛生法施行令はその具体的な実施方法や基準を示し、労働安全衛生規則・事務所衛生基準規則は施行令を詳細に運用するための具体的な指針を提供します。

労働安全衛生法施行令
労働安全衛生法施行令は、内閣が労働安全衛生法の細かいルールを定める政令です。施行令は、労働安全衛生法の適用範囲や罰則を明確にし、特定の機械や設備の基準を定めています。例えば、工場における機械設備の安全基準や化学物質の取り扱い基準などが施行令によって規定されています。ただし、施行令は法律より具体的な内容を示しますが、詳細な作業手順までは定めていません。

労働安全衛生規則
労働安全衛生規則は、工場や建設現場などを含む幅広い作業現場を対象としており、作業手順や防護措置、資格要件などを詳細に規定しています。この規則には、高所作業での安全帯の使用方法、溶接作業時の防護具の着用基準、さらにはフォークリフトの操作資格要件などが含まれています。また、有害物質の取り扱いや作業環境の管理など、具体的なリスク対策も定められています。

事務所衛生基準規則
事務所衛生基準規則は、主にオフィスや事務所の労働環境管理に特化した規則です。この規則は、事務所内の温度や湿度、換気などの基準を定めており、労働者が快適で健康的な環境で働けることを目的としています。例えば、事務所の適切な温度管理や空気質の維持、照度の基準などが規定されています。

このように、労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則は、異なる作業環境に対応するための詳細な基準を提供し、それぞれの環境における労働者の安全と健康を守るために重要な役割を果たしています。労働安全衛生規則が危険作業現場の安全管理を強化するのに対し、事務所衛生基準規則は事務所環境の快適性と健康管理を重視しています。

オフィス環境における重要なポイント

労働安全衛生法は、オフィス環境においても労働者の健康と安全を確保するための基準を設けています。特に、事務所衛生基準規則に基づく作業環境管理は、オフィスで働く労働者が快適で健康的な環境で作業するための具体的な指針を提供しています。以下に、オフィス環境における重要なポイントを大きく3つのカテゴリーに分類し、それぞれを解説します。

■快適な職場環境の整備
オフィス内の環境や設備を適切に管理することは、労働者の快適性と健康に直結します。具体的には以下の項目が含まれます。

温度と湿度の管理
事務所内の温度を夏季であれば17~28℃、冬季であれば17~20℃に保つための空調設備の利用。湿度を40~70%の範囲内に保つための加湿器や除湿器の使用。

換気と空気質の管理
室内の二酸化炭素濃度や有害物質の濃度を管理するために、定期的な換気の実施と換気扇の使用。空気清浄機の設置とフィルターの定期交換。

照度と騒音の管理
適切な照度(300ルクス以上)を確保するための照明器具の設置と点検。騒音レベルを50デシベル以下に抑えるための吸音材の使用や騒音源の隔離。

清潔の維持と衛生設備
事務所内の清潔さを保つための毎日の清掃とゴミの適切な処理。飲料水の提供、トイレや手洗い場の清潔さの維持、喫煙所の適切な管理。

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■労働者の健康管理(身体的・心理的)
労働者の健康を総合的に管理することは、作業効率の向上と労働者の満足度向上に寄与します。具体的には以下の項目が含まれます。

作業姿勢と作業環境の管理
エルゴノミクスに基づいた調整可能な椅子と机の提供。適切な姿勢を保つためのガイドラインの作成と周知。パソコン使用時の目の健康を守るためのモニタースタンドの提供と画面設定の推奨。

化学物質の管理
清掃用やメンテナンス用に使用する化学物質は、安全データシート(SDS)に基づいて適切に保管し、使用時には換気を徹底。労働者に保護具を着用させる。

メンタルヘルス管理
定期的なストレスチェックの実施とカウンセリングサービスの提供。メンタルヘルスに関する研修やワークショップの開催。

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■安全管理と防災設備
安全管理と防災設備の適切な配置と管理は、緊急時の対応を迅速にするために重要です。具体的には以下の項目が含まれます。

非常口と避難経路の確保
非常口の明確な表示と避難経路の障害物の排除。定期的な避難訓練の実施。

防災設備の設置と点検
火災報知器や消火器の適切な設置と定期的な点検。避難経路案内図の掲示。

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2024年度の労働安全衛生法の改正内容

2024年度の労働安全衛生法の改正内容は、主に化学物質の管理強化を目的としています。改正内容の中からいくつか抜粋して紹介します。

■化学物質に関する管理体制の強化
リスクアセスメント対象の化学物質を扱う事業場は、化学物質管理者と保護具着用管理責任者を選任することが義務付けられます。これにより、現場での化学物質取り扱いに関する安全性が一層強化されることが期待されます。

■リスクアセスメントに基づく自律的な化学物質管理の強化
リスクアセスメント結果の記録作成と保存が義務付けられます。労働災害発生時には、労働基準監督署長が改善指示を行い、専門家の助言を受けた上で改善計画を作成・実施する必要があります。

■情報の伝達強化
SDS(安全データシート)の通知方法が柔軟化され、電子メールやQRコードでの通知が可能になります。また、SDSに記載されている「人体に及ぼす作用」について、定期的な確認と更新が義務化されます。これにより、最新の情報が迅速かつ正確に伝達されることが期待されます。

労働安全衛生法違反時の罰則と注意点

労働安全衛生法に違反すると、事業者には厳しい罰則が科されます。ここでは、法令違反時の罰則と注意しておきたいポイントについて紹介します。

■罰則の概要
労働安全衛生法に違反した場合の罰則は、違反の種類や程度によって異なります。事業主や管理者が罰則に問われることが多く、重大な労働災害を引き起こした場合には、最大6カ月の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。また、安全衛生管理体制の不備やリスクアセスメントの未実施、安全データシート(SDS)の不備などに対しても罰金が科されることがあります。特に、労働基準監督署長の指示に従わなかった場合や同じ違反行為を繰り返した場合には、より重い罰則が科される可能性があります。

■よく見られる違反例
労働安全衛生法違反の中でよく見られるものには、以下のような例があります。

健康診断やストレスチェックの未実施
健康診断やストレスチェックの実施は法的に義務付けられていますが、事業者が義務を十分に理解しておらず、計画が不十分な場合に未実施となることがあります。また、ストレスチェックでは適用範囲の誤解が原因になるケースもあります。

作業主任者や安全管理者の未選任
特定の業種や規模の事業場では作業主任者や安全管理者の選任が必要です。しかし、事業者が基準を理解していない、または適任者が不足していることが原因で違反が発生します。

安全衛生教育やリスクアセスメントの未実施
安全衛生教育やリスクアセスメントは職場の安全管理において欠かせない要素です。しかし、教育の重要性を軽視したり、適切な手法が整備されていなかったりすることが、未実施の主な原因となっています。特に、忙しい時期には人手が不足し、安全教育やリスクアセスメントの優先順位が低下するケースも見られます。

労働安全衛生法の重要性を理解し職場環境の向上を目指そう

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るだけでなく、企業の信頼性や業務の効率化にも役立つ法律です。法令を守り、職場環境を整えることで、従業員が安心して働ける環境が作れます。オフィス担当者は、最新の法改正を理解し、適切な管理体制を導入しましょう。


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