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ファシリティマネジメントとは? 企業競争力を高める新たなアプローチ

デジタル技術とテレワークの普及が進む中、企業の競争力を支えるために重要な「ファシリティマネジメント(FM)」の役割が一層注目されています。FMとは、オフィスや施設の管理を単なる維持管理にとどまらず、経営戦略と連動させて行う手法です。本記事では、FMの基本概念からその必要性、さらには先進企業の成功事例までをわかりやすく解説します。

デジタル技術の進化やテレワークの普及により、オフィスに求められる役割は大きく変化しています。その中で企業の競争力を高めるために不可欠なのが、「ファシリティマネジメント(FM)」です。従来の施設管理が建物や設備の維持管理を主な目的としていたのに対し、ファシリティマネジメントは経営戦略と連動した包括的なアプローチを取ります。環境への配慮やコスト削減はもちろん、従業員の業務効率や生産性の向上まで、幅広い視点で施設の活用を考えるのです。
本記事では、ファシリティマネジメントの基本概念から、先進企業の具体的な取り組み事例、そして将来の展望まで、戦略的施設運営の全体像について解説します。

ファシリティマネジメントの定義と重要性

企業経営において、施設資産の戦略的な管理と活用の重要性はますます高まっています。本記事では、ファシリティマネジメントの基本概念から実務上の重要性までを詳しく解説し、企業の競争力を高めるための具体的な手法も紹介します。

■ファシリティとは?
ファシリティとは、企業活動を支えるあらゆる施設環境を指します。これは、建物や設備といったハード面だけでなく、施設内のサービスや働く環境の整備までを含む広範な概念です。具体的には、オフィスビルや工場などの建物、設備機器、什器備品といった「物的資産」に加え、空調や照明などの「環境設備」、さらには清掃サービスや食堂の運営などの「施設内サービス」も含まれます。さらに、「土地」や「インフラ」、ホスピタリティなどの「運用サービス」までがファシリティの範疇に入ります。
ファシリティは、人材、資金、情報に次いで「第4の経営基盤」として重要視されています。これは、企業活動において欠かせない要素であり、経営戦略に大きな影響を与える重要な資源として認識されていることを意味します。


■ファシリティマネジメントとは?

ファシリティマネジメントとは、JFMA(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)の定款によると、以下のように定義されています。

企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動


つまり、前段で紹介した多岐にわたる「ファシリティ」を効果的に管理・運営するための総合的な手法のことを指します。企業が保有する物理的な資産を最適に活用し、経営戦略と連動させることで、業務の効率化やコスト削減、環境負荷の低減、そして従業員の働きやすさの向上を目指します。

例えば、オフィスや工場のレイアウトを工夫することで、スペースを効率的に使い、従業員が快適に働ける環境を提供します。また、空調や照明のエネルギー消費を抑えることで、コスト削減と環境保護に貢献します。さらに、セキュリティシステムや防災対策を強化することで、従業員や訪問者の安全を守ります。
ファシリティマネジメントは、単なる施設の維持管理を超えて、企業全体の戦略に深く関わります。これにより、運営コストの削減や環境への配慮、従業員の生産性向上を実現し、企業の競争力を高めます。また、持続可能な社会の実現に企業として貢献することは、対外的な企業の価値やイメージを向上させる効果もあります。これにより、企業は社会的責任を果たしながら、ステークホルダーからの信頼も得ることができます。
引用:JFMA(公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会)ホームページ


■ファシリティマネジメントの実践例
ファシリティの概念には、物理的な資産だけでなく、それらを効果的に管理・運用する「ファシリティマネジメント」の視点が不可欠です。日本では、経営資源としてファシリティ(物)がまだ充分に活用されていない状況にあります。ここに「ファシリティマネジメント」を導入することで、ファシリティが健全に活用され、組織が活性化し、発展することが期待されます。

ここでは、ファシリティマネジメントの実践例を紹介します。ファシリティマネジメントを効果的に行うためには、以下の3つの段階ごとに具体的な行動が求められます。

1. 戦略立案
戦略立案の段階では、まず企業の長期目標やビジョンに基づいて、施設運用計画を策定する必要があります。このためには、施設の現状を詳細に分析し、将来のニーズを予測します。次に、施設の最適な配置やレイアウトを検討し、予算の設定と資金計画を立案することが重要です。また、関連する法規制や環境基準を確認し、これらを遵守する計画を組み込むことも求められます。

2. 運用効率化
運用効率化の段階では、日々の管理業務の効率化と無駄の削減が鍵となります。具体的には、設備管理システムを導入し、エネルギー消費の最適化を図ります。これにより、光熱費や維持管理費などの運営コストを削減することができます。また、定期的なメンテナンスを実施し、リスク管理を徹底することで、突発的な故障や事故を防ぎます。さらに、廃棄物の減量化やリサイクルの推進、業務プロセスの見直しと改善を継続的に行います。

3. 業務改善
業務改善の段階では、清掃や修繕など具体的な実務を継続的に見直し、改善します。例えば、清掃スケジュールを見直して効率化を図ることで、より清潔な環境を維持します。また、設備の定期点検と修繕計画を策定し、適切なタイミングでの修繕を行うことで、設備の寿命を延ばします。さらに、セキュリティ対策を強化し、防災訓練を実施することで、災害や事故に備えた施設の強化を図ります。適切な温度管理や照明設定、レイアウトの改善を行うことで、従業員が快適に働ける環境を提供し、業務効率の向上につなげます。また、省エネルギー性能の高い設備の導入や資源の有効利用を通じて、環境負荷の低減にも貢献します。

ファシリティマネジメントに関連するその他の管理手法との違い

不動産や建物の管理には様々な手法がありますが、それぞれに特徴や目的の違いがあります。ここでは、ファシリティマネジメントと他の管理手法との違いを明確にし、それぞれの役割について説明します。

■ビルマネジメント(BM)との違い
ビルマネジメント(BM)とファシリティマネジメント(FM)は、どちらも施設の管理運営に関わる手法ですが、その目的と範囲に違いがあります。BMは主にビルや建物そのものの運営と管理に焦点を当てています。具体的には、建物の維持保全、設備管理、清掃、セキュリティ、エネルギー管理など、建物の物理的な側面に関する業務を担当します。BMの主な目的は、建物の資産価値を維持し、利用者にとって安全で快適な環境を提供することです。

一方、FMは企業や組織が保有または使用する全ての施設資産およびその利用環境を、経営戦略の視点から総合的に管理・活用する手法です。FMは、単なる施設の維持管理を超えて、企業全体の戦略に深く関わり、運営コストの削減、従業員の生産性向上、環境への配慮など多方面にわたる価値を提供します。FMの主な目的は、施設を通じて企業の経営目標を達成することです。

■プロパティマネジメント(PM)との違い
プロパティマネジメント(PM)とファシリティマネジメント(FM)は、どちらも不動産に関連する管理手法ですが、その目的と視点に違いがあります。PMは不動産の収益性を最大化することを目的とした管理手法です。具体的には、賃貸物件の運営やテナント管理、賃料の設定と回収、マーケティング、リーシング(賃貸契約)など、不動産の収益に直接関わる業務を担当します。PMの主な目的は、不動産オーナーの利益を最大化し、物件の収益性を高めることです。PMが収益向上を最優先とするのに対し、FMは企業全体の価値向上を視野に入れた総合的な管理を行います。

ファシリティマネジメントの目的

ファシリティマネジメントは、企業が所有する施設や設備を計画的かつ効率的に管理・運用し、経営資源としての価値を最大限に引き出すための手法です。その役割は、コスト削減や生産性向上といった経済的な側面だけでなく、従業員が快適に働ける環境づくりや環境負荷の軽減といった社会的な責任も含まれます。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応や、持続可能な経営の基盤としても注目されています。
ここでは、ファシリティマネジメントが果たす4つの主な目的について説明します。

■資産の最適管理
ファシリティマネジメントでは、建物や設備のライフサイクルを詳細に把握し、経年劣化や将来のニーズを考慮した管理計画を策定します。この計画により、資産の価値を維持しつつ、経済的かつ環境に配慮した運用が可能になります。例えば、老朽化した設備を適切なタイミングで更新することで、運用コストの無駄を防ぎ、施設の持続可能性を高めます。
また、不要になった設備や施設の再利用を推進することで、資源の効率的な利用を実現します。これにより、廃棄物の削減と資源の有効利用が図られ、環境負荷を低減することができます。これらの取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任、つかう責任」にも貢献します。

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■運営コストの最小化
施設管理における効率化は、企業にとって重要なコスト削減の手段となります。省エネルギー性能の高い設備を導入することで、光熱費を抑えると同時に、温室効果ガスの排出を削減できます。これにより、気候変動対策にも貢献します。また、ICT(情報通信技術)や自動化技術を活用してエネルギー消費を最適化することで、運用コストを削減しながら環境負荷を低減することも可能です。
例えば、スマートビルディング技術を導入することで、照明や空調の使用をリアルタイムで制御し、エネルギー効率を最大化することができます。また、センサーやIoT(モノのインターネット)技術を活用して設備の状態を監視し、予防保全や適切なメンテナンスを行うことで、設備の寿命を延ばし、修繕費用の削減にもつながります。こうした取り組みは、長期的な視点で企業の持続可能な成長を後押しするだけでなく、環境保護にも寄与します。効率的なエネルギー管理とコスト削減の両立は、企業の競争力を高め、経済的な安定性を確保するための重要な要素となります。

■業務効率と生産性の向上
職場環境の整備は、従業員の作業効率を高めるための重要な要素です。オフィスのレイアウトを見直し、動線を改善することで、業務がスムーズに進む環境を整えることができます。これにより、従業員の負担を軽減し、業務の生産性向上が期待できます。快適な職場環境は、従業員のモチベーションを高めるだけでなく、エネルギーの効率的な利用も促進します。例えば、自然光を最大限に取り入れる設計や、快適な温度・湿度管理を行うことで、従業員がより集中して働ける環境を作り出します。また、静音性の高い設備の導入や音響環境の改善により、集中力を維持しやすいオフィス環境を整えることができます。
さらに、最新のテクノロジーを活用することも重要です。例えば、ICT(情報通信技術)を駆使して、リモートワークやフレキシブルワークスペースを提供することで、従業員の柔軟な働き方をサポートします。これにより、従業員は自分に最適な働く場所と時間を選択でき、効率的に業務を遂行することができます。こうした取り組みを通じて、従業員が安心して集中できる職場を作り出すことができます。結果として、従業員の満足度が向上し、企業全体の業績向上にもつながることでしょう。

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■快適で安全な職場環境の提供
従業員が働きやすい環境を提供することは、企業の持続的な発展にとって欠かせない要素です。空調や照明、家具などの設備を整備し、健康面に配慮した快適な空間を作ることで、従業員の満足度が向上します。例えば、エルゴノミクス(人間工学)に基づいた家具の導入や、適切な温度・湿度管理を行うことで、長時間のデスクワークによる身体的負担を軽減できます。自然光を取り入れる設計や広がりを感じられる空間設計は、心理的な負担の軽減に役立ちます。研究によれば、自然光を利用したオフィス環境は、従業員のストレスを軽減し、集中力を高める効果があります。さらに、植物を配置することでリラックス効果や空気清浄効果も期待できます。
また、休憩スペースや交流の場を設けることも重要です。これにより、従業員同士のコミュニケーションが活性化され、チームワークの向上が期待できるでしょう。リラックスできる休憩エリアやカフェスペースの設置は、仕事への集中力を回復させる効果もあります。こうした取り組みを通じて、従業員が快適で満足できる職場環境を提供することは、企業の成長と持続可能な発展に寄与します。従業員の幸福度が高まることで、企業全体のパフォーマンス向上が期待できます。

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ファシリティマネジメントの事例

近年、多くの企業がファシリティマネジメントを通じて、働き方改革や環境配慮、コスト削減などの成果を上げています。ここでは、その具体的な取り組みと成果の事例を紹介します。

■西日本電信電話株式会社:NTT西日本のFM戦略~新本社PJを通じた新たな挑戦~(2023年受賞)
今回のプロジェクトでは、本社機能の拠点集約化によるコスト削減、市街地環境の再整備、共創施設の設置によるエコシステム形成、ニューノーマルなワークプレイス構築、そしてSDGsへの貢献を掲げています。特に、拠点集約により年間2.6億円のコスト削減を実現し、働き方改革と連動した新しいセンターオフィスのワークプレイス改革が評価されました。
共創施設「QUINTBRIDGE」は高く活用されており、新ビジネス創出への強い意欲が感じられます。包括的な経営改革と連動した総合的なFM実践が高く評価されました。

■日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社:O3(大阪おせっかいオフィス) いきたくなるオフィス(2023年受賞)
「おせっかい文化」をコンセプトに、社員同士や地域との繋がりを重視したオフィス「O3(Osaka Osekkai Office)」を設立。このプロジェクトは、総合的な働き方戦略の策定と実行、専任のコミュニティマネジャーやパーソナルコンシェルジュサービスの導入による人間中心のアプローチが高く評価されました。また、築60年のビルをリニューアルし、社会や地域経済への配慮も示しました。さらに、PDCAサイクルを活用した継続的な改善体制の整備も評価され、オフィス改革と社会貢献に対する強い意志が認められました。

■富士通 株式会社: ニューノーマルにおけるBorderlessOfficeの推進(2021年受賞)
同社は、2020年7月に「Work Life Shift」を発表し、迅速に新たな働き方を実現しました。Borderless Office(BO)は、HUB、SATELLITE、Home & Sharedの3つの要素から成り、1年間で全国に広く展開されました。テレワークを基本とし、HUBをコミュニケーションに特化させることで、通勤時間の削減やウェルネスの向上が見られました。
また、新オフィスではABW(Activity Based Working)に対応した多様な環境が整備され、DX化とデジタルツールでオフィス内の利用状況が可視化されています。これらの取り組みにより、賃借コストや動力・清掃費の大幅な削減が実現され、総合的なFMの取り組みが高く評価されました。

■株式会社 竹中工務店:竹中工務店本社ファシリティ再整備~新たな価値創造を目指して~(2021年受賞)
このプロジェクトは、2025年のグループ成長戦略に基づき、従業員の成長促進やワークライフバランスの向上を支援する環境づくりを目指しています。東京本店を含む全国12拠点と70の小規模拠点を対象に、2014年から継続的に活動が行われ、ユーザーの声を反映した要求条件の作成や、竣工後のチューニング活動が評価されました。また、ブリーフィングの重視やPDCAサイクルの導入により、継続的な改善が実現されています。FM専任組織が予算と権限を持ち、ユーザー代表を含むチューニングチームが運営維持段階での改善を担う体制が整備されており、FMサービス提供者が自社オフィスにFMを実践した好例として高く評価されました。

■株式会社 リクルート:築60年のビンテージビルに新しいオフィスのスタンダードを創る(2021年受賞)
同社は、九段坂上KSビルに7つの拠点を集約し、年間賃料を約60%削減することで改修投資の原資を確保しました。このプロジェクトは、ウエルビーイング、チーム中心のABW、安全なタッチレス環境、地域社会・地球環境との共生という4つの柱を中心に進められました。テレワークを基本とし、セントラルオフィスをHUB機能に集約する新しい働き方を実現しています。築60年のビル改修には、フラットケーブルの活用やタッチレス化などの工夫が施され、完成度の高いプロジェクトとして評価されました。
出典:JFMA賞 受賞結果(過去の受賞者)/JFMA(公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会)ホームページ

戦略的な施設管理が企業の未来を支える

ファシリティマネジメントは、単なる施設管理を超えて、企業の持続的な成長を支える重要な経営基盤となっています。コスト削減や生産性向上だけでなく、従業員の働きやすさを追求し、企業価値の向上に貢献します。特に、デジタル技術の活用やテレワークの普及により、オフィスの在り方も大きく変化しています。これからのオフィス選びは、企業の成長戦略を見据えた戦略的な判断が求められます。


三菱地所リアルエステートサービスでは、現在のオフィスの課題を見つけるための現状調査サービス「Office Well」をご用意しております。現状調査は、オフィスに関する要件だけではなく、従業員の働き方、さらには企業としての在り方についても見直すことができる重要なフェーズです。「Office Well」を活用いただくことで、専門的な目線から調査結果を分析し、最適な改善策をご提案いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

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