働き方の変化や人員増加に伴い、オフィス移転を検討する企業が増えています。オフィス移転をする場合、担当者の方は「いつから準備を始めたらいいのか」「スケジュールはどのように組めば良いのか」など、疑問や不安を感じることも多いのではないでしょうか。
本記事では、オフィス移転のスケジュールや、一般的な社内手続きの流れについて詳しく解説しております。移転スケジュールの各フェーズにおけるタスク確認に役立つチェックリストも掲載しておりますので、ぜひご一読ください。
オフィス移転にかかる期間は約20ヶ月
オフィス移転には、新オフィスの選定から旧オフィスの原状回復工事まで実に多くの対応事項があります。オフィスの面積や、企業の規模によっても異なりますが、移転までに約20ヶ月の期間があれば余裕をもって移転作業を進めることができるでしょう。(300名~500名規模のオフィスであれば約20ヶ月、100名規模であれば約12ヶ月が目安)
また、大企業の場合は社員数や事業規模から、移転作業・社内調整に多くの時間とコストがかかる傾向にあります。そのため、オフィス移転には、余裕をもったスケジュール設定と綿密な計画が不可欠です。本記事では、約20ヶ月を想定した移転スケジュールについて解説します。
オフィス移転は、単なる引っ越しではなく企業の将来を左右する一大プロジェクトです。生産性の向上や社員満足度向上、さらには企業価値の向上など、企業を成長させる多くの可能性を秘めています。事前準備をしっかりと整え、課題解決・企業の成長に繋がるオフィス移転を実践しましょう。
本記事では主に上記スケジュール項目の、「(社内)承認事項」「(社内)予算関連」「その他」について解説します。(社員数300名~500名規模のオフィス移転を想定)また、各時期における「検討・確認事項」についても、チェックリスト形式でご紹介します。
※移転スケジュールの中心項目である「プロジェクトの流れ」については、下記の記事で詳しく解説します。本記事に含まれる専門的な用語(基本設計・実施設計など)についても解説しておりますので、まずは移転の流れを把握するために、こちらの記事をご覧ください。
オフィス移転計画は現状調査から!移転完了までの流れを徹底解説
オフィス移転スケジュール(300名~500名想定)資料のダウンロードはこちら
さらに、移転に関する費用についてはこちらの関連記事をご覧ください。
賃貸オフィスにかかる費用は? シーン別に生じる費用を解説!
移転20ヶ月〜17ヶ月前
この時期にはオフィスの現状調査を実施し、現オフィスの課題を洗い出します。その後、要件定義・シナリオ策定・具体的検証を実施し、課題解決のためにオフィス移転が必要となれば、移転先選定に向け必要面積及び収容人数と、立地条件を検討します。
■【チェックリスト】必要面積及び収容人数の検討
必要面積・座席数を検討する際には、様々な「前提」を考える必要があります。出社率はどのくらいなのか、座席はフリーアドレスにするのか固定席にするのか、など前提となる条件を確認します。その前提により、必要な座席数や会議室数も変わります。全員出社で固定席、リモートワーク併用でフリーアドレス、など複数のパターンを想定した上で、面積・座席数を決定します。
■【チェックリスト】立地条件の検討
新オフィスに移転する場合、社員の居住地からの通勤時間・交通費などにどのような影響が出るのかを事前に検証する必要があります。また、主な取引先へのアクセス面なども考慮して立地条件を決定することで、より一層業務効率の向上が図れます。また、オフィスが立地するエリアは企業のブランディングにも影響を与えます。企業の長期的な成長を見据え、オフィスエリアの特色についても事前に調査しましょう。
各オフィスエリアの紹介記事一覧はこちら
三菱地所リアルエステートサービスでは、上記項目についての事前調査サービスも行っております。現オフィスの課題をヒアリングの上、新オフィスに必要な面積、会議室の個数、移転後の社員の通勤時間・交通費などの調査・分析を実施。データをもとに、複数の改善策をご提案いたします。オフィス移転をご検討の際はぜひご活用ください。
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移転16ヶ月〜13ヶ月前
移転に必要な条件の洗い出しが完了したら、移転先候補物件を選定します。賃料や預託金等、賃借条件を始め、オフィスビルの様々な条件についても確認が必要です。
■【チェックリスト】建物条件のチェック
要件定義で決定した建物要件を考慮した上で、物件を選定します。例えば、窓に面した個室を多く設置したい場合、センターコア方式(※)のビルであればレイアウトがしやすいでしょう。また、フロアの区画を区切って利用する場合は、オフィスの入り口がエレベーターから近いかどうか、なども選定のポイントとなるでしょう。
※センターコア(中央コア)方式…エレベータ・トイレ・給湯室などビルの主要な共用施設をビル中央部にまとめた、ワンフロアのレイアウト設計のこと。採光も確保しやすく、レイアウトの自由度も高い。
その他、特殊な機械設備や、大容量のサーバー設置など、特殊な要件がある場合は電気容量などの設備仕様も確認が必要です。また、オフィスビル毎に工事区分表があります。工事費用を見積もる際に重要なポイントとなるので事前に確認をしておきましょう。
幅広く物件を選定するためにも、物件選定については専門業者にご依頼することをお勧めします。三菱地所リアルエステートサービスでは、物件の選定もサポートしております。物件のご提案や内覧サポート、賃貸条件・建物利用方法・設備利用条件の条件交渉代行なども承ります。
▽工事区分についての解説はこちら記事をご覧ください
賃貸オフィスにかかる費用は? シーン別に生じる費用を解説!
■【チェックリスト】賃料・預託金
新オフィスの賃料や預託金についても、事前に確認が必要です。オフィスの立地・設備・賃料などを総合的に判断します。また、賃借条件を確認する際には契約形態についても留意しましょう。契約期間満了後、更新可能な「普通建物賃貸借契約」なのか、契約期間が定められ、更新の無い「定期建物賃貸借契約」なのか。それぞれの違いについては、下記の関連記事をご覧ください。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いとは?オフィスで 借りるときのポイントも解説
移転12ヶ月前
この時期からはオフィスの構築フェーズに入ります。新オフィスのコンセプトについて議論する他、内装業者や設計会社に発注をするタスクが発生します。
■移転費用積算
この時期から、予算策定など予算面でのタスクが発生します。まず、移転先が決定した段階で「移転費用」を積算します。
概算的に、新オフィスの入居工事費用・PC機器類や家具什器の費用・移転費用・電話、LANなどのインフラ整備費用・旧オフィスの原状回復工事費用などを積算します。このフェーズでは概算で負担費用を確認しておくことが重要です。
■プロジェクト定例会の開催
また、この時期には新オフィスの設計コンセプトについても決定します。コンセプトの決め方は様々ですが、社内のキーパーソン達を集めてプロジェクトチームを編成することも一つの方法です。企業を成長させるために、どのようなオフィスコンセプトで、どのような設備が必要か、などを定例会で議論します。
■【チェックリスト】オフィス計画関連事項
移転先物件が決定すると、新オフィスの面積が決定します。移転プロジェクト立ち上げ時に想定していた一人当たりの必要面積・会議室の数などを実際の図面上に当てはめて、最終的な一人当たりのスペースを算出します。社員数に対するリモートワーク率や、新入社員の人数などの要件も考慮し、新オフィスの座席数を決定します。
また、この時期に移転についての社内説明会を行います。移転日程や移転先などを周知します。さらに、社内の文書保管量についても対策が必要な時期です。新オフィスの面積に対する現オフィスの文書量が多すぎる場合には、社内説明と同時に書類の削減についてもアナウンスしましょう。
会議室の面積や適正数についての関連記事も是非ご一読ください。
会議室の面積はどのように決める?適正数とは?検証のポイントを解説!
移転10ヶ月前
プロジェクト全体の流れとしては、移転10ヶ月前頃に新オフィスの基本設計を行います。発注先の業者と共に、オフィス内のゾーニングなどを検討します。新オフィスの基本設計を元に、社内承認手続きを進めるのがこの時期です。
「基本設計」の詳細についてはこちらの記事をご覧ください
■基本設計承認
基本設計承認の流れは下記のとおりです。
① ゾーニングの決定
② 基本レイアウトプランの決定
③ インテリア・内装計画の決定
④ ファニチャー計画の決定
⑤ セキュリティ計画の決定
⑥ 関連法規確認
ゾーニングとは、用途や機能によって空間を区分けすることを指し、オフィス移転においては新オフィスのスペースを機能に応じて区分けすることを指します。例えば、来客用のスペース・社員のみが利用するスペース・セキュリティ関連のスペース、など大まかな区分けを決め、配置を考えます。さらに、その配置での作業効率や、動線の確保ができているか、コミュニケーションスペースが確保できているか、などを検証します。
ゾーニングが決定すれば、その後はオフィス什器・備品をどのように配置するかを決定したり、内装デザインや家具などの詳細も決めていきます。オフィスビルのセキュリティや関連法規についてもこのフェーズで確認します。
■工事費用積算/基本計画承認/予算集計①
基本設計の①~⑥が決定すると、概算の工事費用が算出できます。①~⑥の内容と、工事費用を合わせたものが基本計画となるので、この段階で基本計画についての社内承認手続きを進めます。(予算集計①)
移転8ヶ月前
前のフェーズで決定した新オフィスのコンセプトや基本設計の内容を、どのように実現するのか(セキュリティの確認、ビルの電気容量の確認など)ということを検討するのが実施設計です。また、この頃には社内で議論を行う事項については決定済みとなるため、移転12ヶ月前から始まったプロジェクト定例会は終了します。
■発注承認①/発注承認②
新オフィスで使用する什器の中には、大型什器など納期まで時間を要するものもあるため、早めに発注作業を行います。
■レイアウト承認/予算集計②
基本計画・実施設計での決定事項を経て最終的にレイアウトなどを決定するのがこのフェーズです。この時点でプロジェクト全体の予算も確定します。
■【チェックリスト】オフィス計画検討項目
実施設計で、オフィスの内装デザインなども決定します。それに伴い、現オフィスから新オフィスに転用する什器の決定や、新オフィスの電気系統を確認し、OA機器(プリンタ・PCなど)の追加購入を検討するなど、移転に向け具体的なタスクが多くなる時期です。PCやネットワークについては関係部署と連携し、計画を進めます。
■【チェックリスト】庶務関連事項
オフィス計画で決定した追加OA機器や、新規什器などの発注作業についてもチェックリストを活用し、漏れの無いように注意しましょう。
移転6ヶ月前
移転まで半年となると、移転先の工事調整・準備が始まります。具体的にはビル側の工事会社・管理会社などの関係業者を交えて会議(定例会)を実施し、機材を搬入する日程の調整や、作業時間帯の調整などを行います。
■現ビルの解約予告
現ビルの解約予告は一般的に退去の6ヶ月前までに行う必要があるため、忘れずに手続きを進めましょう。
■【チェックリスト】庶務関連事項
社内承認などの調整が完了し、この時期からは社外に対する連絡事項、届出事項が多くなります。まず、移転前の郵便局に転居届を提出します。郵便局の窓口へ届出を持参するほか、インターネットでの手続きも可能です。また、関係取引先への移転通知についても移転の4ヶ月前を目安に行います。その他、旧住所が記載された書類などの更新作業も必要です。
移転4ヶ月前~移転当日~移転後
移転4~3ヶ月前には、新オフィスの施工が進行しています。その間に、社内へ向けて移転作業の流れを周知し、本格的に移転作業を進めます。
■移転説明会
社内に向けて移転説明会を行います。企業規模にもよりますが、移転は数回に分けて実施されることが多いです。移転をスムーズに進行するために、部署や事業グループ毎に詳細な作業内容や、移転の流れについての説明を行います。
■竣工検査
新オフィスの施工が完了した後に必要な承認事項として「竣工検査」があります。竣工検査とは、工事完了時に実施する最終検査で、オフィスが仕様書通りの仕上がりになっているか、施工の不備がないかを確認します。
■【チェックリスト】移転手続き
移転の前後で必要な届出手続きは数多く、届出先も多方面のため、期限内に提出できるよう準備を進めましょう。手続きはそれぞれ書類を窓口へ持参・電子申請・郵送などで対応できます。自社にあった方法を選択して提出しましょう。
主な手続き内容は下記の通りです。ただし、事業所によって届出の種類が変わることもあるため、注意が必要です。
■【チェックリスト】移転直後の作業
移転後も旧オフィスの原状回復工事等、庶務対応が続きます。原状回復工事の流れや注意点については下記の関連記事をご覧ください。
オフィスの原状回復にかかる費用を支払うのは借主?その理由とは
チェックリストまとめ
移転時期ごとのチェックリストをまとめた資料は下記の通りです。移転計画を進める際にぜひご活用ください。
資料のダウンロードはこちら
移転スケジュールをスムーズに進めるポイント3つ
オフィス移転を成功させるためには、様々な準備が必要です。移転の目的を明確にし、必要なタスクを洗い出し、最適なスケジュールを計画しましょう。スケジュールを考える際の注意点は下記の通りです。
・スケジュールに余裕を持たせる
・チェックリストを作成する
・オフィス移転の専門業者に依頼する
オフィス移転は、物件の契約や引っ越し業者の手配など、様々なタスクがあります。また、希望物件の契約が順調に進まない、引っ越し業者の手配が遅れる、移転先の設備に問題が発生するなど、予期せぬトラブルも発生します。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、移転の初期段階から綿密な準備をすることが重要です。
三菱地所リアルエステートサービスでは、現状調査から移転完了までトータルサポートを行っております。オフィス移転にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
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オフィス移転は、企業の成長や働き方改革の実現に繋がる重要な取り組みです。オフィス移転をスムーズに完了させるためにも、上記のチェックリストをぜひご活用ください。
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