オフィスの移転を検討する際は、計画開始から完了までの大まかな流れを知っておくことが大切です。計画の各フェーズにおいてどのような決定項目があるのか、何をすれば良いのかを詳しく解説します。
移転目的を明確にする
「オフィス移転」は単なる場所の変更ではなく、企業の長期的な成長、市場での競争力強化、仕事の生産性向上などを目的とした重要な戦略です。効果的なオフィス移転を行うためには、最初に「なぜオフィスを移転するのか」という目的を明確にすることが大切です。
スペースの最適化やコストの削減など、目前の課題を解決するためにオフィス移転を検討することも多いでしょう。一方で、オフィス移転は膨大な時間と費用を伴うプロジェクトです。短期的な目標だけでなく、「オフィスでの働き方」「企業文化の形成」などの長期的なビジョンにも照らし合わせて、慎重に進める必要があります。長期的なビジョンを踏まえてオフィス移転の目的を設定すると、移転先の物件に求める条件も明確になるでしょう。
オフィス移転計画開始から完了までのスケジュール
オフィス移転の工程は、次の6つのフェーズに分けられます。
①オフィス現状調査
②要件定義・シナリオ策定
③具体的検証
④移転候補物件選定
⑤オフィス構築・移転
⑥移転後
ここからは、300名~500名規模のオフィス移転を想定したスケジュールに基づきご説明します。
最初のフェーズである「オフィス現状調査」は、移転想定時期の20ヶ月前頃から開始することが望ましいでしょう。移転17ヶ月前頃には移転プロジェクトを立ち上げ「要件定義・シナリオ策定」、「具体的検証」を行い、移転16~13ヶ月前には「移転候補物件の選定」を行う流れです。
移転先オフィスでの働き方などを含むオフィスコンセプトの決定や、レイアウト設計などの「オフィス構築」は移転12ヶ月前頃からスタートします。また、現入居ビルの賃貸借契約書を確認し、定められた期間内に解約予告を行う必要もあります。
その後は社内への通達(引っ越しに係るスケジュールや作業方法など)を行い「移転」作業を進めます。無事移転を終えた後は、荷物の開梱などの「移転後」の作業を行います。
オフィス移転の概略は上記の通りです。まずは、オフィス移転計画開始から完了までの全体像をイメージすることが大切です。
次に、各フェーズの決定事項や計画の進め方について解説します。
■オフィス現状調査
従業員数の増加に伴う増床や、働き方の見直しなど、オフィス移転を検討するきっかけは様々ですが、移転が本当に必要かどうかを見極めるためにも、まずはオフィスの「現状調査」を行いましょう。現在のオフィスが抱えている課題の解決策は、移転なのか、もしくはレイアウト変更やサテライトオフィスの新設なのか、様々な方向性を考えるためにも現状調査が有効です。
調査は移転想定時期の20ヶ月前頃から行います。このタイミングで実施する主な調査は下記の通りです。
・スペース稼働率調査
・ロケーション調査
・現状ファシリティ調査
・従業員意識調査
・ワークスタイル調査
・コミュニケーション調査
オフィス内スペース(執務室・会議室等)の稼働状況は働く環境や面積に直結するデータのため、検討の初期段階で定量化することが重要です。また、オフィス移転をした場合の通勤にどのような影響があるのかを検証するためにも、従業員の居住エリアの分布を確認し、移転先への交通アクセスシミュレーションを行うなどの、ロケーション調査も必要です。
その他、従業員のワークスタイルやオフィスに対する意識調査などを行うことで、現オフィスの抱える課題を定量的に把握することができます。
■要件定義・シナリオ策定
現状調査の結果を踏まえて、課題解決を図るために、オフィスに必要な「要件定義」を行います。主な要件は下記の5つです。
①立地
②働く環境
③面積
④ビルスペック
⑤時期
これらの要件について定義した後、改めて現オフィスの課題解決に必要な手法を検討します。
例えば、今後の事業計画や業務における利便性を考慮した結果、オフィスの立地を変更した方が良い、と定義された場合に必要な手法は「オフィス移転」となります。現オフィスの在席率やスペース稼働率等を把握した上で、現オフィスの面積でも十分対応が可能である、と定義された場合には「レイアウト変更」などによる改善策も考えられます。
このように、定義された要件に従って複数の課題解決シナリオを考えるフェーズが「シナリオ策定」です。
■具体的検証
複数のシナリオ案ができたら、各シナリオにおいてかかるコストの算出など、具体的なシミュレーションを実施します。予算の算出はもちろん、プロジェクトのスケジュールやテストレイアウトも作成し、どれくらいの効果が見込めるか、実現可能性があるかを検証します。シナリオ毎のメリット・デメリットを整理し、総合的にどのシナリオが課題解決のために最適かを検証しましょう。
三菱地所リアルエステートサービスでは、「現状調査~要件定義・シナリオ策定~具体的検証~計画実行」までをトータルサポートしております。現状調査ではセンサーを用いて執務室や会議室等、各スペースの稼働状況や利用人数割合を時間別・曜日別に把握し、分析を実施します。その他、アンケートを用いた従業員意識調査の結果を可視化し、データとしてご提供します。
さらに、調査を踏まえて現在のオフィスが抱える課題を明らかにし、最適なシナリオ案を複数ご提案いたします。オフィス移転が決定した際には候補物件のご紹介やテストレイアウトの作成など、幅広くサポートを行います。
オフィス移転をご検討の方は、まずは三菱地所リアルエステートサービスへお気軽にご相談ください。
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■移転候補物件選定
物件情報の収集には、賃貸オフィス検索サイトを利用したり、仲介業者に物件選定サポートを依頼することも検討しましょう。
複数の候補物件を選定後、レイアウトシミュレーションを行いボリュームをチェックします。
例えば、月額賃料をベースに予算を設定して候補物件を選定した際に、面積が現オフィスよりも減床となる場合、現オフィスの要件(座席数や収納量など)を縮小せざるを得ないこともあります。そのような検証を行うのがボリュームチェックです。
もし、候補物件では要件を満たせないという場合には、月額賃料を抑えて面積を拡張できる別の候補物件を選定することも必要です。
いくつかの候補物件が揃ったら現地内覧を行いましょう。最終候補の物件が決まれば条件交渉を行い、交渉が折り合えば賃貸借契約を締結します。また、現在借りているオフィスの賃貸借契約を確認し、解約予告等の手続きを行いましょう。なお、解約予告は退去の6ヶ月前までに行うというのが一般的ですが、契約によって異なるため契約書を事前に確認しておきましょう。
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三菱地所リアルエステートサービスでは、物件選定時のオーナーとの条件交渉サポートも行っております。また、条件交渉で獲得した賃貸条件やオフィスの設備スペック等を整理し、コストシュミレーションや検討事項のポイントをまとめた候補物件比較資料も作成します。複雑な業務もしっかりとサポートさせていただきますので、オフィス移転をご検討中の方はぜひご相談ください。
■オフィス構築・移転
オフィス構築・移転の作業は下記の工程が基本になります。各時期において、どのような事項を決定しなければならないのかを説明します。
移転12ヶ月前 | 設計要件定義 | オフィスコンセプトの確認、新オフィス構築に係る要件確認など |
移転11~10ヶ月前 | 基本設計 | 移転先の実測、確認事項・実測に基づく基本設計など |
移転8ヶ月前 | 実施設計 | 基本計画から実施計画への移行など |
移転6ヶ月前 | 工事調整・準備 | 関係業者を交えた全体会議を実施、工事仕様書の作成など |
移転3ヶ月~開業前 | 施工/移転準備・実施 | 納品・工事・作業スケジュールの作成と調整、消防検査・竣工検査立会い、納品・工事・移転作業の立会いなど |
設計要件定義
現オフィスの課題や経営課題を解決するために、新オフィスの設計コンセプトについて決定するフェーズです。コンセプトの決定方法は様々ですが、一つの方法としては、この段階で社内のキーパーソン達を集めてプロジェクトチームを編成し、ワークショップを行います。新オフィスに求めることや、経営課題の解決のために何が必要かを実際に働いている従業員の意見を取り入れながら議論します。
例えば「部署間のコラボレーションが出来るオフィスにしたい」というようなコンセプトが決まった場合、それを叶えるためにはどういった座席レイアウトにするのが良いのか、壁はなるべく設置しないようにするのか、もしくはガラス壁にするのか…など具体的なオフィスの希望要件を検討します。そうして議論した希望要件を踏まえて、複数の内装業者や設計会社から、新オフィスの設計コンセプトについてプレゼンを行ってもらい、発注先を選定します。
働く場所を変えることで、働き方・環境・制度も変えていくためには、この段階でしっかりと企業の未来について議論し、新オフィスに求めるコンセプトや設計要件を整理することが重要です。
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基本設計
設計要件定義で決定したコンセプトに従い、発注した業者とともに企業がオフィス内のゾーニングを検討するフェーズです。受付エリアはどこにするか、エントランスの広さはどれぐらいにするか、などを検討します。また、ビル全体のセキュリティや、作業動線も加味しながら設計を行います。
実施設計
企業側の要望を踏まえた基本設計を、内装業者や設計会社側が、実現可能かどうかや、どのように実現するのかということを具体的に検討するフェーズです。基本設計を実現するための手法や費用を業者側が検討し、詳細な見積りを行います。企業側とは違った視点で、オフィスの電気容量や、セキュリティの確認などを行い、最終的な設計を決定します。また、オフィスレイアウトについてもこの段階で最終的な検討を行います。
オフィスレイアウトを計画する時のポイント
オフィスレイアウトを計画する際には、ゾーニング計画や動線計画、寸法計画を行った上で、テーマを決めることがポイントです。なお、業務効率化に繋がるデスクレイアウトとして、以下のようなものが挙げられます。
・対向式レイアウト
・背面式レイアウト
・同向型レイアウト
・ブース型レイアウト
・クラスター型レイアウト
▽デスクレイアウトの詳細については、こちらの記事をご確認ください。
オフィスでの仕事がはかどる!業務効率化に繋がるデスクレイアウトとは?
工事調整・準備
ビル側の工事会社・管理会社、作業員の方々との調整を行うフェーズです。関係業者を交えた全体会議を実施し、工事機材を運び込む時間や、工事作業を行う時間の調整などを行います。この段階で、工事完了日や移転日、竣工日などが決まります。
施工/移転準備・実施
新オフィスの施工が始まり、企業側では移転準備が本格的に始まるフェーズです。主に総務部にあたる部署が中心となり、社員に対して移転スケジュールや移転準備作業についての説明会を開催します。
移転準備の具体例は、「新オフィスの移転用ナンバリング図面作成」などです。移転前の最終出社日に個人的な荷物(段ボール)やデスク・椅子に各自でナンバリングを行ってもらうことで、新オフィスのナンバリング図面通りに荷物の運び入れが可能となり、移転作業がスムーズになります。その他、新オフィスビルへの作業届作成・提出、消防検査の立会なども必要になります。
移転後
移転後は各専門業者にアフターフォローを依頼し、旧オフィスの原状回復工事にも着手します。また、次のオフィス移転時や、レイアウト変更時に備えて、竣工図などの竣工関連図書を、保管しておくことも重要です。
そして、オフィス移転が完了してから一定期間経過後には、移転後の働き方やオフィス環境などの効果検証を実施しましょう。効果検証の結果、移転後のオフィス環境に問題がある場合は課題を明らかにして、移転前に設定した移転要件を達成できるように対策を行います。
移転スケジュールと併せてチェックリストを活用
上記のような移転スケジュールを作成する際に、各フェーズで実施すべき項目のチェックリストを活用すると良いでしょう。
三菱地所リアルエステートサービスでは、プロジェクトの進め方や、社内承認事項のスケジュール、各フェーズでのTo Doリストなどを網羅した「オフィス移転スケジュール資料」をご用意しております。各フェーズにおいてご利用いただけるサポートメニューについても記載しておりますので、移転スケジュ―ル作成にお役立てください。
オフィス移転スケジュール(300名~500名想定)ダウンロードはこちら
また、上記資料をもとに各フェーズにおける社内承認事項や予算関連項目についての詳しい内容を解説した記事もぜひご一読ください。
オフィス移転時のスケジュールや社内手続きをチェックリストと共に解説!
オフィス移転で使える助成金
オフィス移転は企業にとって多大な費用と時間がかかるため、国や自治体の補助金・助成金制度を利用することも検討しましょう。申請・受給には対象となる取り組みや条件等、一定の審査がありますが、企業の移転や拡張、新技術の導入といったプロジェクトをサポートする助成金制度もあるので、オフィス移転時に活用できるものが無いか確認しましょう。
まとめ
オフィス移転を、ただ場所や形を変えるだけの作業で終わらせてしまうと、企業にとって重要な改革の機会を逃してしまうことになります。オフィスを変えることは、働き方・職場環境・制度などを見直すきっかけとなり、さらには企業風土の改革実現や、将来のビジョンについても考えられる良い機会です。
オフィス移転は決定すべきことも手続きも非常に多く、計画段階から移転完了までが長期に亘るプロジェクトです。オフィス移転プロジェクトの効果の最大化を図るためにも、現状調査・シナリオ策定・具体的検証などの調査プロセスも含めてしっかりとスケジュールを作成しましょう。
三菱地所リアルエステートサービスではオフィス移転に関するトータルサポートを行っております。現状調査や候補物件選定、関連業者選定、賃貸条件の交渉などをワンストップでサポートいたします。オフィス移転に不安や懸念がある場合は、三菱地所リアルエステートサービスにぜひご相談ください。貴社に最適なオフィス移転プランをご提案し、スムーズな移転を実現いたします。
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