デジタル技術の進化やハイブリッドワークの普及により、オフィスに求められる役割は大きく変化しています。その中で企業の競争力を高めるために不可欠なのが、「ファシリティマネジメント(FM)」です。従来の施設管理が建物や設備の維持管理を主な目的としていたのに対し、ファシリティマネジメントは経営戦略と連動した包括的なアプローチを取ります。環境への配慮やコスト削減はもちろん、従業員の業務効率や生産性の向上まで、幅広い視点で施設の活用を考える手法です。
本記事では、ファシリティマネジメントの体系を整理した上で、「現オフィスの改修か、移転か」という実務担当者が直面する判断軸を解説します。FMコンサルとしてではなく不動産のプロの視点から、データに基づく的確な意思決定をどう進めるかをお伝えします。
ファシリティマネジメント(FM)とは?
「ファシリティマネジメント」という言葉を耳にする機会が増えたものの、「施設管理と何が違うのか」「PM(プロパティマネジメント)との関係は」と問われると説明に詰まる方も多いのではないでしょうか。本章では、FMの定義と、混同されやすい類似概念との違いを整理します。
ファシリティマネジメントの定義と本来の目的(「第4の経営資源」としての位置づけ)
企業経営において、施設資産を戦略的に管理・活用する重要性はますます高まっています。ここでいう「ファシリティ」とは、企業活動を支えるあらゆる施設環境のことです。建物や設備といったハード面だけでなく、施設内のサービスや働く環境の整備までを含む幅広い概念を指します。
具体的には、オフィスビルや工場などの建物、設備機器、什器備品といった「物的資産」に加え、空調や照明などの「環境設備」、清掃サービスや食堂の運営などの「施設内サービス」も含まれます。加えて、土地の管理や通信・電気などのインフラ整備、さらには受付や来客対応といった「おもてなし(ホスピタリティ)」の提供まで、施設をスムーズに機能させるための運営サービスもファシリティの範囲に含まれます。
その上で、ファシリティマネジメント(FM)とは、JFMA(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)の定款によると、以下のように定義されています。
「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」
ここで重要なのは、末尾の「経営活動」という表現です。FMは単なる施設の維持管理ではなく、経営戦略と直結した活動として位置づけられています。
ファシリティマネジメントは、人材・資金・情報に次いで「第4の経営資源」として重要視されています。JFMAはFMを「事業を支える4つの機能分野(人事・ICT・財務・FM)のうちの一つ」として明確に位置づけており、経営戦略に影響する重要課題はFMのサイクルを通じて経営層にフィードバックされる構造です。
FMの標準業務サイクルはPDCAに即した4業務で構成されています。
このサイクルを継続的に回すことで、施設が経営戦略の実現を下支えする「経営資源」として機能します。
「PM(プロパティマネジメント)」や「施設管理」との違い
不動産や建物の管理にはさまざまな手法がありますが、それぞれに目的と範囲の違いがあります。
「施設管理」は、建物・設備の維持保全・清掃・セキュリティなど物理的な側面の管理が主な業務です。建物を安全に維持することを目的としており、経営戦略との連動は限定的です。
「ビルマネジメント(BM)」
主にビルそのものの運営と管理に焦点を当てており、建物の資産価値を維持し、利用者にとって安全で快適な環境を提供することを目的としています。
「プロパティマネジメント(PM)」
不動産の収益性を最大化することを目的とした管理手法です。賃貸物件の運営やテナント管理、賃料の設定と回収、マーケティング、リーシング(賃貸契約)など、不動産オーナーの利益を最大化する観点から業務を担当します。
これに対してFMは、企業が施設を「使う側」として、経営戦略の視点からスペースや環境を最適化する概念です。「このオフィスが事業成長や従業員パフォーマンスにどう貢献しているか」を問い続けることがFMの本質といえます。
オフィスが単なる「コストセンター」から「経営戦略を支える資産」へと役割を変える中、まずは自社オフィスの現状(使われ方や潜在的な課題)を客観的なデータで把握することが、すべての出発点となります。
「オフィスの見直しを図りたいが、何から手をつければいいかわからない」とお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。不動産のプロが、データに基づいた課題の可視化と最適なオフィス戦略の第一歩をサポートいたします。
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オフィスでSDGsに取り組むには?メリットや導入事例を紹介なぜ今、ファシリティマネジメントが必要なのか?
ハイブリッドワークの定着、人的資本経営への注目、エネルギーコストの高騰。この3つが重なった今、オフィスのあり方を根本から見直す必要性が高まっています。ここからは、企業がFMに取り組むべき背景を、実務に直結する3つの視点から解説します。
ハイブリッドワーク定着による「オフィスの空席・デッドスペース」問題
デジタル技術の進化やテレワークの普及により、オフィスに求められる役割は大きく変わりました。「ハイブリッドワークで空席が増えた」という声は多くの企業から聞かれますが、実務上の問題の本質は単に席が空いていることではありません。
ザイマックス総研の「大都市圏オフィス需要調査2025秋」によると、約8割の企業がハイブリッドワークを継続しています。使われないデッドスペースが存在する一方で、賃料・光熱費・管理費はそのまま固定費として発生し続けます。これが「空席コスト問題」の実態です。
「空席があるならすぐに面積を縮小すればいい」と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。縮小に踏み切れない理由は多様で、賃貸借契約の残存期間や解約予告条件、将来の増員見込み、現在の賃料水準と市場賃料の比較など、複合的な要因が絡み合っています。
こうした状況への対処としては、フレキシブルオフィス(サテライトオフィスやコワーキングスペース)を固定オフィスと組み合わせて活用したり、契約更新のタイミングを見据えて段階的な面積の見直しを検討したりといった、柔軟な選択肢が現実的なアプローチとなりえます。
人的資本経営の広がりと「従業員エンゲージメント(働きやすさ)」の重視
有価証券報告書を提出する企業に対し、人的資本情報の開示が義務化されています。具体的な開示指標には、「従業員エンゲージメント」や「離職率」、「スキル開発への投資額」などが含まれます。
これは一部の大企業に限った話ではありません。人材の採用・定着の観点では、企業規模にかかわらず、オフィス環境の質が「採用力」や「企業評価」に直結する構造になりつつあります。「このオフィスで働きたい」と思ってもらえるかどうかが、人材獲得競争における一つの軸になっているのです。
FM(ファシリティマネジメント)はこうした文脈において、「オフィス環境を整えることで従業員エンゲージメントを高め、人的資本経営の実践につなげる」という、経営的な役割を担っています。
▽参照元
金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等改正の解説」内閣官房「人的資本可視化指針(改訂版)」
物価高・電気代高騰を背景とした「LCC(ライフサイクルコスト)」見直しの機運
エネルギーコストの高騰が続く中、オフィスの光熱費や管理費の見直しを迫られている企業は少なくありません。こうした状況を受けて注目されているのが「LCC(ライフサイクルコスト)」の概念です。
LCCとは、施設・オフィスにかかるコストを「①初期コスト(内装工事等)」「②ランニングコスト(賃料・光熱費・管理費等)」「③退去コスト(原状回復工事・不用品廃棄等)」の3段階で総合的に捉える考え方です。入居時の賃料だけを見て物件を選ぶと、退去時に想定外のコストが発生するケースがあります。FMの視点では、このLCC全体を見通した判断が求められます。
現在のオフィスにどれだけの無駄があるかを把握したい場合、まずは客観的なデータで現状を整理することが出発点です。三菱地所リアルエステートサービスの「Office Well」では、不動産のプロの視点でオフィス環境の現状把握を支援しています。
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出社かリモートか、働き方を模索中。働く環境の最適解とは?企業がファシリティマネジメントに取り組む3つのメリット
ファシリティマネジメントへの取り組みは、コスト削減や生産性向上といった経済的な効果にとどまりません。従業員が快適に働ける環境づくりや環境負荷の軽減といった社会的な責任も含まれます。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応や、持続可能な経営の基盤としても注目されています。ここでは、FMがもたらす代表的な3つのメリットを確認しましょう。
コストの最適化(初期費用だけでなくLCC全体の削減)
オフィスコストの議論では、賃料や内装工事費(初期コスト)だけに目が向きがちです。しかし実務上、見落とされやすいのが退去時に発生するコストです。
LCCは「①初期コスト・②ランニングコスト・③退去コスト」の3層で構成されますが、事業計画の段階で①②を組み込む企業は多い一方、③を事前に見積もっているケースは多くありません。退去時には原状回復工事費用のほか、オフィス内の固定資産の除却にともなう会計処理も発生します。オフィス賃貸における原状回復については、国土交通省のガイドラインでも、住宅とは異なり特約による借主負担範囲が広く設定されやすいことが明示されています。
具体的な原状回復費用は物件の仕様・グレード・内装の状態によって大きく異なるため、事前の見積もり取得が不可欠です。FMの視点では、入居時から「退去時にどのようなコストが発生するか」を見越した出口戦略込みの物件選定が、結果的に企業のトータルコストを抑制します。
▽参照元
国土交通省「賃貸オフィスにおける原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 に関する参考資料
生産性と創造性の向上(ABWやユニバーサルレイアウトの導入など)
職場環境の整備は、従業員の作業効率を高めるための重要な要素です。オフィスのレイアウトを見直し、動線を改善することで、業務がスムーズに進む環境を整えることができます。近年注目されるABW(Activity Based Working)は、業務の種類に応じて最適な場所・環境を選択できるオフィスレイアウトの概念です。集中作業ゾーン、コラボレーションゾーン、リフレッシュエリアなど、用途別にスペースを設計することで、従業員の業務効率と創造性の向上が期待できます。
さらに、ICT(情報通信技術)を駆使してリモートワークやフレキシブルワークスペースを提供することで、従業員の柔軟な働き方をサポートします。自然光を最大限に取り入れる設計や適切な温度・湿度管理も、集中力の維持に効果的です。
社会・環境への対応(省エネ化によるCSR・ESG経営への貢献)
2025年4月施行の建築物省エネ法改正により、非住宅建築物の新増築時に省エネ基準適合が義務化されました。既存ビルへの入居時の内装・設備工事においてビル側の省エネ基準に合わせた機器選定を求められるケースが今後増えることが見込まれます。
「省エネ性能の高いビルを選んで入居する」という判断は、将来の設備対応コストを回避するという点で、先行投資としての価値を持ちます。また、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証やBELS評価を取得したビルへの入居は、CSR・ESG報告におけるアピールにも活用できます。
さらに、不要になった設備や施設の再利用を推進することは、廃棄物の削減や資源の有効利用につながります。こうした取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任、つかう責任」への貢献にもなります。
▽参照元
国土交通省「建築物省エネ法とは」オフィス環境の課題を整理したい場合は、不動産のプロへのご相談が有効です。三菱地所リアルエステートサービスでは、現在のオフィスの状況をヒアリングしたうえで、オフィス環境の課題を可視化し、最適なオフィス選びをサポートしています。
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BCPを意識したオフィス選びとは?入居後に行うべき対策も解説オフィスを最適化する「FMの3つのレベル」と対象領域
FMは一つの概念で括られがちですが、実際には意思決定の階層によって性質が大きく異なります。日々の清掃ルールの見直しと、移転・契約更新の判断は、同じ「FM」であっても経営に与える影響は全く異なります。JFMAが公式に定める「3つのレベル」を理解することで、自社のどこに課題があるかが見えてきます。
経営・戦略レベル(中長期的な施設保有・賃貸の方針決定)
最も影響度が大きいのが、このレベルにおける判断です。施設の保有か賃貸か、移転か改修か、ビルグレードの選択、そして契約期間や面積の設定など、一度決まると数年単位で企業を拘束する重要な意思決定が含まれます。
経営・戦略レベルの判断ミスは、中途解約の違約金や退去時の原状回復工事費という形で、後から大きなコストダメージとなって顕在化します。逆に言えば、このレベルの意思決定に客観的なデータを活用できれば、それだけで大きなリスク回避につながるのです。
三菱地所リアルエステートサービスの「OFFICE MARKET REVIEW 2025」でも示される通り、東京主要5区の潜在空室率は1%台まで下降しており、完全に貸し手市場の局面を迎えています。空室の減少に伴う物件の獲得競争が激しくなっている中、経営・戦略レベルの的確な判断を下すためには、市場の動きを踏まえて早めに情報収集と社内検討を始め、迅速に意思決定することが不可欠です。
管理・業務レベル(レイアウト変更、ICT活用、業者選定などの統括)
このレベルでは、レイアウト変更計画の策定、会議室予約システムの導入、清掃・警備業者の選定・管理、工事業者との調整などが主な業務となります。戦略レベルの方針を具体的な施策へと落とし込む「実装のフェーズ」です。
ICT活用の観点では、センサーを用いたスペース稼働率の可視化ツールや、座席予約システムの導入が近年普及しています。「どのエリアが何時に使われているか」を定量的に把握することで、レイアウト変更を行う際の確かな根拠データとして活用できます。
日常業務・実務レベル(日々の清掃、座席予約システムや会議室ルールの運用)
日々の清掃・点検・設備管理、座席予約ルールの運用、会議室の利用マナー周知など、現場レベルの業務が該当します。このレベルの判断ミスは相対的に軽微で、修正も比較的容易です。
ただし、日常業務レベルで蓄積されるデータ(清掃報告・設備故障記録・稼働率データなど)は、管理・業務レベルの改善判断や次の戦略を策定するための重要な判断材料となります。地道な記録の積み重ねが、最終的な経営判断の質を高めることにつながるのです。
▽参照元
JFMA公式サイト「ファシリティマネジメント(FM)とは(FMの3つのレベル)」経営・戦略レベルの大きな意思決定において、最も避けるべきは「なんとなくの感覚」や「過去の慣習」で方針を決めてしまうことです。数年先のコストや組織のパフォーマンスを大きく左右するからこそ、客観的なデータによる確かな裏付けが不可欠になります。
「自社にとって最適なオフィス面積や要件がわからない」「経営層を納得させるための客観的な判断材料(データ)が欲しい」とお悩みの際は、ぜひご相談ください。現状調査サービス「Office Well」を通じてオフィスの潜在的な課題を定量的に可視化し、自信を持って的確な意思決定を下せるようサポートいたします。
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会議室の面積はどのように決める?適正数とは?検証のポイントを解説! オフィス移転時は「ペーパーレス化」を推進するチャンス!社内ルール化のポイントなどを解説ファシリティマネジメント実践の「PDCAサイクル」
FMは一度の施策で完結するものではありません。現状把握・計画・実行・評価・改善というサイクルを継続的に回すことで、オフィス環境は経営戦略に応答し続ける資産へと変わります。本章では実務上の落とし穴とあわせて、FM実践の軸となるPDCAサイクルを解説します。
Plan(現状把握と戦略立案):自社オフィスの使われ方をデータ化する
FM実践で最もつまずきやすいのがこのPlan段階です。多くの企業では「なんとなく席が空いている気がする」という定性認識はあっても、それを裏付ける客観的なデータがありません。
現状把握には、主に以下2種類のデータ収集が必要です。
- スペース稼働率調査:センサー等を活用し、どのエリアが、何時に、どの程度使われているかを定量化する。
- 社内調査・ヒアリング:従業員がどんな作業環境を必要とし、現在何に不満を持っているかを引き出す。
このデータなしに移転・改修を判断すると、「移転はしたものの、前のオフィスと同じ問題が再発した」という失敗を招きかねません。データ収集は、有効な戦略を立案するための重要な投資として捉えることが大切です。
Do(計画の実行):レイアウト変更やルールの導入
Planで設定した戦略・施策を、具体的なアクションへと展開するフェーズです。レイアウト変更やゾーニング、ABWの導入、ICTツールの整備、社内ルールの周知などを実行します。
ここで重要なのは、Doの内容と想定効果を事前に定義しておくことです。「何を変えたら、何がどう変わるか」という仮説を明確にしておかないと、次のCheckフェーズで何を測定・評価すべきかが曖昧になってしまいます。
Check(評価・検証):施策の効果測定と従業員調査
効果検証で特に注意したいのが、移転直後の「ハネムーン効果」です。新環境へ移行した直後の調査では、高揚感から一時的に高スコアが出やすく、数ヶ月後に下落するケースが知られているため、表面的な満足度だけで判断してはいけません。
より本質的な検証を行うには、感情に左右されない「業績連動指標」の検討が有効です。
- 病欠・体調不良による欠勤率の変化(ウェルビーイング指標)
- 採用応募数・内定承諾率の変化(採用・ブランド指標)
- 業務アウトプット量の変化
これらの指標は、移転前からベースライン(基準値)を計測しておかなければ比較ができません。「移転が決まってから計測を始めよう」では手遅れになるため、移転検討に入る前の段階から現在のオフィスパフォーマンスを記録し始めることが、正しい効果検証の前提条件となります。
Act(改善):次なる課題解決に向けたアップデート
CheckでつかんだデータをもとにFM施策を改善し、次のPlanへとつなげるフェーズです。Actにおいて重要なのは、表面的な事象への対症療法ではなく、「問題の根本原因(構造的要因)」に着目することです。
例えば「会議室が常に満杯」という課題に対し、単に会議室を増やすだけでは不十分なケースがあります。 実際には「不要な会議が多いこと」や「オンライン会議に対応した個室ブースが不足していること」が根本原因であれば、会議数を減らすルール変更や、レイアウト全体の見直しを行うことこそが、適切なAct(改善策)となります。
感覚や経験に頼った表面的な施策では根本的な課題解決には至らず、的確なFMのPDCAを回し続けることはできません。しかし、自社単独でスペースの実際の稼働率や、従業員の潜在的なニーズを正確にデータ化するのは非常に困難です。
「オフィスにどれだけの無駄があるのか把握したい」「レイアウト変更や移転といった『次の一手』に向けた確かな根拠が欲しい」とお考えでしたら、ぜひご相談ください。現状調査サービス「Office Well」を通じて客観的なデータを収集し、貴社が抱える真の課題を可視化することで、効果的なオフィス移転への第一歩を力強く後押しします。
現状調査サービス「Office Well」
企業が直面する「自社改修(現オフィス維持)」の限界
「移転ではなく現オフィスをリニューアルすれば解決できる」と考える企業は少なくありません。しかし実務上、現オフィスへの改修にはいくつかの構造的な限界があります。コストの観点でも、設備の物理的制約の観点でも、「改修で乗り切れる範囲」には上限があることを、事前に把握しておく必要があります。
理想のレイアウト変更を阻む「B工事」費用の壁
オフィスビルの工事区分は大きく3種類に分けられます。
- A工事:ビルオーナー発注・費用負担。共用部・外壁・構造など
- B工事:入居企業の要望でオーナー指定業者が施工・入居企業が費用負担
- C工事:入居企業が自由に業者を選定して発注できる専有部工事
現オフィスの改修においてB工事費用に対処する選択肢としては、契約前の段階でB工事の範囲をC工事として交渉できるか確認する方法があります。ビルオーナーが同意すれば入居企業が業者を自由に選定できるため、コスト競争が生まれる可能性があります。ただし実現可否はビルオーナーの判断によります。
設備容量(電源・空調)の物理的な制限
現オフィスの改修を検討する際に見落とされやすいのが、電源容量とセントラル空調の物理的な制限です。電源容量については、サーバーや高消費電力機器の増設を検討する場合、既存の電気設備容量を超えると幹線の増設工事が必要になり、想定以上のコストが発生することがあります。
セントラル空調については、深夜・休日の時間外使用に別途費用が発生するケースが多くあります。ただし料金体系はビルによって異なるため、契約前の確認が不可欠です。また、空調ゾーンがビル側の設計で固定されており、執務エリアの再配置に合わせたゾーン変更が難しい場合もあります。こうした制約により、現オフィスの改修だけでは理想のレイアウトを実現できないケースがあります。
ライフサイクルコスト(LCC)と退去時の「原状回復費用」増大リスク
現在のオフィスへ追加投資を重ねるほど、退去時の原状回復費用が膨らむリスクが高まります。内装を充実させるほど、原状回復の対象範囲が広がる傾向があるためです。入居時に「将来、この内装をどこまで元に戻す必要があるか」を把握せずに改修を進めてしまうと、退去時に想定外の費用が発生するケースがあります。オフィスの改修を検討する際は、目の前の改修コストと将来の退去コストをセットで試算することが、LCC視点での正しい判断につながります。
なお、移転先の物件選定においても同様の視点が必要です。「セットアップオフィス」や「居抜き物件」の検討は、LCC最適化の有効な選択肢となります。これらの物件は入居時のB工事や内装工事を大幅に削減できるため、初期コストを抑えられるだけでなく、通常の入居よりも早く入居・稼働できる(二重家賃などの無駄なコストを抑えられる)という大きなメリットがあります。
ただし、将来の退去コストに関しては見極めが必要です。セットアップオフィスは原状回復の範囲が限定される傾向にありますが、「居抜き物件」に関しては原則として原状回復が必須となるため、引き継いだ内装の条件によっては、退去時に思った以上の費用がかかる場合もあります。こうした「早期入居のメリット」と「将来の退去リスク」をセットで考慮することが重要です。
「移転ありきではなく、改修も含めて自社にとって最適な選択肢を知りたい」「プロの視点で双方のコストを比較シミュレーションしてほしい」とお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。無理に移転をお勧めするのではなく、データと市場動向に基づき「改修継続が最適」という結論も含めて、貴社が最も納得できる意思決定をフラットな立場でサポートいたします。
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オフィスの原状回復にかかる費用を支払うのは借主?その理由とは優れたファシリティマネジメントを体現する企業事例
近年、多くの企業がファシリティマネジメントの視点を取り入れたオフィス移転・改修を通じて、働き方改革やコスト最適化の成果を上げています。ここでは、三菱地所リアルエステートサービスがサポートした2社の事例を通じて、FM的な視点が実際の意思決定にどう機能したかをご紹介します。
業務特性に合わせたゾーニングで生産性を向上させた事例
【株式会社ウィルオブ・コンストラクション】
2018年にウィルグループへ加入後、人員倍増という急成長を機に移転を決断しました。人材サービス業として、採用活動・取引先対応に有利な「立地とビルグレード」を最優先条件に設定し、新宿三井ビルディング55階(新宿エリア・7駅12路線アクセス)への移転を実現しています。内覧から約1ヶ月という迅速な意思決定も特徴的です。
移転後はフリーアドレスの導入、Web会議専用ブースの設置、業務タイプ別の多様なゾーニングを実現しました。FMの観点で評価すべきは、「業務特性(採用・営業)と立地・ビルグレードを戦略的に一致させた」点です。施設の選択が企業のビジネス目標と直結している好例といえます。
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【株式会社ウィルオブ・コンストラクション】見晴らしのよい「Chance-Making」オフィス社員の声を起点にハイブリッドワーク型へ移行した事例
【株式会社ソラスト】
コロナ禍を経て座席使用率が約3割まで低下し、出社前提のレイアウトとハイブリッドワークの実態に大きな乖離が生じていました。移転にあたり特筆すべきは「変化の事前アナウンス」です。移転前の段階でハイブリッドワーク継続を社内に明言し、社員の心理的抵抗を事前に解消したことで、スムーズな移行を実現しました。
移転後には、「快適さ・仕事のしやすさが向上した」「以前より多くの人と気軽に会話できる機会が増えた」といった社員からの声が寄せられました(社内調査・ヒアリングによる)。FMの観点では「変化に関するコミュニケーション設計の成否が、新オフィスへの定着率を左右する」という実務知見が核心です。
▽事例紹介ページはこちら
【株式会社ソラスト】社員の会話が自然と生まれるハイブリッドワーク型オフィス「自社と規模や業種が近い企業のオフィス事例を詳しく知りたい」「自社のオフィス課題解決にどう応用できるかアドバイスが欲しい」とお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。豊富なサポート実績を持つプロが、貴社に近い類似ケースも交えながら、最適なオフィス戦略のステップをご提案いたします。
戦略的なFMの第一歩は「プロの知見を交えた現状調査」から
「専門家に相談した方がいいのはわかっているが、何をどう依頼すればいいかわからない」と感じている担当者は多くいらっしゃいます。ここでは、不動産のプロや外部専門家を活用することで具体的に何が変わるのか、そして「改修・移転」の判断をどのような軸で行うべきかを整理します。
専門家の客観的な視点(認定ファシリティマネジャー等の知見)を入れるメリット
オフィス専門の不動産仲介会社を活用することで主に次の3つのメリットが得られます。
①非公開物件へのアクセス
市場に出回る前の「未公開情報」を仲介会社が保有しているため、希望条件に近い候補を先行して提案してもらえます。特に2026年現在、東京都心部では潜在空室率が1%台という非常にタイトな状況が続いており、一般の公開情報だけでは選択肢が限られてしまうため、大きな強みとなります。
②賃料・フリーレント・内装補助の交渉代行
直接交渉するよりも、専門の仲介会社を経由した方が、オーナーから有利な条件を引き出しやすいケースが多くあります。自社単独では難しい、複数物件を横断した比較・交渉もスムーズに行えます。
③複数物件の同時並行・比較
自社の担当者が単独で複数の候補物件の内覧調整・条件交渉・比較評価を並行して進めるのは、時間や工数の面で限界があります。専門家に依頼することで、物件の絞り込みから決定までを効率的に進めることができます。
また、認定ファシリティマネジャー(CFMJ)資格を持つ専門家の知見を取り入れることで、さらに「客観的な第三者視点」というメリットが加わります。社内で長年蓄積された思い込みや慣習にとらわれず、外部のプロの目から自社の施設課題を本質的に見直すことができるようになります。
▽参照元
JFMA「認定ファシリティマネジャー(CFMJ)資格」コスト比較シミュレーション(現オフィス改修 vs 移転)の重要性
「改修か、それとも移転か」の判断を正確に行うためには、少なくとも次の3軸で比較・検証する必要があります。
①現在の契約残存期間
一般的に、現在のオフィスの契約残存期間が「3年以内」になると、移転を検討する合理性が高まる傾向があります(※個別の契約事情によって異なります)。
②改修費用と移転初期費用の比較
現オフィスにとどまって行う「B工事・内装改修」の想定コストと、移転する場合にかかる「現オフィスの原状回復費用 + 新オフィスの内装工事費用(初期費用)」を並べて比較します。
③新旧賃料の差額と損益分岐点(回収期間)
移転によって月々の賃料(ランニングコスト)がどう変わるかを把握し、賃料の差額によって移転の初期費用を何ヶ月で回収できるか(損益分岐点)を試算します。
この判断には最新の市場動向を踏まえることが不可欠です。「OFFICE MARKET REVIEW 2025」でも示される通り、東京主要5区の潜在空室率は1%台まで低下しており、「貸し手優位(市場の選択肢が少ない)」の状況が続いています。
賃料水準も上昇傾向にある中、希望条件に合う優良物件を確実に確保するためには、「早めの動き出し」と「迅速な意思決定」が不可欠です。こうした最新の一次情報をリアルタイムの判断材料として活用することで、より精度の高い意思決定が可能になります。
三菱地所リアルエステートサービスでは、企業が的確なオフィス選びの判断を下せるよう、現状オフィス課題のヒアリング、要件の可視化、候補物件の提案・移転サポートをワンストップで提供しています。不動産のプロとしての専門性を活かし、オフィス選びの意思決定を支援します。
▽関連記事はこちら
オフィス移転のその前に!現オフィスの課題を見つけるための「現状調査」とはまとめ
最後に、「今日から自社で始められること」を整理しておきましょう。オフィス見直しに向けて、今すぐ実行できる3ステップは以下の通りです。
| ステップ | 今すぐ実行できるアクション | 目的・メリット |
|---|---|---|
| STEP ① | 現在の賃料・坪数・月間出社率・光熱費を整理する |
LCC(ライフサイクルコスト)の可視化
現状の総コストを正確に把握するための第一歩となります。
|
| STEP ② | 現行の賃貸借契約書で「原状回復特約」と「解約予告条件」を確認する |
退去コスト・スケジュールの事前把握
将来発生する費用や、解約を申し出るべきタイミングを明確にします。
|
| STEP ③ | 次回の契約更新時期を確認し、本格的な検討時期を社内の経営会議等に提起する |
意思決定の起点を設定
経営会議などで移転・改修の検討をスタートさせるための起点を作ります。
|
ファシリティマネジメント(FM)は、人材・資金・情報と並ぶ「第4の経営資源」です。特にハイブリッドワークが定着した現代においては、LCCを見据えたオフィス面積の最適化と、柔軟な環境構築が求められます。
現状のオフィスを改修するだけでは限界を感じる場合、移転を含めた抜本的な見直しを行うことが、結果として従業員のパフォーマンス向上につながるケースも多くあります。その一方で、データを並べて検討した結果「今のオフィスを改修して使い続けるのが最適」という結論になることもあります。何よりも大切なのは、思い込みに頼らず、データに基づいた客観的な比較検討を行うことです。
契約更新の直前になって慌てて動き出すのではなく、時間的な余裕を持って自社の現状把握と情報収集を始めましょう。早期に動き出し、社内でじっくり比較検討するための時間を確保すること。それこそが、妥協のない「戦略的なオフィス選び」を実現するための確実な近道となります。
オフィス戦略の第一歩は、現在のオフィスの使われ方や課題を正確に把握することから始まります。自社にとって最適な選択(改修か移転か)を検討される際は、ぜひ三菱地所リアルエステートサービスにご相談ください。
現状調査サービス「Office Well」を用いた客観的なデータによる課題の可視化から、最新の市場動向を踏まえた物件選定、移転サポートまで、不動産のプロとしてワンストップで伴走支援いたします。
現状調査サービス「Office Well」



